原題:“The Expendables 3” / 監督:パトリック・ヒューズ / 原案:シルヴェスター・スタローン / 脚本:シルヴェスター・スタローン、クレイトン・ローゼン・バーガー、カトリン・ベネディクト / 製作:アヴィ・ラーナー、ケヴィン・キング=テンプルトン、ダニー・ラーナー、レス・ウェルドン / 製作総指揮:トレヴァー・ショート、ボアズ・デヴィッドソン、ベイジル・イヴァニク、ガイモン・キャサディ、ジョン・フェルトハイマー、ジェイソン・コンスタンティン、イーダ・コーワン / 撮影監督:ピーター・メンジースJr. / プロダクション・デザイナー:ダニエル・T・ドランス / 編集:ショーン・アルバートソン、ポール・ハーブ / 衣装:リズ・ウォルフ / 音楽:ブライアン・タイラー / 出演:シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、アントニオ・バンデラス、ジェット・リー、ウェズリー・スナイプス、ドルフ・ラングレン、ケルシー・グラマー、テリー・クルーズ、ランディー・クートゥア、ケラン・ラッツ、ロンダ・ラウジー、グレン・パウエル、ヴィクター・オルティス、ロバート・ダヴィ、メル・ギブソン、ハリソン・フォード、アーノルド・シュワルツェネッガー / ニュー・イメージ製作 / 配給:Pony Canyon×松竹
2014年アメリカ作品 / 上映時間:2時間6分 / 日本語字幕:林完治
2014年11月1日日本公開
公式サイト : http://expendables-movie.jp/
[粗筋]
バーニー・ロス(シルヴェスター・スタローン)率いる“消耗品部隊”はスワジランドの特殊刑務所に囚人を移送する専用列車を襲撃した。狙いは、罪を被せられて収監されていた、“消耗品部隊”創設メンバーのひとりであるドク(ウェズリー・スナイプス)の救出である。囚われていたとはいえ衰えのないドクの活躍もあって、難なく任務を遂行すると、その足でソマリアへと赴いた。
彼らに課せられた任務は、ミンスという武器商人が取引する兵器の強奪である。なかなか姿を現さないと言われていたミンスの登場を待ち伏せていた一同だったが、いざ現れた男を見て、バーニーは動揺する。それはドク同様、“消耗品部隊”創設メンバーに名を連ねていたが、やがて彼らを裏切り、殺されたはずのストーンバンクス(メル・ギブソン)だったのだ。
バーニーの暴走により現場は混乱、任務は失敗し、更に脱出のどさくさにストーンバンクスによってシーザー(テリー・クルーズ)が狙撃され重傷を負う。
帰投したバーニーたちを迎えた、今回の任務の依頼人であるCIAのドラマー(ハリソン・フォード)は警告と共に、ストーンバンクスを生け捕りにするようバーニーに厳命する。もとよりそのつもりだったが、同時にバーニーはひとつの決意を固めていた。“消耗品部隊”のメンバーはもう若くない。ふたたび誰かが傷つき、命を落とすような羽目になるのはどうしても避けたかった。かくしてバーニーはリー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)ら現在のメンバーに解散を告げる。
バーニーはボナパルト(ケルシー・グラマー)の仲介により、若く血気盛んで、かつ使い捨ての利くメンバーを捜し歩いた。
ガルゴ(アントニオ・バンデラス)という、動きは機敏で騒々しいがどう見ても若くない男だけは切り捨てつつ、バーニーが集めたのは4人。元米軍特殊部隊の一員だったスマイリー(ケラン・ラッツ)、女性ながらに優れた戦闘能力の持ち主ルナ(ロンダ・ラウジー)、電子機器のエキスパートであるソーン(グレン・パウエル)、射撃の名手マーズ(ヴィクター・オルティス)。
こうして結成された新生“消耗品部隊”一同はドラマーの情報に基づき、ストーンバンクスが新たな取引に現れる、というブダペストへと赴く。若いメンバーは、バーニーの考えもしなかった作戦により、見事に目的を果たす――かに見えたのだが……。
[感想]
シルヴェスター・スタローン肝煎りによるアクション・オールスター・ムーヴィーも、早くも第3作となった。往年の男子の夢を具現化したかのような企画は、ぶっちゃけストーリーや映画としてのクオリティを別に、心意気だけでも充分にファンを喜ばせるもので、シリーズ化も当然だと思うのだが、ここに来て映画としてのクオリティも侮りがたくなってきた。
とは言え、別にストーリーが洗練され、吟味を重ねた極上の仕上がりになった、という訳ではない。アクション的に言っても、実は旧作とそれほど出来映えに大きな差はないと思う。むしろ、個別の大きな見せ場が減り、数少ないリソースが大御所スタローンや注目の新メンバーに割かれてしまった感があるのが、活きのいい若手に期待していた向きには残念なところだろう。
だが、それでも本篇は恐らく旧作より、もアクション映画愛好家の満足度は高いはずだ。
大事なのは、ツボを外していない、ということだ。
象徴的なのは、最初に消耗品部隊によって救出される新顔、ウェズリー・スナイプスである。のっけから見せ場があるのは、キャリアからも自然なことだが、憎いのはチームに合流した直後、チームのなかでは若い面子との会話だ。当然の疑問として、「どうして刑務所に入ってたんだ?」と問われ、スナイプスはさらりと「脱税だ」と応える。実は演じているスナイプス、ここ数年ご無沙汰だった、と感じていた方もあるだろうが、本当に脱税の罪で投獄されていたのである。そんなことを知らずとも、このメンバーが脱税で捕まる、なんて話が充分ジョークにしか聞えないのだが、俳優たちの動静までチェックしているようなひとならどうしても口許が緩んでしまうはずだ。脚本でそう書かれていたのか、スナイプスがアドリブで仕掛けたのか知らないが、これを言い、使ってしまう心意気がいい。
他にも、こちらも初登場のハリソン・フォードが、今回は姿を見せない某について言及するくだりなど、シリーズを追っている者ならニヤリとする小ネタをちりばめている。私はそこまで徹底してアクション映画を探求しているわけではないので、あまり拾いきれていないのだろうが、恐らく観るひとが観ればもっと多くの仕掛け、引用に気づくのではなかろうか。
こうした俳優の扱いからも窺えるが、本篇は基本的に期待を裏切らない。それはストーリー面でも同様だ。序盤でチームと袂を分かつあたりでハラハラさせつつも、若手を勧誘するくだりではいちいち細かな笑いを放り込んでくる。そして、当然のように訪れる窮地にも、しごく当然のように別れたメンバーたちが戻ってくるのだ――普通ならこの辺はネタバラしになるので伏せるところなのだが、あまりに当たり前過ぎるのであえて書いてしまう。そして、解っていても充分な興奮が味わえるのは、まさに“期待を裏切らない”こその魅力だ。
アクションにおいても、個別の見せ場は減ったが、しかしその分、適切なところに配分しているし、減ったとはいえそれぞれに存在感を発揮する場面はちゃんと用意している。冒頭で気を吐くのはウェズリー・スナイプスだが、新メンバー集めのあたりから現れるアントニオ・バンデラスの“活躍”ぶりは実に印象深い。新たに採用された若手も、従来のメンバーと絡みながらしっかり気を吐いており、たとえば誰かの熱烈なファンで、あのひとが大々的にフィーチャーされてないと納得出来ない、というひとは別だが、アクション映画を多く楽しむひとならほぼ満足するのではなかろうか。そして仕上げに派手な爆破も用意している。
基本的に“お祭り”と呼ぶべき作品である。ストーリーの複雑さなどよりも、如何にアクション映画の愛好家たちを楽しませるか、がポイントだろう。その意味では、前2作以上に丁寧にツボを押さえながら、しかし俳優たちについて大して知らなくともストレートなアクション大作として楽しめる本篇は、シリーズの狙いを最も正しく形にした作品であると思う。
ちなみに、既に第4作の企画は動いているようで、早くも新たな出演者についての噂がちらほら現れるようになってきた。とはいえ、スタローン自身は「状況が複雑だ」と語っていて、まだ具体的な形は見えていないのが現実のようだが、どうせなら、可能な限りこの夢の“お祭り”を続けていって欲しいものである――とりあえず、最初から名前は挙がっていたようだが、諸々が折り合わず出演に結びついていないらしいスティーヴン・セガール、そしてジャッキー・チェンぐらいは何としてでも登場させていただきたい。
関連作品:
『エクスペンダブルズ』/『エクスペンダブルズ2』
『ハミングバード』/『バトルフロント』/『マチェーテ・キルズ』/『ドラゴン・コップス -微笑捜査線-』/『カオス』/『トランスフォーマー/ロストエイジ』/『GAMER』/『インモータルズ−神々の戦い−』/『007/消されたライセンス』/『サイン』/『カウボーイ&エイリアン』/『ラストスタンド』
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