天才工学少女・姫百合珊瑚とその妹でお馬鹿だけど家事の達人である瑠璃の双子シナリオ終了。
前回も書きましたが、個人的には今のところ彼女たちのシナリオをいちばん高く買います。かなり紆余曲折に富んだ展開ですが、久寿川ささらのように段階に分かれているのではなく、少しずつ彼女たちの個性と、ふたりを巡る問題の本質が浮き彫りになってくる筋運びが巧み。
わたくしごとですが、この手のゲームでは登場人物同士の関係性が攻略の面からは軽視されがちなのが気に掛かっていました。その辺を意識した作品も少なくなく、実際この作品でも久寿川ささらはかなり意識していて、終盤では唐変木の主人公を前に意味深なやり取りをする場面が幾度もありましたが、それ自体が波乱の材料にはならなかった。翻って姫百合姉妹のエピソードはそれがギリギリまで牽引材料となっている。その決着がアレ、というのも、『ToHeart』という本来真っ当な恋愛ゲームではかなり意欲的でいい。そのうえ『〜XRATED』としてのプラス要素が濃いのですから言うことはない。出来れば、もうちょっと時間が経ってからの“その後”を示して欲しかったですが、それは望みすぎでしょう。あれから更に“奥”を示唆するのはさすがに厄介だ。
続いては、ミステリ研究会と一口に言っても小説ではなくUFO・オカルト類を追うほうの女の子、笹森花梨。彼女は正直、私にとっては微妙なキャラで、攻略するのも躊躇ってました。相手の意見に耳を傾けることなくマイペースで突き進むようなタイプの人間には、間隔をおいて少しずつ慣らしていかないと駄目、という考えなので、無理矢理引きこまれた部活に訳もなく加わる主人公の心理にまったく同調できないので、必然的に彼女の攻略にも気乗りがしなかったわけで。
シナリオ自体も、彼女のそうしたキャラクターに変化が生じるでもなく、またどうしてそういう人柄になったのか掘り下げてドラマを構築するわけでもなく、唐突にトラブルが生じて、唐突に解決することが求められて、それもまたあっさりと片づいてしまい、物足りなさを禁じ得ない。昔からの幼馴染みで、些細な行動にも主人公が愛着や想い出を感じ取ることの出来るこのみやタマ姉のエピソードと違って、花梨の行動はすべて理解の埒外にあるため、その的外れさや破天荒ぶり以外に魅せるところがないのに、いまいち突出した個性をアピールするシナリオがないのが問題なのでしょう。どうして主人公が彼女に惹かれたのかも、反対にどうして彼女が主人公に気を許していったのかもよく解らないままなので、ロマンスとしても盛り上がりに欠く。まるっきり魅力のないキャラクターだ、とまでは言わないのですが、それがまったく活かされていないので、シナリオとしては評価できません。既に全キャラ攻略を済ませていますが、シナリオという点では彼女が最も低調でした。花梨の良さは寧ろ、最後に攻略した宇宙人娘・るーこのシナリオのほうがきっちり描いていたように思います。
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