昨年夏からリリースが始まった新しいシリーズ。自宅に不気味な人形を投げ込む悪戯を働く人間を追って異様な出来事に遭遇する“なげこむ”、墓地でトリック自撮りをしていた男性の映像“めぐる”、LINEアカウント乗っ取りから始まる怪事件を追った“ばける”前後篇など、7つのエピソードを収録。
『ほん呪』スタッフが関わっている、と宣伝で触れている作品はおおむね印象がいいので、新シリーズながらこれにもかなり期待を寄せていたのですが……悪くはないんだけど、微妙。
出来自体もそうなんですが、いちばん困るのが、フィクションだと割り切って観て欲しいのか、ノンフィクションと思わせたいのか、がいまいち判然としないこと。ナレーションの構成はむろん、ドキュメンタリーパートの作り方があからさまに児玉和土演出あたりからの『ほん呪』の影響が色濃いので、雰囲気だけなら正統的後継者と捉えられるんですが、厄介なのはドキュメンタリー部分をよくよく観ると、スタッフルームとして登場する部屋が明らかに『心霊玉手匣』と同じ場所を使っていること。リリース元も一緒ですから、これ、どう考えてもフィクションだ、という表明なんですが……。だったら最後にはっきりとスタッフロールを出せばいいものを、そうしていないから、モヤッとする。
モヤッとするのは、ではスタッフルームは現在活動停止中の玉手匣チームの撮影場所と同じところを借りただけで、あくまでノンフィクションなんですー、というスタンスだったとして、ならなんでドキュメンタリーパートに出てくる人がことごとく台詞を喋ってるみたいなの? というところにツッコまざるを得ないからです。突然押しかけた、変な団体を名乗るスタッフをあっさり家に通してしまう投稿者のご家族とか、いきなりカメラを向けられてもたじろぐ様子すらないご友人とか、不自然な部分も多い。フィクション、ということが窺えるような態度なら、まあ第1回作品だし、と許容も出来るんですが、ノンフィクションに見せかけたいにしてはあまりに迂闊。なまじ構成が児玉和土、というか、それこそ岩澤宏樹の『心霊玉手匣』に近しいので、余計にドキュメンタリーとしての見せ方の拙さが引っかかってしまうのです。最後のエピソードの締めに大変なことが起きますが、その後どうなったのか、の言及がないのも、ドキュメンタリーとしては収まりが悪い。続篇が明示されているならともかく、まだナンバリングもしていなかった時点で、あれは悪い意味で凝り過ぎです。
ただ、怪奇映像それ自体の趣向は、『ほん呪』などに先例はありそうなタイプながら特徴があって見応えはありますし、まとまりが悪く不自然さもあるものの、ドキュメンタリー部分もいちおうは興味深く観られる。現時点で第3作まで出ていますが、とりあえずしばらくは様子を見ましょう。
ちなみにこの作品、肝心の映像よりも、ドキュメンタリーパートで突如として聞いた覚えのない“高田ひかり(仮)”という人物名がテロップに出てきたことのほうが怖かった。たぶん、投稿者の“高田かなえ(仮)”を書き間違えたんでしょうけど、なんで“ひかり”なのよ。
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