原題:“Aliens VS. Predator : Requiem” / 監督:ザ・ブラザーズ・ストラウス / 脚本:シェーン・サレルノ / 製作:ジョン・デイヴィス、デイヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル / 製作総指揮:ポール・ディーソン / 撮影監督:ダニエル・C・パール,A.S.C. / プロダクション・デザイナー:アンドリュー・ネスコロムニー / 編集:ダン・ジマーマン / クリーチャー・エフェクト・デザイン&クリエイト:アレック・ギリス、トム・ウッドラフJr. / 音楽:ブライアン・タイラー / 出演:スティーヴン・パスカル、レイコ・エイルスワース、ジョン・オーティス、ジョニー・ルイス、アリエル・ゲイド / 配給:20世紀フォックス
2007年アメリカ作品 / 上映時間:1時間34分 / 日本語字幕:林完治
2007年12月28日日本公開
公式サイト : http://avp2.jp/
[粗筋]
地球から程近い宇宙空間。北極深部での死闘を終え、地球から本星に帰還するはずだったプレデターたちの船は、仲間の腸を喰らい、その特性を身に付けた新種のエイリアンに襲撃され、地球はアメリカ、コロラド州の森林に墜落する。偶然付近に居合わせた父子を皮切りに、新たな悲劇の種は蒔かれたのだった……
狩猟に赴いたまま戻らない父子のために捜索隊が森に送られたが、深夜に解散したはずなのに、モラレス保安官(ジョン・オーティス)の部下レイは家に戻らなかった。翌朝、モラレスが同僚と共に発見したのは、生皮を剥がれて樹に吊された、レイの見るも無惨な姿であった。
一方、盗みで刑務所に送られ、今朝方コロラド州に戻ったばかりのダラス(スティーヴン・パスカル)は、苛めに遭って車の鍵を下水道に放り込まれてしまった弟リッキー(ジョニー・ルイス)に付き合い潜りこんだ地下で、異様な痕跡を目撃する。未知の生物が残した、粘膜のようなもの――更に聞こえてきた獣めいた咆哮に、リッキーが鍵を発見したのを確かめると、ふたりは脱兎の如く下水道を抜け出した。
同日夜、ガールフレンドのジェシーに誘われて、学校のプールに侵入したリッキーは、そこをジェシーの元彼氏に見咎められ、取っ組み合いの喧嘩を演じる。それを遮ったのは――異様な形態をした化物だった。ジェシーの元彼氏の友人がふたり犠牲となったところで辛くも逃れた三人は、火災により停止した原子力発電所に集まっていた警官達に、常軌を逸した出来事を報告する。
そこには、モラレス保安官と、彼と酒場で遭遇し合流していたダラスがいた。モラレス保安官は当初署に戻ろうとしたがその途中、狩猟に出かけたまま夫と子供が行方不明になってしまったあの夫人と遭遇、彼女からレイの妻が殺されたことを聞かされ、容易ならざる事態が起きていることを認識して、近くにあるディスカウント・ショップで銃器などを調達、未知の敵との戦いに備えることにした。
だが、彼らは知らなかった――その店内に複数のエイリアンが侵入していたことを。それを追って、プレデターが肉薄していたことを……
[感想]
第1作からして「まさか」であったが、今回も「まさか」の感の色濃い、SFホラー映画のスーパー・スター2種の再競演である。
前作は監督・脚本に携わったポール・W・S・アンダーソンの作風を反映して、ホラー的な驚き、グロテスクさを押さえつつも娯楽性を重視したアクション映画のほうへ傾斜していたが、制作陣以外のスタッフを一新した本編は、監督がVFXの分野で活躍してきた兄弟コンビというだけあって、視覚的な衝撃を重視した、オーソドックスなSFホラーに回帰した趣がある。
そういう意味では、非常に予想通り、ある意味潔いほどひねりがない。エイリアンが地上を侵蝕し、プレデターはそれらや、自らを目撃したり妨害したりする人間を容赦なく排除していく。そうして阿鼻叫喚の地獄図絵となった街からどうにか脱出し生き延びようとする人間たちの姿を、三者を交錯させつつ描いているだけ。プレデターがエイリアンを捕らえるために罠を張ったり、思いがけない形で出た犠牲によって人間たちが無謀な反抗に出るような場面はあれど、そういうところまで含めて大雑把に想像した内容からほとんどはみ出していない。だが、それで腹を立てるようならそもそもこういう映画を観るべきではないだろう。様式をなぞった映画というのは、その定型の中で如何にアイディアを駆使しているかを愉しむべきだ。
本編は本当にそのあたりをストイックに追求しており、結果としてハリウッドの資本を使いながら、話運びにハリウッド特有の甘さがない。青春もののヴァリエーションとして提示されるホラー映画では、軽率な行動に出た者がいの一番に死んだり、序盤からあくどい行動をしていた者が早速と殺されたりして観る側に爽快感を齎す工夫をして、全体に緩い印象を生みがちだが、その点本編は生々しいほどに非情だ。前作は終盤に至ってプレデターが“漢”らしさを示したために一風違った熱気を放っていたが、今回は人間を歯牙にもかけておらず、邪魔をすれば排除する、程度の扱いしか終始してくれない。
話を決着させる趣向にしても、極めて乱暴ながら、成り行きとしては必然的で、如何にもあり得そうな話と感じる。だからこそ終盤にサスペンスが醸成されているし、クライマックスの虚しさも余韻として活きている。そうした点は高く評価したい。
ただ、クリーチャーの表現や、現実には不可能な描写については出色の出来映えである一方、構図や台詞回しなどに力強さを欠いていたのが惜しまれる。序盤こそユニークなカメラワークがところどころ認められたが、エイリアンたちの侵蝕が進んだあたりからはホラー・アクションの定石を辿りすぎて印象に留まるヴィジュアルが全体に不足していた。話の流れや結末を思うと、もう少し会話や人物の心象描写に気を遣っていれば全体の雰囲気が引き立ったように思われる。なまじ正統的なSFホラー・アクションを志しているのが伝わるだけに勿体ない。
だが、きちんとエイリアンをその生態故に人間に恐怖を齎す存在として、プレデターを容姿以上にその容赦のない振る舞いによって脅威を齎す存在としてきちんと表現し、双方の原点に立ち戻ろうとした作りは愛好家として非情に快く、大変愉しませてもらったことは間違いない。傑作と呼ぶには温いし、まだまだ練り込む余地はあったと思うが、しかし充分に及第点をつけていいだろう。
……きっと3も作るんだろうなぁ……。
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