怪し会 茜 於 もっとい不動密蔵院

密蔵院の門柱に飾られた提灯、ちゃんと灯りの役目を果たしてる! 最近は夏の恒例となっている、木原浩勝&中山市朗原作、茶風林氏の企画・演出による怪談朗読劇『怪し会』シリーズ、初の秋、というより初冬のスピンオフ企画が、本日、及び明日の2日間限定で開催されます。ちょうどチケット発売の時期、手許不如意のため半ば諦めていたのですが、ギリギリでチケットの追加発売が告知され、何とか潜りこむことが出来たので、本日参加してきました。今日封切りの映画で観たいものもあったのですが、それは先送り。

 今回のイベントは土・日それぞれ2部上演。いずれも初回は14時ですが、私は14時から16時ぐらいに眠気がピークに達するというめんどくさい人間、しかも日曜日は夕方からの所用と重なっているので、迷う余地なく土曜日18時開演の回を選択……というか、当初はこの回が早く売れてしまい、期待していた新耳袋トークライブ会場での販売もなかったから、いちどは諦めていたのですけど。

 会場となるもっとい不動密蔵院は既に4度目の開催、その全部に参加している私はいまさら道に迷うこともない……と高を括って出かけたら、新小岩駅から現地までの移動に利用していたバスの停留所が変更になる、という地味な罠が仕掛けられていた。いつも通りに南口から出たら、景色が妙に見慣れない気がして、いつものバス停を探しても見つからない。こりゃ出口を間違えたか、と思い駅員さんにお願いして駅を通り抜け反対側から出てみたら、やっぱりこっちでもない……という右往左往をした挙句に、出発寸前のバスをギリギリで捕まえて、どーにか開場間もない段階で到着することが出来ました。慣れてても、下調べは必要なのだ。

 いつもと異なる時期に開催されたこのイベント、内容も従来とはあちこち違う。夏のイベントでは、最初の頃はかかっていたものの、「怖くない」と不評だったために避けられてしまい、しかし企画者の茶風林氏自身は愛着があったという、狐狸妖怪を取り扱ったエピソードを、蔵出しのように一挙上演する、という趣旨なのです。稽古の時点で笑いが起きた、というくらい、一般的な怪談のイメージとは異なる今回の上演に合わせ、上演の舞台も、従来利用していた本堂ではなく、幕間に酒肴を提供する場に用いていた広間に変更、これまで密蔵院での上演においては、休憩時間にこちらでのみ提供していた酒肴も、上演中に飲食可能、しかも食べ放題飲み放題、という内容に――もはや酔わせることが主目的みたいな仕組みに変更になっていた。客を酔わせて何をしようと言うのだ!

 で、本篇が開始したのですが……正直なところ、本気で呑んでしまったので、あんまり語ることが出来ません。ここまで、この企画本来の意図であった酒肴を前に押し出されてしまったら、どうにも根が生真面目らしい私は無視など出来るはずがない。チケットの入手が遅かったせいなのか、私は末席も末席、左を見ると、他のお客さんを挟んですぐ向こうに音響のブースがある、という席におり、他のテーブルにはだいたい8人あたりに1本置かれている瓶が、合わせて5人しかいないはずなのに、上演中に2回交換してもらう、というくらい消費していたにも拘わらず、記憶する限り周囲のひとはそれほど呑んでいなかった――もしかしたら私ひとりで瓶1本ぐらい空けたのかも、と疑りたくなるくらい呑んでしまった。前々から感じていた通り、いくら呑んでも理性を失うところまでは行かない質ではありましたが、さすがに気分が良かったり、帰宅後は揺り戻しが来たり、であんまり冷静には振り返れません。

 ただ、これまでのように恐怖のみにこだわらず、笑えるところはしっかり笑いに繋げる演出は、それ自体が酒肴となっているうえ、他のお客さんも、途中から明らかに酔いが進んでいましたが、決して進行は妨げず、いい具合に合いの手を入れたり笑ったり、といい反応をするので、観ていて心地よかった。怪談そのものの恐怖を愉しむ、という趣旨であれば落第ですが、怪談の奇妙な味わいを演出し、その空気に親しむ、という意味では素晴らしい内容でした。相変わらず、こういう場だからこそ可能な立体的な演出もきちんと工夫しているので、お金を払う価値は充分にある――っていうか、私自身は呑んだ量だけでも元を取っている気がしますけど。たぶんこれまでの人生、あんなに呑んだのは1回ぐらいしか覚えがないぞ。

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