原題:“Jeux Interdits” / 英題:“Forbidden Games” / 原作:フランソワ・ボワイエ / 監督:ルネ・クレマン / 脚本:ジャン・オーランシュ、ピエール・ボスト / 製作:ポール・ジョリ / 撮影監督:ロベール・ジュイヤール / 美術監督:ポール・ベルトラン / 編集:ロジャー・ドワイエ / 音楽:ナルシソ・イエペス / 出演:ブリジット・フォッセー、ジョルジュ・プージュリイ、シュザンヌ・クールタル、ジャック・マラン、リュシアン・ユペール、ロランス・バディ、アメディー、ルイ・サンテヴェ、ピペール・メロヴィ / 配給:東和
1952年フランス作品 / 上映時間:1時間27分 / 日本語字幕:秘田余四郎
1953年9月6日日本公開
2011年2月15日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]
第2回午前十時の映画祭(2011/02/05〜2012/01/20開催)《Series2 青の50本》上映作品
TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2011/07/26)
[粗筋]
1940年6月。
ドイツ軍の空襲を逃れ、田舎の道を逃げ惑う人々のなかに、ポーレット(ブリジット・フォッセー)はいた。飼い犬を抱いて、事情も解らぬまま両親に手を引かれていたポーレットだったが、その途中で両親も飼い犬もみな銃弾を浴びて息絶えてしまう。
ポーレットは動かなくなった愛犬を抱えて田舎道を彷徨い、やがて牛を追っていた少年ミシェル・ドレ(ジョルジュ・プージュリィ)と出逢う。ミシェルはポーレットの事情を知ると、彼女を自分の家に連れて行く。
ミシェルの家は貧しく、そのうえ長男のジョルジュ(ジャック・マラン)が空襲から逃げてきた馬車に撥ねられ重傷を負っている状況で余裕はなかったが、まだ頑是無いポーレットを襲った悲劇に同情し、彼女を迎え入れた。
ポーレットにとって、ドレ家での暮らしは初めて目にするものばかりだった。壁に飾られた十字架で初めて“神”というものを知り、通りすがりの神父(ルイ・サンテヴェ)に“お祈り”を教わり、そしてポーレットは、飼い犬の亡骸を埋葬することにした。
朽ちた水車小屋で、犬を埋める穴を掘っているポーレットを見つけたミシェルは彼女を手伝い、ちゃんとした墓場を作ってやろう、と提案する。水車小屋の梁に巣を作っているフクロウの捕らえたモグラを傍らに埋葬し、木っ端で作った十字架を立て、体裁を繕った。
そして、それをきっかけにポーレットとミシェルは、生き物の死体を見つけては埋葬する、奇妙な遊びに興じ始める……
[感想]
映画の内容は知らなくとも、テーマ曲は知っている、という人は恐らくたくさんいることだろう。コードを修得する必要がなく、その気になれば指1本でも弾けるために、ギターを1から学ぼうという人がまず最初に覚える曲だからだ。だが、それほどシンプルながら、楽曲として非常に印象に残ることも、長年にわたって入門曲として選ばれている一因に違いない。
だが、この曲を用いた映画の内容についてはあまり知らない、という人も多いはずだ。かく言う私もそのひとりで、いずれ観ておきたいと思っていた一本である。
題名から若干隠微なものをほのかに想像していたが、そういう要素はない。この作品は無知な人々と無垢な人々の目から、間接的に描いた戦争の悲劇であり、それ故にとても慎ましやかな反戦のメッセージとなっている。
冒頭こそ、空襲に逃げ惑う人々を、特殊効果を用いて描いていることに少々度胆を抜かれるが、さすがに古い作品だけあって迫力には乏しいし、ほんの僅かな尺を割かれているのみだ。あとは、一見戦争とは無縁な田園風景をバックに、物語が綴られていく。
だが、そこで繰り広げられるのは、戦時だからこその滑稽で、あまりに哀しい出来事の数々なのだ。平和な時代であれば、こういう形でポーレットとミシェルが出逢うことはなかっただろうし、“墓作り”という考えようによってはおぞましく、しかし純粋極まりない遊びに戯れることもなかった。
どうしてもこの無邪気で可憐な子供たちの姿に目を惹かれるが、一方でミシェルの家族や隣人たちの姿も、実に象徴的だ。みな学はなく、本来それはそれで問題はないはずが、世界規模の戦争が起きたことで、否応なく社会情勢を意識せずにはいられない。新聞から戦況を拙く読み解く一方で、ドレ家と一触即発状態にある隣人グアール家の出征していた息子が逃げるように舞い戻り、両家に波紋を起こし……愚かで滑稽な言動の端々に、戦争がおぼろに影を落とす。物語の鍵を握るジョシュの災難にしても、そもそもの原因は戦争なのだ。
そして、多くの悲劇が絡みあった挙句に、ポーレットとミシェルが築きあげたものが壊されていく。彼らの行為はどこかおぞましいが、その成り行きから純真な想いに駆り立てられていたことは伝わるし、周囲の人々の行動に悪意がないのも解るから、終幕はあまりに痛ましい。
この映画は、自らの力では如何ともし難い事実に人々が翻弄される姿を描いたものと言える。悲劇のなかで手に入れた知識や想いに縋ってポーレットが叫び続けるラストシーンは、物悲しいテーマ曲と相俟って、いつまでも胸に響き続ける。
きっと今後も、この印象的なテーマ曲は単独で愛され演奏され続けるだろう。だが、映画を観たあとだと、その響きはいっそう情緒を増す。シンプルながら無駄のない語り口と演出は古典として残る力強さを備えており、映画本篇も好事家のあいだでずっと語り継がれていくだろうが、出来ればギターの練習曲としてしかあの曲を知らない人にも、いちどは鑑賞していただきたい。
関連作品:
『太陽がいっぱい』
『シベールの日曜日』
『男と女』
『白いリボン』
コメント