『パラノーマル・アクティビティ第2章 TOKYO NIGHT』

『パラノーマル・アクティビティ第2章 TOKYO NIGHT』

監督&脚本:長江俊和 / 企画、製作&プロデュース:花田康隆 / プロデューサー:中山賢一、加瀬岳史 / 撮影:平尾徹 / 美術:井上心平 / 装飾:渡辺大智 / 編集:掛須秀一 / 音響効果:中村翼 / VFXスーパーヴァイザー:大萩真司 / 出演:中村蒼、青山倫子、吉谷彩子、鯨井康介守永真彩、山田登是、松林慎司、津村和幸 / 製作&配給:Presidio

2010年日本作品 / 上映時間:1時間30分 / R-15+

2010年11月20日日本公開

公式サイト : http://www.paranormal-2-tokyo.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2010/11/20)



[粗筋]

 2010年9月、山野家の長女・春花(青山倫子)が両足にギブスを嵌めた痛々しい姿で帰ってきた。アメリカ旅行中に事故に遭い、完治するまでに半年は必要だという。母親は既に亡く、多忙な父に代わって彼女の面倒は、浪人生である弟・幸一(中村蒼)の役回りとなった。

 幸一は新しく購入したビデオカメラで戯れに姉の姿を撮影していたが、春花のあるひと言を境に、その用途が変わる。

 両脚を骨折した春花は、ベッドの脇に車椅子を置いて寝ているが、それが朝になると、窓際まで動いていた、と言うのだ。外から侵入した可能性は低い。いったい誰がやったのか、真相を突き止めるために、幸一は春花の眠る寝室を、ビデオカメラで撮影したいと提案した。

 幸一も当初は軽い気持ちだった。もしこれが怪奇現象なら、興味深い映像が撮れる、と思ったのである。だが、積んだ盛り塩がひとりでに飛び散り、コップが勝手に割れ、深夜、姉の部屋の前にある階段を移動する足音が収録され――更には幸一の友人で、霊感があるという女性が、春花の部屋に案内されたあと気分を悪くして逃げ帰るに及んで、これがただ事ではないことを幸一も、春花も実感する……

[感想]

 無関係な作品を大ヒット作の続篇として売り出したり、許可も得ず勝手に作ってしまう、ということが、例えば映像ソフトに直行する作品などによく見られるが、この作品はきちんとオリジナルの監督に脚本のチェックを受け、許可を取って製作された、公式の“続篇”であるとのことだ。アメリカでも先ごろ正式な続篇が公開されており、ほぼ同時期に別々の国、資本によって続篇が作られるという、試み自体がなかなかに興味深い。

 オリジナルを初めて観たときから――というよりは、その情報が世に広まり、最初にトレーラーを観たときから私は、これは日本向きの素材ではないか、という印象を抱いていた。猫騙し的なショックよりも、人智を超えた脅威がじわじわと迫ってくる恐怖を演出する技は、未だに日本のほうが秀でている。そのため、日本で独自に続篇を制作・公開すると聞いたとき、出来不出来は別として、さもありなん、と納得したのだ。しかも手懸けるのは、当初何の予告もなしにテレビで放送され、クレームと共に一部で熱狂的な支持を獲得したフェイク・ドキュメンタリーの傑作『放送禁止』シリーズを送り出した長江俊和監督である。これだけの情報が揃えば、多少なりとも期待してしまうのが人情というものだろう。

『放送禁止』シリーズといえば、一見普通のドキュメンタリーであっても、そこかしこに違和感のある描写を織り交ぜ、読み解いていくと別の真相が見えてくる、という趣向が見所だった。長江監督であるだけに、本篇にも同様のものを期待してしまうところだが、残念ながらそういう仕掛けはない。私が見落としているだけ、という可能性も否定しないが、少なくともあからさまな形での罠や小細工は存在していない。

 しかし、さすがにフェイク・ドキュメンタリーを繰り返し作りだしてきた監督だけあって、その自然さは堂に入っている。そして何より、怪奇現象の描き方は実に達者だ。本家よりも完成されている、と断言してもいい。

 横から出て来てドン、という類の衝撃や恐怖の演出を除くなら、鍵となるのは“何かが起きそう”という空気の醸成にかかっているが、本篇はそこが非常に巧みだ。そもそも幸一がビデオ撮影をしていたのはただのお遊びだったが、春花の「夜中に車椅子の位置が動いている」という言葉を受けて、撮影を提案する。そのために観る側は、定点観測の映像でまず車椅子に着目するが、異変は別のところで起こっている。その結果として、次第にあらゆるところに警戒し、異変を感じるようになっていく。オリジナルは、中心となる恋人ふたりの行動に添って怪奇現象が羅列されていくだけの感があったが、そこに工夫を凝らして効果を高めているのはさすがだ。

 オリジナルを鑑賞していると解るが、本篇で描かれる怪奇現象の幾つかは明らかにオリジナルを意識している。きちんと地続きになっているから当然とも言えるが、それらもオリジナルを考慮に入れて、更に膨らませる工夫をしている点は好感が持てる。しかも概ね、成功していると言っていいだろう。特に、夜を通しての定点観察映像を見せるために必要な“早送り”という見せ方があるからこそ活きる趣向については、オリジナル以上の不気味さを発揮している。

 個人的に惜しい、と思えるのは、そうしたオリジナルを尊重する精神ゆえに、独自の怪奇現象があまりなかったことと、オリジナル同様に、このタイミングでこういう現象が起きている理由についてほとんど説明していない、解釈する方法もないことだ。前述した映像の早送りを用いて描きうる怪奇現象は他にも思いつくはずだし、定点観測しているからこその異変の描き方はまだまだあったはずだ。また、いちおう何故こういう出来事があったのか、仄めかしはしているものの、そのためにこういう事態が積み重ねられていった、という確信を得られるところまで行っていないので、終幕に至っても釈然としない想いが残る。

 だが、オリジナルを尊重し、その怪奇現象を可能な限り活かそうとした点も、整合性にこだわらないことで敢えて曖昧模糊とした薄気味悪さを残したのも、選択肢としては間違っていないし、きちんと恐怖に繋がっているのだから、必ずしも否定的材料ではない。むしろ、あれだけ話題となり、記録的な大ヒットを飛ばした作品の世界観を、ほとんど壊すことなく日本に移植し、より恐怖を味わえる、と言える仕上がりにしたのだから、賞賛すべき手腕だろう。

 便乗した企画に嫌悪感を覚える向きも多いだろうが、本篇は決して安易な便乗企画ではない。オリジナルの良さをきちんと研究したうえで、誇れる完成度に高めた、正しい続篇である。オリジナルを高く評価している人も無論、前作に未だ触れていないというホラー映画ファンがいきなり望んでも納得のいく作品だと思う。

関連作品:

パラノーマル・アクティビティ

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放送禁止2 ある呪われた大家族

ニッポンの大家族 Saiko! The Large Family 放送禁止 劇場版

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