原題:“Ghostbusters” / 監督&製作:アイヴァン・ライトマン / 脚本:ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス / 製作総指揮:バーニー・ブリルスタイン / 撮影監督:ラズロ・コヴァックス / 美術:ジョン・デ・キュア / 編集:シェルドン・カーン、デヴィッド・ブリューイット / 衣装:セオニ・V・アルドリッジ / 視覚効果スーパーヴァイザー:リチャード・エドランド / キャスティング:カレン・レア / 音楽:エルマー・バーンスタイン / 主題歌:レイ・パーカー・ジュニア / 出演:ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、シガーニー・ウィーヴァー、ハロルド・ライミス、リック・モラニス、アニー・ポッツ、ウィリアム・アザートン、アーニー・ハドソン、デヴィッド・マーグリース / 配給:コロンビア映画 / 映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertainment
1984年アメリカ作品 / 上映時間:1時間45分 / 日本語字幕:戸田奈津子
1984年12月2日日本公開
2016年8月3日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon|4K ULTRA HD + Blu-ray セットc:amazon|2016年版公開記念コレクタブル・エディション(Blu-ray):amazon]
[粗筋]
コロンビア大学に勤めるピーター・ヴェンクマン(ビル・マーレイ)の専門は超常現象だが、いまのところ目立った成果を上げていない。同僚のレイモンド・スタンツ(ダン・エイクロイド)とイゴン・スペングラー(ハロルド・ライミス)は霊体捕獲のための装置を開発し、実在を証明すべく躍起になっているが、ヴェンクマンは成功に半信半疑だった。
しかしある日、大学の図書館で大規模な怪奇現象が発生する。駆けつけたヴェンクマン達は遂に、本物のゴーストに遭遇したのだ。ほうほうの体で逃げ出しつつも、自分たちの研究に新たな道が拓けた――と歓喜したのも束の間、研究室に戻ってみた彼らに突きつけられたのは、解雇通告。長年、何の収益ももたらさない彼らの研究に、大学側が見切りをつけてしまったのだ。
そこで3人は一念発起、スタンツの実家を抵当に入れて資金を確保し、幽霊退治のための会社“ゴーストバスターズ”を立ち上げる。最初こそ世間から冷ややかな目を向けられる一同だったが、有名ホテルでの幽霊騒動を解決に導いたことで事態は好転する。
一躍大人気となる“ゴーストバスターズ”だったが、一方で、ニューヨークに突如として激増した幽霊騒動の原因が彼らにあるのではないか、という疑いの声も上がりはじめた――
[感想]
公開当時に一世を風靡し、続篇にアニメ版エピソード、更には30年を経てリメイク版まで製作された人気作である……が、率直に言って、いま観ている私にはあまりしっくり来なかった。
映像表現は日々進歩している。とりわけ顕著なのがVFXだ。いまやモンスターばかりか人型に変形するロボットでさえもリアルな質感をもって表現出来るまでになっているが、本篇の発表された当時はまだアナログな特撮が主流だった。そのヴィジュアルは当時としてはインパクトは強かっただろうが、やはりいま観ると安っぽい印象を受けてしまう。
また、コメディであることを頭に置いても、少々乱暴すぎる展開は、かなり人を選ぶように思う。科学的を装いながらも言動が感情的すぎるメインキャラクター、そんな彼らの言動が気づけば正当化されてしまっている世界観。突拍子もないキャラクターが信じがたい受け入れられ方をする、というのは完全にコメディの定石だが、うまく処理すれば充分に説得力のあるオカルトものになり得る構造を備えているだけに、思いっ切り突き抜けすぎているのが却ってもったいない。
ただ、そういう欠点を念頭に置いても、極めて個性的な世界観を持つ作品であり、類のない魅力を備えた作品であったことは否定しようがない。
“幽霊”やその存在を巡るガジェットの多くは、本篇より以前にまことしやかに囁かれていたものを土台としているが、本篇は作品のスタイルに合わせてそれらを整理しており、“幽霊”の存在やそのありよう、退治のための方法論などが直感的に理解しやすくなっている。その解り易いルールの上でドタバタが起こり、ゴースト達との格闘が行われるからこそ、本篇は独創的な魅力に彩られているのだ。
メインキャストが決して美男ではないことも実は効いている。なまじ登場人物の見た目が良かったり、解り易くモテモテだったりすると、そのことが鼻につく――それ自体が物語の構造として組み込まれているならともかく、本篇はメインのひとりであるヴェンクマンが女にだらしなく、決して魅力的とも映らないのになんとなくデイナ(シガーニー・ウィーヴァー)とうまく行ってしまう、という“理不尽さ”が味わいとなっている。
メインキャストにいまいち華が足りない分は、幽霊達の意表をついたヴィジュアルが補っている。最初こそステレオタイプにおどろおどろしい“ゴースト”が姿を見せるが、話を追うごとに、「ほんとに怖いの? こいつ」と首を傾げたくなる見た目のゴーストが登場するようになる。だが、その見た目と釣り合わない凶暴性や破壊力が驚きとなり、笑いにも繋がり、何より作品の唯一無二の魅力を生み出している。
こうして解釈していくと、本篇の魅力は、お約束や常識を逆手に取られる意外性、理不尽さにこそあるように思える。恐らく製作者達はそれをコメディの手法として援用している、と思われるが、オカルト・ホラーというスタイルに落とし込むことで、その意外性やインパクトがいっそう極まった。
だからこそ、発表当時に多くの観客の耳目を惹き、心を鷲掴みにしたのだろう。いまや受け止める側の知識も豊富になり価値観も多彩となってしまったが故に、本篇の作り方、趣向の数々もいささか陳腐化してしまった。
ただ、だからと言ってもはや顧慮する必要のない作品とも思わない。一時代を確立するほど独創的で衝撃的な1本であったことは変わりなく、本篇を経たことで『霊幻道士』シリーズなどオカルトの新たな切り口が開かれていったのは確かだろう。もはやクラシックな手法で描かれた怪奇現象の数々も今となってはそれ自体が珍重すべき魅力に映る。革新的なインパクトこそ薄れたが、魅力の片鱗はいまでも充分に感じられる作品である。
ちなみに、本篇で提示された、オカルトものとして充分な説得力を持った作品になり得る可能性は、30年以上を経て発表されたリメイク版『ゴーストバスターズ』で見事に証明された。そちらについてはまた後日記すつもりだが、本篇に魅せられつつもVFXのクオリティや世界観の徹底ぶりに物足りなさを感じていた、という人なら、恐らくはリメイク版のほうが色々な点で唸らされるはずだ。
関連作品:
『ゲスト』/『マイレージ、マイライフ』/『ヒッチコック』
『ロスト・イン・トランスレーション』/『グランド・ブダペスト・ホテル』/『ブルース・ブラザース』/『エイリアン』/『エイリアン2 完全版』/『アバター』/『宇宙人ポール』/『エクソダス:神と王』/『ストリート・オブ・ファイヤー』/『イントゥ・ザ・サン』/『隣の家の少女』/『DRAGONBALL EVOLUTION』
『ゴースト/ニューヨークの幻』/『13ゴースト』/『ゴーストシップ』/『ステキな金縛り』/『パラノーマン ブライス・ホローの謎』/『貞子vs伽椰子』
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