『ダーティハリー4』

ダーティハリー4 [Blu-ray]

原題:“Sudden Impact” / 監督&製作:クリント・イーストウッド / キャラクター創造:ハリー・ジュリアン・フィンク、R・M・フィンク / 原案:アール・E・スミス、チャールズ・B・ピアース / 脚本:ジョセフ・スティンソン / 製作総指揮:フリッツ・メインズ / 撮影監督:ブルース・サーティース / 編集:ジョエル・コックス / 音楽:ラロ・シフリン / 主題歌:ロバータ・フラック / 出演:クリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック、パット・ヒングル、ブラッドフォード・ディルマン、ポール・ドレイク、ジャック・チボー、アルバート・ポップウェル、ロイス・ド・バンジー、オードリー・J・ニーナン、マイケル・カリー、マーク・キールーン、ケヴィン・メイジャー・ハワード、ベティ・フォード、ナンシー・パーソンズ / マルパソ・カンパニー製作 / 配給:Warner Bros.

1983年アメリカ作品 / 上映時間:1時間57分 / 日本語字幕:岡枝慎二

1984年4月14日日本公開

2010年4月21日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

Blu-ray Discにて初見(2012/03/02)



[粗筋]

 サンフランシスコ市警に勤めるハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)は相変わらず、強引な捜査官として知られていた。犯人を検挙することを優先するあまりに違法な手段に訴えることも少なくなく、またしても裁判が成立せずに、被告が釈放される結果を招いてしまった。下手な失敗よりも高くつく成功を運んでくるキャラハン刑事を、上層部は疎んじている。

 キャラハン刑事に告発されながらも、裁判が不成立となり釈放された男たちは、だが直後にキャラハンに侮辱されたことを根に持ち、彼に執拗な嫌がらせを始めていた。臆することなく立ち向かっていたキャラハン刑事だったが、カーチェイスに銃撃戦、更には襲撃者に死者が出るに及んで、上層部は捜査にかこつけて彼をサンフランシスコから引き離した。

 上層部が大義名分として用いたのは、折しも発生した殺人事件であった。車中で、股間と脳天に銃弾を穿たれ死んだ男は、サンポーロという小さな街からやって来た人物であり、犯行の状況から怨恨の可能性が疑われる。そこで、背後関係を洗う、という名目でキャラハン刑事を派遣したのである。

 体よく追い払われたことへの不快感はあったものの、キャラハン刑事は現地警察の非協力的な態度に屈することなく捜査に臨んだ。だが、途端に第2、第3の屍体が、彼の前に転がり始める――

[感想]

 第1作から11年を経て、ハリー・キャラハン刑事もすっかり年老いた感がある。ことこの数年間でぐっと容貌が老け込んでいるので、余計にそう感じさせるのだが、しかし衰えたのか、と問われると、決してそうではない。

 第1作時点ではまだまだ血気盛んな正義漢、といったイメージであったが、その後、組織の矛盾と対峙しながら己の価値観を貫いてきた男だからこその、貫禄を身につけている。既に前作の時点で仄めかされていたその渋味は、本篇でいっそう強まっている。

 ルールに縛られていては捕えられない犯罪者を、強引に逮捕するものの、立件できずにけっきょく釈放せざるを得なくなることもいちどや二度ではない。そういう人物だからこそ遭遇するトラブルと、上層部の思惑が絡みあって、一見単純な事件の捜査に駆り出される。

 だがこの事件の構造は、まさにそんな“ダーティ・ハリー”が扱うに相応しい内容だ。犯人である女(ソンドラ・ロック)の犯行動機が少しずつ顕わになり、陸続する被害者たちの素性が描かれていくと、犯人だけを断罪できない背景が浮かび上がってくる。キャラハン刑事が派遣された先の警察が非協力的な態度を示していることもあって、最終的に彼がどちらにつくか解らない、という不透明さもあって、なかなか先読みできない、スリリングな語り口にも繋がっている。決して背景としては込み入っていないが、重厚な味わいを醸しており目が離せない。

 そしてこの作品で見せるキャラハン刑事の振る舞いは、先行作以上に渋く、実に格好いいのだ。寡黙ながら時として放つ粗野な台詞の力強さがこのアンチ・ヒーローの魅力であるが、本篇はそれが特に決まっている。序盤、カフェに立て籠もった強盗たちを相手に放つ、“Go Ahead, Make My Day”という、今となってはキャラハン刑事を象徴する名台詞もそうだが、クライマックス、シルエットで現れる瞬間のクールさたるや、惚れ惚れとしてしまうほどだ。

 アクション映画としても、映像的な興趣を考慮したアイディアが盛り込まれ、見応えがある。物語としては傍流にあたる、キャラハン刑事に逆恨みする連中とのカーチェイスでさえインパクトがあるし、とりわけクライマックス、遊園地を舞台にした銃撃戦の見せ方にはユニークな趣向が凝らされており印象的だ。

 作中で見せるキャラハン刑事の行動、決断が倫理的にどうなのか、という疑問点があることや、いまの目で観れば大人しいとは言い条、それでも痛ましい暴力描写には、娯楽作品として万人が素直に愉しめる、とは言い難い内容ではある。だが、そういうところまで含め、芯の通った男の醸しだす凛々しさが全篇に漲る、このシリーズならではの好篇と言えよう。シリーズでは唯一クリント・イーストウッド自身がメガフォンを取った作品だが、先行する2作品よりも第1作に近く、それでいて魅力を凝縮した内容にしているあたり、やはりこの人はちょっと格が違う。

関連作品:

ダーティハリー

ダーティハリー2

ダーティハリー3

アウトロー

ガントレット

ダーティファイター

ダーティファイター/燃えよ鉄拳

ブロンコ・ビリー

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