『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』

原題:“Fantastic Four : Rise of the Silver Surfer” / 監督:ティム・ストーリー / 脚本:マーク・フロスト、ドン・ペイン / 原案:ジョン・ターマン、マーク・フロスト / 製作:ベルント・アイヒンガーアヴィ・アラド、ラルフ・ウィンター / 製作総指揮:スタン・リー、ケヴィン・フェイグクリス・コロンバス、マーク・ラドクリフ、マイケル・バーナサン / 共同製作:ロス・ファンガー / 撮影監督:ラリー・ブランフォード / プロダクション・デザイナー:カート・M・ペトルッチェリ / 編集:ウィリアム・ホイ,A.C.E.、ピーター・S・エリオット / 衣裳デザイン:メアリー・ヴォクト / 音楽:ジョン・オットマン / 出演:ヨアン・グリフィス、ジェシカ・アルバクリス・エヴァンスマイケル・チクリスダグ・ジョーンズ、ジュリアン・マクマホン、ケリー・ワシントンアンドレ・ブラウアー、ボウ・ギャレット、ザック・グルニエ、ケネス・ウェルシュ / 声の出演:ローレンス・フィッシュバーン / 配給:20世紀フォックス

2007年アメリカ作品 / 上映時間:1時間32分 / 日本語字幕:林完治

2007年09月21日日本公開

公式サイト : http://www.f4-movie.jp/

ヤクルトホールにて初見(2007/09/05) ※特別試写会



[粗筋]

 ヴィクター・ヴァン・ドゥーム(ジュリアン・マクマホン)の事件解決を契機に、“ファンタスティック・フォー”として名実共にスーパーヒーローとしての道を歩みはじめたリード・リチャーズ(ヨアン・グリフィス)たち4人の異能者たち。だが、たとえヒーローとして活躍しようともリードの本懐は学問であり、彼の研究所は慢性的な財政難に見舞われている。ためにメンバーのひとりジョニー・ストーム(クリス・エヴァンス)は“ファンタスティック・フォー”のコスチュームにスポンサーをつけて収入を作ろうと目論む始末である。

 それだけではない。何かと事件や事故によって駆り出されるうえ、リードが研究に没頭しすぎるために、ジョニーの姉であるスーザン(ジェシカ・アルバ)との挙式が何度も中断し、新聞でも揶揄されていた。

 リードも彼女の機嫌を慮り、研究意欲を抑えこもうとはしているが、そんな矢先に彼の興味を惹く事件が世界規模で発生する。日本で駿河湾を凍らせ、エジプトに雪を降らせ、ロサンジェルスでは大停電が起きるという天変地異であった。しまいにはリードをアメリカ軍のヘイガー将軍(アンドレ・ブラウアー)が直々に訪れ、調査のための装置制作をリードに依頼するほどの騒動に発展する。リードは自分たちに超能力をもたらした宇宙線と同等のものが影響を及ぼしていると推測していた――だが、装置の制作を引き受けはしなかった。自分を支えてくれたスーザンとの婚礼を優先したのである。

 ようやく、待望の式当日がやってきた。親しい友人や名士が集うなか、ようやく神父の仲介により誓いの言葉が交わされる段になって、それは一足遅れて式場に襲来する。銀色の、光弾のようなものが過ぎ去ると同時に、周囲の磁場に影響を及ぼし、ヘリコプターが墜落、現場は大騒ぎとなった。全身を発火させる能力によって自在に空を飛ぶことの出来るジョニーがその銀色の光を追うが、ジョニーを上回る速度、宇宙空間にまで到達する耐久力の前に、ジョニーも為す術はなかった……

 全身を銀色に覆われ、サーフボードに乗って世界を自在に飛び回る謎の人物――通称シルヴァー・サーファー(ダグ・ジョーンズ/声:ローレンス・フィッシュバーン)の目的はいったい何なのか?

[感想]

 2年前に公開された『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』の、同じスタッフ・キャストによる続編である。とは言え、たとえば『スパイダーマン』シリーズや『X-MEN』シリーズのように、先行する出来事を受け継いで発展させていく形を取っていないので、これから観ても問題はない――と粗筋だけの時点では判断していたのだが、これはちょっと早計だった。実際には、前作での出来事をある程度踏まえて描写しているため、咄嗟に戸惑うかも知れない。

 とは言え、前作からしてそうだったが、本質的にはシンプルなヒーローものとして構築されているので、さほど考え込まずとも楽しめる作品になっている。いや寧ろ、下手に考え込むような人は納得のいかない想いをさせられることもしばしばだろう。とにかくツッコミどころは多い。リードが天才科学者という大前提があるにしても、それまで地球上に存在しなかったシルヴァー・サーファーの移動経路や、彼が訪れた星が辿った末路をどうしてものの数時間――もしかしたら数分かも知れない――で解析できてしまうのか。オーヴァーテクノロジーも甚だしい。私はサーファーよりお前が怖い。また、最初にサーファーと接したジョニーは、仲間たちと接触すると自らの能力と相手のものを交換できるようになってしまうのだが、まあその理屈はいいとしても、終盤でこれをあまりに都合良く拡大解釈した出来事が起きてしまうのは頷きかねる。ファンタジーだからと受け入れるにしても、伏線を設けるとか考えられなかったのか。とりわけ日本人としては、冒頭と終盤に登場する日本の描写に耐えがたいものを感じた。

 ただ、もともと状況の整合性やがっちりと構成されたプロットを楽しむ類の作品ではないのである。寧ろそういうところはツッコミどころとして軽く受け止め、キャラクター同士の軽妙なやり取り、シンプルに展開される物語に身を浸していればいい。それが出来ない方ははじめから避けて通るべきだろう。

 何より本編の見所は、超人たちのアクション描写のスピード感、爽快感にこそある。その意味では前作からの期待をいっさい裏切らない出来であった。宇宙さえも股にかけて疾駆するシルヴァー・サーファーという謎の人物の登場によって躍動感を増し、イベントに幅が出ているために先読みも難しくなっている。そこにあまり整合性が見受けられないのも、こうなると愛嬌である。

 この作品の原作は、ヒーローのユニット化と、人としての悩みを描くというスタイルに先鞭をつけたことで知られている。後継に当たる作品群が悩みを深化させシリアスになっている一方で、オリジナルの今となっては軽さを感じさせる作りには、後続作品と異なる安心感がある。本編はそういう部分を愛でるべきだろう。今後ももし続くことがあるなら、やはりこの明るさを損なうことのないよう願いたいものだ。

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