『少林寺木人拳』

『少林寺木人拳』 少林寺木人拳 デジタル・リマスター版 [DVD]

原題:“少林木人卷” / 英題:“Shaolin Wooden Men” / 総監督:ロー・ウェイ / 監督:チェン・チー・ホウ / 脚本:呂三民 / 製作:スー・リーホワ / 撮影:陳鐘源 / 武術指導:ジャッキー・チェン / 音楽:張福良 / 出演:ジャッキー・チェン、ドリス・ロン、カム・コン、ジャン・ジン、ユン・ピョウ / 配給:東映セントラル / 映像ソフト発売元:Paramount Home Entertainment Japan

1977年香港作品 / 上映時間:1時間40分 / 日本語字幕:?

1981年2月21日日本公開

2010年12月17日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

大成龍祭2011上映作品

Gyaoにて初見(時期記録なし)

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて再鑑賞(2011/04/24) ※トークイベント付上映



[粗筋]

 少林寺でカンフーの修行をする青年(ジャッキー・チェン)はある日、立ち入り禁止の看板の掲げられた洞窟の奥で、鎖で縛められた男ファユーと出逢う。僧侶からの施しを拒絶し空腹に喘いでいたファユーのために青年が饅頭を綺麗にし、望むままに酒をくすねて持ち込むと、ファユーは未だ水汲みと薪割り以外やらせてもらえない彼に拳法を指南し始めた。

 青年は幼少の頃、カンフーの達人によって父親を殺されており、その復讐のために少林寺の門を叩いたのだった。なかなか修行が進まないことに歯痒さを感じていた彼はファユーの死導に熱心に取り組む。だが同時に、そんな彼のひとり稽古の様子を見て、少林寺とは異なる流派の型でないこと、そこに殺気が満ちていることを察した尼僧が、別の拳法を彼に授ける。

 敵を粉砕する技と、受け流す技――ふたつの対照的な武術を学んだ青年は、やがて卒業試験を受ける決意を固める。少林寺カンフーの最終関門、それは木で作られた絡繰りが無数に立ち並び、拳や脚を繰り出して来る狭い通路を、制限時間内に脱出するという試練、通称“木人路”である――

[感想]

 この作品の魅力――というより、強烈に印象を残すポイントは、修行の最終試験に用いられ、タイトルにも冠されている“木人卷”、字幕では“木人路”と記されているシステムであるのは、たぶん観た人間なら誰しも納得するところだろう。

 プロローグ部分でいきなり登場する“木人路”は、色々な意味で衝撃的だ。入ろうとするものを左右から無秩序に殴りつけて妨害する、というシンプルかつ壮絶な仕組みも鮮烈だが、そのチープなデザイン、映画的には間違いなく人が入っていると想像のつく(実際、関節の継ぎ目から肌が見えるところもあるそうだ)作りにも驚かされ、その大らかさに失笑と親しみが湧くはずだ。こういう明快なインパクトのある作品は、出来映えを超えて愛されやすい。

 だが本篇は、ジャッキー・チェンがまだコメディ・タッチのスタイルを開拓する以前に主演した初期作品のなかでは、ストーリーとしても破綻なくまとまっており、内容的にも完成度は高い。

 骨格はごくごくシンプルだ。主人公が喋らない、という特徴はあるが、復讐を企図して修行に臨み、自らの工夫と周囲の助けでゆっくりと、しかし着実に成長していく。そして、修行を完結させて外界に出ると、トラブルに遭遇し、それが最後の戦いへと結実する。閉じ込められたファユーから酒を請われた主人公が酒をくすねる手段が強引だったり、独自に技を学ぶ彼に師匠達が疑問を呈さない、といった細かな疑問はあるが、全体のストーリーは堅実で強い違和感を抱かせない。

 そして、決して洗練はされていないが、伏線を積み重ねることで、ドラマの裏打ちを得たクライマックスの熱さは秀逸だ。それまでの出来事に起因する葛藤が、長尺のアクションによりいっそうの牽引力をもたらし、見応えに溢れている。ただ惜しむらくは、仄めかしていた必殺技のうちひとつは繰り出したのか解らず、もうひとつは結末にも関係しているはずなのに、見せ方が悪く人によっては気づかれない可能性もあることだが、アクション全体とドラマとの噛み合わせがいいので、あまり大きな欠点とは感じにくい。

 細かいところに目を向けると、この頃の香港産アクション映画にありがちな大雑把さが見え隠れしているし、演出のうえでも洗練という言葉からは程遠いが、しかしアクションの熱さとストレートなドラマの面白さ、そして理屈を超えた魅力が漲っており、ジャッキー・チェン初期の名作と言っていいだろう。

関連作品:

レッド・ドラゴン/新・怒りの鉄拳

ベスト・キッド

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