『キャノンボール』

キャノンボール デジタル・リマスター版 [DVD]

原題:“砲弾飛車” / 英題:“The Cannonball Run” / 監督:ハル・ニーダム / 脚本:ブロック・イエーツ / 製作:アルバート・S・ラディ、レイモンド・チョウ / 撮影監督:マイケル・C・バトラー / 美術:キャロル・ウェンジャー / 編集:ドン・キャンバーン、ウィリアム・G・ゴーディーン / 音楽:スナッフ・ギャレット / 出演:バート・レイノルズロジャー・ムーアファラ・フォーセット、ドム・デルイーズ、ディーン・マーティン、サミー・デイヴィスJr.、テリー・ブラッドショー、バート・コンヴィ、ジェイミー・ファー、ピーター・フォンダビアンカジャガーエイドリアン・バーボー、カール・ゴットリーブ、ジャック・イーラムジョージ・ファース、ジャッキー・チェン、マイケル・ホイ / 配給:東宝東和 / 映像ソフト発売元:Paramount Home Entertainment Japan

1980年香港作品 / 上映時間:1時間35分 / 日本語字幕:岡枝慎二

1983年2月19日日本公開

2010年12月17日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

大成龍祭2011上映作品

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2011/07/10)



[粗筋]

 アメリカ大陸を東から西へと、レーシング・カーではなく普通の乗用車で横断し、その速さを競うイベント“キャノンボール”。道路法規を無視するために警察から睨まれているが、にも拘わらず毎年多数の参加者が集まってくる。

 J・J・マクルーア(バート・レイノルズ)とヴィクター・プリンズム(ドム・デルイーズ)のコンビが採用したクルマは、何と救急車。何処でもフリーパスで通り抜けられることを利用しようとしたのだが、救急車を走らせるためには医者が必要だと気づき、急遽探す羽目になる。

 コースの指定もないレースであるだけに、妨害する者も多様、手段も様々だった。救急車を駆るJ・Jたちに頻繁に突っかかってくるのは、モーリス(サミー・デイヴィスJr.)とジェイミー(ディーン・マーティン)のニセ牧師コンビ。更には自然愛護団体に所属し、前々から“キャノンボール”を敵視していたアーサー・フォイト(ジョージ・ファース)が執拗に追いかけてくる。

 ジェームズ・ボンドかぶれのお坊ちゃまシーモア・ゴールドファーブJr.(ロジャー・ムーア)に高性能マシンをひっさげてきた日本人コンビ(ジャッキー・チェン&マイケル・ホイ)など、やたらと個性豊かな参加者たちが、各地で騒動や悶着を繰り広げながらゴールであるロサンゼルスを目指して突き進む。果たして、栄冠を手にするのはいったい誰か……?

[感想]

 正直、私は本篇の見方を間違えていたように思う。上のデータにも記してあるが、私は本篇を大成龍祭2011上映作品、つまりジャッキー・チェンの映画として鑑賞してしまったのだ。

 内容をご存知の方も、また上の粗筋で初めて知った方も、たぶん首を傾げるだろう。本篇はどう見ても、ジャッキー映画とは呼べない。彼が日本人役で出演しているのは、日本人としてちょっと嬉しいが、しかし出番は驚くほどに少なく、また切れ味のあるアクションを披露する場面も皆無に近い。辛うじて終盤の乱闘場面でいくぶん気を吐いているが、大勢が入り乱れた場面での格闘は、カンフー映画の醍醐味どころか、ジャッキーならではのアイディアさえ盛り込まれていない。

 この作品はいわば、スター・ムービーなのである。バート・レイノルズロジャー・ムーアファラ・フォーセットにサミー・デイヴィスJr.と、この頃の映画をあまり知らなくとも聴き覚えのある名前が連なっている。それぞれが誰よりも早くアメリカ大陸を横断してゴールに辿り着くために、策略を用いたり駆け引きを繰り返す、その面白さを堪能するための映画だ。製作こそ香港の会社であるゴールデン・ハーヴェストが手懸けているものの、この当時『バトルクリーク・ブロー』でデビューしたばかりのジャッキーが存在感を発揮できるはずはないのだ。そう承知していれば、もう少し愉しめたのかも知れない。

 ただ、その点を除いたとしても、決していい出来映えではない、とは思う。

 全体に、ユーモアが空回りして、効果を上げていない。救急車に乗ったコンビが各所で巻き起こす騒動や、美女コンビなどがときおり繰り出す“秘策”など、笑いを誘う工夫は随所に仕掛けられているが、いまひとつテンポが悪く、このリズムに合わせられないと終始空回りしているようにしか感じられない。

 だがいちばん問題なのは、ゴールに着く速さを競っているはずなのに、抜きつ抜かれつ、という駆け引きやその緊張感がまったく伝わってこないことだ。どちらかと言えば全員、他のことに気を取られていて、早く着くことなど考えていないように見える。辿るコースがそれぞれに異なっている、という事情があるにしても、折角の著名なキャストが互いに絡みあう場面も乏しく、レースならではの面白さをほとんど感じない。最後の最後で、思い出したように競われても、観ている方はあまり盛り上がらないのだ。

 ボンド俳優であるにも拘わらずボンドもどき、というキャラクターを、不思議なほど愉しそうに演じているロジャー・ムーアや、風変わりな雰囲気に味があるのは確かなのだが、ジャッキー映画だと思いこんでいたことを割り引いても、あまり出来のいい作品とは思えなかった。モチーフも起用した俳優、演じるキャラクターも決して悪くはないのだけれど。

関連作品:

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コメント

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