原題:“Grave Encounters 2” / 監督:ジョン・ポリカン / 脚本&製作総指揮:ザ・ヴィシャス・ブラザーズ / 製作:ショーン・アンヘルスキー、マーティン・フィッシャー / 撮影監督:トニー・ミルツァ / 特殊効果コーディネーター:ポール・ベンジャミン / 編集:ザ・ヴィシャス・ブラザーズ、ジョン・ポリカン / 音楽:クワイン・クラドック / 出演:リチャード・ハーモン、リアン・ラップ、ディラン・プレイフェア、ハワード・アイ、ステファニー・ベネット、ショーン・ロジャーソン / 配給:『グレイヴ・エンカウンターズ2』上映委員会
2012年カナダ、アメリカ合作 / 上映時間:1時間39分 / 日本語字幕:?
2013年2月9日日本公開
2013年4月3日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon]
公式サイト : http://graveencounters2.jp/
ヒューマントラストシネマ渋谷にて初見(2013/02/15)
[粗筋]
2011年、予告篇の怖さから話題となった映画『グレイヴ・エンカウンターズ』。昨今流行りのファインディング・フッテージものであり、評価はさておき、内容を真に受ける者はいなかった。
映画学校に通い、動画で熱心にレヴューを投稿しているアレックス・ライト(リチャード・ハーモン)も、当然だがあの映画は虚構だ、と考えていた。“死が待つ”という不吉なハンドルネームの人物からヴィデオメールが届くまでは。
メールに添付されていたのは、『グレイヴ・エンカウンターズ』のワンシーンと思しき映像だった。ショーン・ロジャーソン(本人)演じる語り手が、映画の舞台である廃病院の一室をうろついているシーンである。だが、公開された映画には、該当する場面が存在していない。訝ったアレックスが映画について調べてみると、奇妙なことに、出演者もスタッフも、その後に別の作品に携わった、という記録が皆無だった。
俄然関心を抱いたアレックスは、自身の映画撮影の合間を縫い、“死が待つ”から届いたメールを手懸かりに、背景を探ろうとする。そしていつしか彼は、あの映画は虚構ではなく、ほとんどが本当のことではなかったか、という確信を得ていき――やがて、当然のように、ある欲求に取り憑かれていく……
[感想]
前作を“実際に作られた映画”として扱い、入れ子の趣向で続篇を仕立てるケースは幾つか見られる。私は未見なのだが『ブレアウィッチ・プロジェクト2』はそういう発想だったようだし、最近も『ムカデ人間2』が存在する。ユニークなようでいて、けっこう思いつきやすいアイディアなのかも知れない。
本篇の場合、映画自体は実際に公開されているが、背景が胡乱である、という設定にして物語を重ねている。念のために言っておくと、作中で語られているように、スタッフもキャストも本篇以降に関与した作品がない、ということはなく、ちゃんと普通に映画やテレビドラマに携わっている。それを、“みな消息を絶っている”という設定を付加して、新たな恐怖譚のきっかけとし、最終的に前作と同じ、廃病院へと登場人物たちを導いていく。
発想自体、有り体とは言い条、うまく膨らませていけばきちんと牽引力として有効に機能するものなので、格別問題はない。本篇に問題があるとすれば、前作が無茶をしすぎていたこと、そのものだろう。
廃病院に到達するまでの描写は堅実だが、怖さはほとんどない。ショーンの母親の状態や、前作プロデューサーとして登場する男の言葉にやや不気味な予感は覚えるが、本格的な恐怖を招く要素はひとまず見当たらない。それが廃病院に入ると間もなく矢継ぎ早に怪現象が相次ぐわけだが、いい意味でも悪い意味でも前作のスタイルを踏襲している。こうしたP.O.V.方式の映画では珍しい、あからさまな怪奇現象の描写は、それ自体前作の個性であったが、本篇でも廃病院潜入以降は恐怖のモチーフが非常に直接的になる。前作を入れ子にしたが故の違和感がなく、世界観は一致しているが、それだけに前作も抱えていた“お化け屋敷”さながら、というチープさが相変わらず否めない。
また、これも相変わらずだが、陸続として起きる怪奇現象が、クライマックスの趣向と必ずしも一致していない問題がある――これは多くのホラー映画が陥りやすい欠点ではあるが、ある程度までルールが用意されている、或いは一線が引かれているのが観客側に伝われば、怪奇現象そのものの驚きを超えた恐怖が演出出来るのだけど、そこが明確でないが故に“お化け屋敷”というイメージを余計に強めてしまっている。
如何せん、背後を想像させる、という手法は、伝わりやすさを欲する観客には当然ながら届かないので、どうしてもホラー映画としての評価を落としてしまう。特に本篇の場合、発想は決して悪くないが、当事者たちの行動からすぐに伝わる恐怖がない、それどころか表現がダイレクトすぎるあまりむしろ笑えてしまう、という傾向があるので、余計に大きく損をしているようだ。
ただ、個人的にはこの、普通なら避けるような趣向をあえて選択する姿勢には好感を抱く。序盤、恐怖を捨ててひたすら地道に状況を積み重ねていくくだりは、如何にも映画学校の学生らしい表情を描くことで土台となるリアリティをうまく築いているし、クライマックスでは一転し、ほとんどシュールと言っていいほど趣向を徹底しているのも快い――怖い、というより愉しい、という感覚なのはそもそも間違っている気もするのだが。
しかしその結果、一種クリエイターの宿命めいたものを描き出す内容になっている点には注目すべきだろう。いわゆるホラー映画に期待されるものとは異なるだろうが、ここにも恐怖の一形態が存在しているのは間違いない。決して想像の埒外にはないが、それでもあの終盤の展開にある罪深さは、よくよく冷静に考えると慄然とさせるものがある。……むろん、あの展開を笑ってしまう、というのも当然の反応だろうけれど。
いずれにせよ、前作をフィクションとして掘り下げつつも、そのテイストはきちんと引き継いでいる、という意味では真っ当な続篇である。ただし、“恐怖”を楽しみとして享受出来るかどうかは保証しかねる。
関連作品:
『ムカデ人間2』
『邪願霊』
コメント
雨森です。先達ては丁寧なお返事ありがとうございました。
「グレイヴ〜2」は私も前作が個人的に気に入ったので、観に行きました(初めての初日鑑賞です)。
私個人としては、前作以上のやりすぎよりあのオチを評価したいですね。一種メタフィクションの形態を逆手に取ったような感じで、なかなかに憎いと感じました。
ちなみにこの後は「レッドライト」を観に行くつもりです(同じく「[リミット]」が気に入ったクチです)。