原題:“刀手怪招” / 英題:“Master with Crack Fingers” / 監督:チン・ミン / 武術指導:ジャッキー・チェン、他 / 出演:ジャッキー・チェン、ユエン・シャオティエン、ディーン・セキ、ハン・クォツァイ、ユン・ピョウ、チェン・ホンリー、シュウ・ペイペイ、ティエン・ファン、陳少龍 / 映像ソフト発売元:MAXAM、FILMMEDIA CORP.
1973年香港作品 / 上映時間:1時間24分 / 日本語字幕:?
日本劇場未公開
2007年4月23日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video(日本語吹替版のみ収録):amazon]
DVD Videoにて初見(2012/09/02)
[粗筋]
依頼されればどんな悪事も働く組織。だが、罪のない友人でさえも手にかける非情さに、ある兄弟が反旗を翻すが、首領によって兄はあっさりと殺害され、弟は逃走、兄の子供リュウを伴って身を潜める。
それから20年近くの時を経て、リュウ(ジャッキー・チェン/陳少龍)は、叔父を実の父と思いこまされたまま、青年に成長していた。カンフーに憧れているが、どういうわけかリュウが喧嘩するのを好まない父の目を盗み、森に隠れ住む師匠(ユエン・シャオティエン)に教えを請うている。
父の手前、店を手伝っているときは争わないつもりだったが、しかし店で父が難癖をつけられている場面に遭遇したリュウは、その悪党達をのしてしまう。リュウは知らないが、その悪党達は、彼の本当の父を殺した組織と繋がっていたのだ――
[感想]
この作品、正式にジャッキー・チェンの作品と認めるには問題が多い。というのも、ベースはジャッキー初期の主演作だが、そこにディーン・セキやユエン・シャオティエンらにジャッキーのそっくりさんを加えた面々で撮影したシーンを追加、無理矢理再構成してでっちあげた――とは失礼な物云いだが実際そうとしか言いようがないので仕方ない――作品なのである。
当時の香港映画は脚本を用意せずに撮り始める、ということも珍しくなかったようで、ストーリーは破綻しがちだが、それにしても本篇はつぎはぎ、ごまかしの感が強い。脈絡が乏しい、というだけでなく、あからさまに尺を増やそうとして、意味不明のやりとりを付け足してしまっている。これが例えばジャッキー本人がちゃんと登場していたり、あとのシーンと巧く繋がっていく工夫がしてあれば別だが、ジャッキーどころかニセモノも出演しておらず、完全に浮いてしまっている。
本篇はどうやら『スネーキーモンキー/蛇拳』『ドランクモンキー/酔拳』が大ヒットを果たし、にわかにジャッキー・チェンが注目を集めた際、初主演作の権利を持っていた製作会社が、素材を流用して新作としてでっち上げたものと見える。つまり、はなからジャッキー本人の協力を得られない状況で製作されたと思われるが、そう考えると、実はけっこう頑張っているのだ。ロー・ウェイ・カンパニー在籍中にジャッキーと共演した俳優を集めていて、絵面には違和感がないし、起用されたそっくりさんは、なるべく顔が映らないように配慮し、そのうえで可能な限りジャッキーらしいアクションを再現しようとしている。ヒットに乗じよう、という発想は小狡いが、そのためにやれることは果たそうとしていることは窺える。その必死さが観ていて愉しくはある。
とはいえ、ジャッキー・チェンにさほど思い入れがなく、旧作についてもあまり観たことがない、という人にとっては、面白半分でも楽しむところが少ないだろう。やはり、よほど病膏肓に入ったようなマニア以外にはお薦めしづらい――というか、そもそもお薦めしていい代物でもない。こういうモノも作られてしまうような時代だったのだ、というのを感じるための資料、程度に接するのが無難だろう。
関連作品:
『醒拳』
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