『ポンペイ(3D・字幕)』

TOHOシネマズ日劇、スクリーン3入口前に掲示されたポスター。

原題:“Pompeii” / 監督:ポール・W・S・アンダーソン / 脚本:ジャネット・スコット・バチェラー、リー・バチェラー、マイケル・ロバート・ジョンソン / 製作:ジェレミー・ボルト、ポール・W・S・アンダーソン、ロバート・クルツァー、ドン・カーモディ / 製作総指揮:マーティン・モスコウィック、ピーター・シュレッセル、ジョン・ブラウン / 撮影監督:グレン・マクファーソン / プロダクション・デザイナー:ポール・デナム・オースタベリー / 編集:ミシェル・コンロイ / 衣装:ウェンディ・パートリッジ / 視覚効果監修:デニス・ベラルディ / 音楽:クリントン・ショーター / 出演:キット・ハリントンエミリー・ブラウニング、アドウェール・アキノエ=アグバエ、キャリー=アン・モスジャレッド・ハリスジェシカ・ルーカス、ジョー・ピングー、サシャ・ロイズ、キーファー・サザーランド / コンスタンティン・フィルム/インパクト・ピクチャーズ(ポンペイ)製作 / 配給:GAGA

2013年アメリカ作品 / 上映時間:1時間45分 / 日本語字幕:林完治

2014年6月7日日本公開

公式サイト : http://pompeii.gaga.ne.jp/

TOHOシネマズ日劇にて初見(2014/07/02)



[粗筋]

 1世紀のローマ帝国は、その版図を広げるべく各地で争いを重ね、虐殺も辞さなかった。ケルト人騎馬族もまた例に漏れず、急襲で制圧されると、ことごとく惨殺される。息を殺して耐え忍んでいた少年ひとりだけが、生き残りとなった。

 成長した少年マイロ(キット・ハリントン)はローマ帝国に奴隷として捉えられ、島国で優れた剣闘士となっていた。向かうところ敵なしの彼の勇姿を、ポンペイ闘技場の運営に携わる男が目撃し、マイロをポンペイへと招くことを決める。

 その長旅の途中で、マイロはポンペイの有力者セヴェルス(ジャレッド・ハリス)の娘カッシア(エミリー・ブラウニング)と出逢う。ローマに留学していたカッシアは現地で様々な男達に言い寄られたが、その身勝手な振る舞いにうんざりして、郷里に戻るところだったが、道中で傷つき倒れた馬を憐れみ、宥めて穏やかに死を与えるマイロの優しさに、ローマ人ともポンペイのひとびととも違う優しさを感じるのだった。

 折しもポンペイでは、老朽化が進んだ闘技場を改修するべく、セヴェルスがローマの有力者に訴え融資を求めているところだった。その見分のために訪れたのは、大臣のコルヴス(キーファー・サザーランド)――まずいことに、ローマで誰よりも熱心にカッシアに言い寄ってきた男だった。

 催された宴席で、コルヴスはカッシアに未練があることをあらわにするが、他の剣闘士と共に見世物として連れ出されたマイロと、馬房で起きたトラブルに乗じてエスケープを図る。だがこのことが、ふたりの間に流れる感情をコルヴスに悟らせてしまう――

 だが彼らはまだ知らない。西暦79年8月24日、歴史に残る惨劇の日が、ポンペイに迫っていたことを……

[感想]

 火山の噴火によりたった一夜にして姿を消した都市があった、ということは、知っているひとは多いはずだ。ただその都市で、滅びの夜にいったい何が起きたのか、知るひとは今や存在しない、と言っていい。生活様式や、どのような状況でひとびとが死んでいったのか、は長年に亘って行われた調査で既にかなり明瞭になっているようだが、実際に現場で災害に遭遇したひとの証言が残っているわけではなく、本当に一夜で全滅してしまった(記録によれば、ギリギリで逃げ延びた者もいた、という話もあるようだが)都市にどんな人物がいて、どんなドラマが繰り広げられていたのか、は想像に頼るしかない。

 本篇はまさに、そういうシチュエーションのもとに展開したドラマやロマンスを創造したものである。

 ――とはいえ、監督はポール・W・S・アンダーソンである。『バイオハザード』シリーズや『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』に代表される彼の作風は、晦渋さや重厚さよりも徹底して親しみやすいエンタテインメントであることを旨としている。本篇でも、噴火やその兆候に対して学術的、哲学的な考察を施して深遠なドラマを構築するようなことはせず、王道というべきかシンプルというべきか、非常に解りやすい物語を組み込んでいる。

 それ故に、本篇はおおむね、想像を超える出来事は起こらない。当然のように身分を超えたロマンスと、解りやすい障害があり、友情が生む熱いドラマもここぞ、というタイミングで盛り込まれる。あまりに解り易すぎて、“安易”と言いたくなるくらいだ。

 実際、作り手の側に多少、安易な意識があったのかも知れない。本篇の評価が低くなるのは、だから致し方ないところでもあるが、しかし個人的には、本篇はこれでいいのだ、と思う。

 複雑なプロットやインパクトの強い出来事で構築された作品ばかりでは倦んでしまう、敢えてひねりのないストーリーも時として必要なのだ、という考えもあるが、本篇の場合、真の狙いはあくまで中盤以降にポンペイを襲う、人類史に於いても稀な災厄を、現代の映像技術をもって再現することにあると捉えられる。その観点からすれば、下手に穿ったドラマで理解を複雑にしてしまうよりは、簡単に作品世界に入り込めるくらいの解りやすさのほうがちょうどいい。人物関係、出来事が把握しやすいから、本題である災害の壮絶さを素直に体感出来る。

 安易、とは評したが、災害の展開にうまくドラマの進行を合わせて、観る側の興奮を巧みに煽るよう考慮していることは評価すべきだろう。兆候で不吉なことが起こり、まさに噴火のその瞬間を目指して、ひとつひとつ事件が積み重ねられていく。どうやってこの未曾有の災害から逃れるのか? という恐怖を掻き立てながら、そんななかで繰り広げられる地位や立場を覆すドラマの数々は、正統派の歴史ものでは却って不可能な趣向がちりばめられている――本篇の中でもわざとらしい、と思えるものが多いのも事実だが、他の設定でここまでやれば、更に謗られるのも免れない。滅びてしまう街だったからこそ、こういうストレートな物語が仕込めるわけだ。

 故に本篇は、ポール・W・S・アンダーソンという、B級のスピリットを持った映画監督が扱うには相応しい素材であり、それを実に彼らしく料理した作品、と言っていい。その辺を解った上で、何も考えずに作品世界に浸るのが適切な楽しみ方だろう。……つまり固いことをガタガタ言いながら観なくたっていいのだ。

関連作品:

バイオハザード』/『バイオハザードII アポカリプス』/『バイオハザードIII』/『バイオハザードIV アフターライフ』/『バイオハザードV:リトリビューション』/『デス・レース』/『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』/『パンドラム

エンジェル ウォーズ』/『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』/『ゾンビーノ』/『リンカーン』/『死霊のはらわた』/『ミラーズ

ベン・ハー』/『キング・アーサー』/『センチュリオン』/『テルマエ・ロマエII

永遠(とわ)の語らい』/『サウンド・オブ・サンダー』/『ヒア アフター』/『インポッシブル

コメント

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