- 『ジャッキー・チェンDVDコレクション第7号ベスト・キッド』(DeAGOSTINI) [amazon]
2週にいちどのお楽しみ、ジャッキー・チェンDVDコレクションが例によって3日早く届きました。これまではほぼ初期作品ばかりでしたが、一気に時計を進めて2010年の作品が早くも収録です。ちょうどジャッキー全盛期のころに発表されたアクションドラマの名作を、ジャッキーが師匠役となってリメイクした感動の1本。そろそろ気分が腐ってきたので、きょうは意地で映画館詣でに赴くか、と思っていたところなのですが、この1週間、ケーブルテレビのSTBと壮絶な戦いを繰り広げて疲労困憊だったこともあり自宅を出る気になれず、お昼頃にこれが届いたのを幸い、思わず一気に鑑賞してしまいました。
劇場で初めて鑑賞した当時は、なかなかの佳作、ていどの評価をしていました。しかし、ジャッキー作品を系統立てて鑑賞し、それなりに彼の映画に対する姿勢が理解できたいま観直すと、改めて感慨深い一本だったのだ、と実感します。修行の描写ひとつひとつに彼の旧作へのオマージュがあり、長年貫いてきた志がふんだんにちりばめられている。あちこち強引であるとは言い条、間違いなく香港で撮った諸作よりも遥かに洗練された脚本は、実に見事にドラマを構成していて、骨格としては文句のつけようがない。
そして久々に観直して、ひとつ発見したことがありました。序盤、ジャッキー演じるハンが、ジェイデン・スミス演じるドレに乱暴を働く子供たちをあしらう、本篇で唯一のアクション・シーンの直前。倒れたドレに更に暴行しようとするチョンを、さすがにやりすぎだ、と制止する仲間がいたのですが、クライマックスのトーナメント戦で、準決勝にて道場の師匠がドレを確実に倒すため、怪我をさせろ、と命じる門下生と、どうやら同一人物なのです。それまででもこの師範の腐った性根は細かにちりばめられているのですが、たった一瞬とはいえ過剰な暴力を止めようとした門下生に、卑怯な行為を指示した、という事実が、より師範の人間性の低さを感じさせる。しかも、実際にドレが怪我をして運ばれていく際、舞台を降りながら見送るこの門下生の眼差しには心なしか罪悪感がちらついている。こうした繊細な描写の組み立て方に、改めて唸らされます。
……このふたりが同一人物、というのが私の見間違えだったとしたら赤っ恥ですけど。ただまあ、ドレに怪我をさせた門下生の表情が得意げでなかった、という点がラストシーンに結びついているのは確かで、やっぱり出来は悪くないのです。
ちなみに次の号は『少林寺木人拳』。そのあとは『蛇鶴八拳』とあり、このシリーズで初めてとなる、ロー・ウェイ製作による初期作品が2本続きます。まあ、ロー・ウェイ時代の諸作では出来のいい2本なんですが……言い換えれば、ダメな作品がこのあとどーいうタイミングで収録されるのかがちょっと心配。
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