原題:“The Last Seven” / 監督:イムラーン・ナクヴィ / 脚本:ジョン・スタンリー / 製作:トビー・メレディス、サイモン・フィリップス、パトリシア・ライバーシック / 製作総指揮:ウェイン・マーク・ゴドフリー、ギャリー・ステワート、ブレンダ・A・パーカー、ヴァレンタイン・ストックデール、タズ・アユーブ、サラ・ピーターズ / 共同製作:マーティン・J・トーマス、アンディ・トンプソン、マーティン・チャーク / 撮影監督:デヴィッド・マッキー / プロダクション・デザイナー:スチュアート・キーンズ / 編集:ジャスディップ・セイガー、リチャード・コルトン / 音楽:マシュー・ウィリアムズ / 出演:テイマー・ハッサン、サイモン・フィリップス、デイジー・ヘッド、セバスチャン・ストリート、リタ・ラムナニ、ジョン・モーソン、ダニー・デアー、ロナン・ヴィバート / 映像ソフト発売元:アット・エンタテインメント
2010年イギリス作品 / 上映時間:1時間24分 / 日本語字幕:?
日本未公開
2011年5月3日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]
DVD Videoにて初見(2018/03/22)
[粗筋]
ウィリアム(サイモン・フィリップス)が目醒めたのは、ロンドンの路上。あたりにはまったく人気がない。周囲を彷徨い、呼びかけても、返事をする者はなかった。
ようやく遭遇したのは、3人の男女。ボトル片手に酒を呑み続けるヘンリー(ジョン・モーソン)、ややふて腐れた少女クローイ(デイジー・ヘッド)、そしてライフルを携えたジャック(テイマー・ハッサン)。しかも彼らには、ウィリアムと大きな共通点があった。
全員、記憶を失っていたのである。
いったい、ウィリアム達の身に何が起きたのか? どうやら軍人らしいジャックの指示で、安全な場所へと移動を始めた矢先、彼らは更に3人の“記憶喪失者”と遭遇するのだった……。
[感想]
この粗筋だけなら多少は面白そうに見えるかも知れない。実際、序盤はけっこう胸を高鳴らせるような描写が続く。背景を仄めかすがごとく血腥いひと幕がプロローグに置かれ、オープニングを挟んで、路上に昏倒していたウィリアムが目醒める。ひと言も発しないまま彼が彷徨うロンドンの街には人影一つない。シチュエーション的には『28日後…』や『オープン・ユア・アイズ』(と、そのリメイク『バニラ・スカイ』)でとうに先取りされているものだが、それでもミステリやスリラー愛好家にとってはワクワクする描写である。
ただ、他の登場人物が合流して以降がいけない。特に見せ場もなくダラダラと進んでいる印象で、随所に彼らが失った記憶の断片と思しい場面がフラッシュバックするものの、それについて言及することも、進行中の出来事の中で関連付ける工夫もないので、観ている側は戸惑うほかない。
いちおうはこの出来事に“原因”らしきものが示されるが、恐らくこれで納得できる人は少ないだろう。私自身もそうだったように、こういうネタだろう、と推測をつける人もあるはずだが、その割にはやはり“どうしてこうなったのか?”というあたりの理由付けが不明瞭でカタルシスに結びつかない。こういうことが起きた、というのは受け入れるとしても、本篇の描写だけだと、どうしてこの7人が残されたのか、という点も不明なのである。これが原因だとするなら、他にも残っている人間がいて然るべきだし、或いは7人のうちここにはいないはずの人物が混ざっていることにもなる。いずれにせよ、そのあたりの理由を想像する材料も乏しく、アイディアを充分に活かしているとは言い難い。
カメラワークや個々の演技はそれほど悪いとは思わないし、雰囲気もあるのだが、如何せんプロットの練り込みがあまりにも甘い。日本では映像ソフト直行となり、リリース7年経った現在、amazonでは新品が見つからない状況だったが、それも致し方ない、と思える出来映えだった。
関連作品:
『顔のないスパイ』/『キック・アス』/『ザ・マスター』/『ミーン・マシーン』/『ウォルト・ディズニーの約束』
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