『ブレイド3(2004・アンレイテッド版)』


『ブレイド3(2004・アンレイテッド版)』Blu-ray版(Amazon.co.jp商品ページにリンク)。

原題:“Blade : Trinity” / 原作:マーヴ・ウォルフマン、ジーン・コラン / 監督&脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー / 製作:ピーター・フランクフルト、デヴィッド・S・ゴイヤー、リン・ハリス、ウェズリー・スナイプス / 製作総指揮:アヴィ・アラド、カール・ボイター、トビー・エメリッヒ、スタン・リー / 撮影監督:ガブリエル・ベリスタイン / プロダクション・デザイナー:ルクレツィア・キャスタ、クリス・ゴラック / 編集:コンラッド・スマート、ハワード・E・スミス / 衣装:ラウラ・ジーン・シャノン / キャスティング:ロニー・イェスケル / 音楽:ラミン・ジャワディ、RZA / 出演:ウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、ドミニク・パーセル、ジェシカ・ビール、ライアン・レイノルズ、パーカー・ポージー、マーク・ベリー、ジョン・マイケル・ヒギンズ、カラム・キース・レニー、トリプルH(ポール・ラヴェスク)、ポール・アンソニー、フランソワーズ・イップ / アメン・ラー・フィルムズ製作 / 初公開時配給:角川ヘラルド・ピクチャーズ / 映像ソフト発売元:Warner Bros. Home Entertainment
2004年アメリカ作品 / 上映時間:2時間分(オリジナル:1時間53分) / 日本語字幕:? / PG12
2005年5月7日日本公開
2015年12月2日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD VideoBlu-ray Disc|Amazon Prime Video:amazon|]
Blu-ray Discにて初見(2021/3/11)


[粗筋]
 闇の世界に蠢き、人間の血を貪り生きる吸血鬼たち。母の胎内にいるときに感染し、吸血鬼の身体能力を持ちながらその弱点を持たない肉体を得たブレイド(ウェズリー・スナイプス)は、相棒のウィスラー(クリス・クリストファーソン)と共にヴァンパイアハンターとなって闇を駆けた。
 その夜もブレイドは吸血鬼たちを狩っていた。執拗に逃げる男を街中まで追い込み、銀の銃弾を撃ち込んだが、しかし男は吸血鬼のように塵にはならない。ブレイドは己が、決死の罠にかけられたことを悟った。
“白昼、街中で大勢を手にかけた殺人鬼”として報じられ、ブレイドは表の社会から追われる身となってしまった。間もなくFBIに、ブレイドのアジトとする工場を突き止められ、急襲される。ウィスラーは警察にも侵入している吸血鬼たちの配下から情報を守るため、アジトの中にある情報端末をすべて破壊してから絶命した。ブレイドも、抵抗虚しく取り押さえられてしまった。
 FBIの尋問にブレイドは敢えて真実を告げるが、むろん吸血鬼など信じるはずもない。彼を診察した精神科医のヴァンス博士(ジョン・マイケル・ヒギンズ)も、手の着けようがない、という判断を下す。
 望む証言をしないブレイドに業を煮やした捜査陣は、許容量を超えた自白剤の投与を決断する。万事休すか、と思われたそのとき、ふたりの人物が警察署に突入し、ブレイドの拘束を解いた。
 救出に現れたのは、ハンニバル・キング(ライアン・レイノルズ)とアビゲイル(ジェシカ・ビール)――ブレイドとは別に吸血鬼たちを追い、始末する組織《ナイト・ストーカー》のメンバーである。
 彼らとの出会いが、やがてブレイドを、最大の闘いへと導いていく――


『ブレイド3(2004・アンレイテッド版)』予告篇映像より引用。
『ブレイド3(2004・アンレイテッド版)』予告篇映像より引用。


[感想]
 ウェズリー・スナイプス主演&製作による、マーヴェル・コミックを原作とするダーク・アクション・シリーズの完結篇である。本篇の発表後、原作の映画化権は、スタジオを立ち上げたマーヴェルのもとに戻り、《マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース》の1篇として再起動されることが確定しているので、一部で噂されるアメコミ映画の“多次元世界”構想――様々な可能性に応じて複数の並行する世界が存在し、それぞれの世界に同じヒーローが異なる設定で存在する――に乗じることがなければ、ウェズリー・スナイプス演じるブレイドは本篇が見納めとなるはずだ。
 結果的に“3部作”と言われているが、もともと3作での完結を構想していた、とは考えにくい。それにしては第1作のクライマックスが派手すぎ、締め括りである本篇の終幕が少々軽すぎる――誰もが知る“吸血鬼の始祖”を最後の敵に設定した趣向自体は悪くないのだが、何せ第1作では多数の生贄を要求する儀式、という見せ場まであるだけに、本篇の最終対決はインパクトが薄い。
 この見せ場と同様、本篇は先行する2作と比較すると、アクやインパクトといったものに欠けている。“吸血鬼”というものを近代的なアプローチでアップデートした第1作、そうして構築された世界観のうえにギレルモ・デル・トロ監督の作家性で物語を展開した第2作、とそれぞれに個性が際立ちすぎた。しんがりを飾ったデヴィッド・S・ゴイヤー監督は第1作、第2作でも脚本を手懸け、更に本篇では製作まで兼ねているのだから、恐らくは監督自身の構想をかなり忠実に再現出来る環境だったはずだが、それゆえに小綺麗にまとまり、前2作を超える力強さを獲得出来なかった、と思われる。
 工夫がないわけではない――むしろ、目を惹かれるアイディアが細かに鏤められている。人間を吸血鬼と錯覚させてブレイドに殺させ、彼を人間社会から追われる立場にしてしまう、という序盤の展開や、ウィスラーに代わる新たなパートナーとして登場するふたりの設定に、彼らが駆使する武器のユニークなデザイン、そしてアクション・シーンでの多彩なシチュエーションなど、実に多くのアイディアを填め込んでいる。創造性という点では、先行する2作にひけを取らない。
 だが本篇の場合、それらがきちんと全体に馴染まず、しばしば悪目立ちしてしまうのも問題だ。特にブレイドと共に戦うふたり、ハンニバル・キングとアビゲイルの設定は着眼なのだが、どちらも物語においてあまり有効活用されていない。ハンニバルは先行作で提示された、このシリーズにおける事実を踏まえていることが面白いが、そこどまりで広がりがない。アビゲイルに至っては逆に、これまでのシリーズに提示されていない事実によって無理矢理ねじ込んだ感があって、もともとわざとらしい印象があるのに、やはりその設定に見合うような活躍を示さないのが惜しまれる。
 何より、せっかく冒頭で「人間社会から追われるブレイド」という展開を用意したのに、その妙味が早いうちに失われてしまうのも勿体ない。そもそも闇の世界を生きる吸血鬼たちを追うブレイドは、彼らのように紫外線で滅びることはないが、結果的に夜を中心に、ひと目を憚るような振る舞いが求められる。いちど警察の手を逃れれば、行動派変わらないのだ。もうひとつアイディアを加えて、ブレイドや吸血鬼たち夜の住人と人間社会との対立を深く描いていけば、前2作を踏まえつつも新たな次元にまで作品を進められたはずだ。他方で、追われている割に、けっこう堂々と昼日中の往来を練り歩く不自然な描写もあって、ただただ残念と言うほかない。
 シリーズとしての基本的な魅力は押さえている。ふんだんで、人間を超越する身体能力を持つブレイドならではのアクションは力強く、1作目より控えめにはなっているが、随所に決めを入れてスタイリッシュに魅せている。銀製の武器や紫外線を使うだけであっさり粉砕されてしまう、吸血鬼たちは大量に投入して、アクションにスピード感、重量感も施している。にも拘わらず、先行作ほどのクオリティを感じないのは、そのまとまりのなさ、アイディアを高める工夫が足りなかったが故だろう。
 公開から16年を経たいまとなっては、本篇の最大の見所は、ハンニバル・キングというキャラクターに、のちにライアン・レイノルズが演じる《デッドプール》の萌芽が見える点かも知れない。生憎私は本篇も『デッドプール』も原作のコミックにはまったく接していないため、どちらがどのくらい原作に添っているのか、を判断することは出来ないのだが、少なくともライアン・レイノルズ自身には、本篇に出演した時点で、いずれ演じる《デッドプール》のイメージがあったようにさえ映る。終始人を食った物言いをし、窮地に陥っても飄々とするハンニバル・キングの姿に、後年のブレイクの予兆を見るのがいちばん興味深いかも知れない。


関連作品:
ブレイド(1998)』/『ブレイド2(2002)
バットマン・ビギンズ』/『ダークナイト』/『ダークナイト ライジング』/『マン・オブ・スティール』/『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』/『ジャンパー』/『ゴーストライダー2
カオス』/『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』/『ジャケット』/『リベリオン』/『キラー・エリート』/『セルラー』/『トールマン』/『悪魔の棲む家(2005)』/『デッドプール』/『スーパーマン・リターンズ』/『幸せへのキセキ』/『バタフライ・エフェクト
007/危機一発(ロシアより愛をこめて)』/『007/ゴールドフィンガー』/『プレデター

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