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3年前にリリースされたオールタイム・ベストが好評だったからか、今年はさだまさしのマニアックな楽曲ばかり集めた“ワースト”アルバムが発売されるそうです。もちろん駄目な曲を集めた、というわけではなく、『精霊流し』や『関白宣言』、『風に立つライオン』のような物語性の豊かな誰もが認める名曲とはひと味違う、隠れた名(迷)曲を集めたものなのだとか。
既に公表されている曲には、その昔、『夜のヒットスタジオ』で初披露、その際の演奏をそのまんまシングル化した『建具屋カトーの決心』に、メロディ=歌詞、という思いつきを本気で形にしてしまった怪作『シラミ騒動』、というのが含まれてますが、個人的に嬉しかったのは、見出しに掲げた曲が入っていること。
これは私がファンになってごく最初の頃に購入したアルバム『自分症候群』に収録されていた曲で……ぶっちゃけ、たぶん当時いちばん困惑した曲でした。本当に意味が解らなかったから。シンセサイザー主体でリズムはやたらチョッパーの効いたベース、そして歌っている内容は意味不明。ただ、さだまさしというミュージシャンの振り幅の大きさはよく解る1曲でした。
たぶんさだまさしの曲の中でも飛び抜けて異色作、といえる1曲なので、ベストとは趣を違えたセレクトにするなら選ばれるのは当然、とも言える。これをしっかり押さえて、告知の早い段階で公表したこの“ワースト”、だいぶ楽しみです。ベストのほうは、あまりに重複が多かったので手を出さなかったのですが、こっちは買ってしまうかも。……値段もお手頃ですしね。
発表されている収録曲は、ここまでに挙げた曲のほかは『魔法のピンク』だけ。どこまでを異色作と捉えるか、によって選曲は大幅に変わるでしょうが、ライブでの盛り上がりがいいらしい『梁山泊』あたりはたぶん入るのではなかろうか。『涙のコード・バトラー』とか……はさすがに入れないだろうな。そもそもあれは曲ですらないし。
ひとつ、これが入っていたら嬉しい、と思うのは、『あの人に似ている』。高倉健と裕木奈江のデュエットのために提供した1曲ですが、実はこれ、中島みゆきとの共作なのです。しかも、高倉健のパートをさだまさしが、裕木奈江のパートを中島みゆきが作り、それを同じコード進行のうえで同時に歌う、という非常に変わった作りをしている。
中島みゆきのアルバム『おとぎばなし』において、さだと中島がそれぞれ自分の作ったパートを歌う形でカヴァーし収録されていますが、さだまさしのアルバムにおいては、さだのパートのみを抜き出してアレンジしたものしか収録されていない。もし可能なら、この中島みゆきとのデュエット版をワーストに加えて欲しいところ。もしかしたら、さだまさし一途、というファンは聴いたことがないかも知れないので、意味はあるはず。
――と、こういった具合に想像するのが楽しいので、もういっそのこと、正式発売まで曲目は公表しなくてもいい、とさえ思ってたりします私。
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