ディレクター:土田準平 / プロデューサー:怪人K/島野伸一、庄子圭 / 構成:町野弘幸 / オープニング映像:上野コオイチ / 編集:401 LOW、関本芳之 / MA:山口太一 / 協力:オバケン、EDITRIBE / スーパーヴァイザー:マイケルティー / 出演:青木佳音 / ナレーター:小本博司 / 配給:アイエス・フィールド / 映像ソフト発売元:MAGICAL
2013年日本作品 / 上映時間:1時間30分
2013年8月10日日本公開
2013年9月4日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]
DVD Videoにて初見(2014/01/01)
[粗筋]
“カメラ遊び”不明の差出人から届いた映像。病床にいる父親からビデオカメラをプレゼントされた幼い子供が撮った映像らしい。だが、一見幸せそうな光景は、間もなく不穏な様相を呈していく……
“殺人者が住んでいる家”幼女が犠牲になった殺人事件の舞台であった、と言われる廃墟に、友人と共に潜入した投稿者。誰もいないはずの家の中には、不気味な気配が漂っていた……
“自撮少女”とあるSNSで、リアルタイムで赤裸々な自画撮りをアップしていた少女。しかし、囃したてられて、より顕わな姿を晒した彼女に対する参加者の反応は、冷たいものだった……
“アパート”女優の青木佳音が、自身の体験を演じる再現映像の撮影に、舞台となったアパートを訪れる。順調に進んでいたかに思われた撮影は、しかし結果として公表をためらわせるものとなった……
[感想]
『ほんとにあった!呪いのビデオ』を筆頭に、奇妙な動画や心霊スポットなどを取材した、いわゆる怪奇ドキュメンタリーは、レンタル店ではお馴染みのコンテンツだが、中身は玉石混淆――というより不出来なものが多い。映像自体はそれなりにインパクトがあっても、演出が妙に凝りすぎていて怖さを損ねていたり、その不可解さについて検証したり、追跡取材するなどして恐怖を深めていくような工夫に欠いていて、観終わって物足りなさを覚えるものがほとんどだ。まともな出来、と言えるものは大抵『ほん呪』のもとスタッフが携わっていたりして、点数ほどには決して充実したジャンルとは言い難い――レンタルで手軽に得られる娯楽、という意味では適当と言えるかも知れないが。
この『本当にあった投稿闇映像』というシリーズは、劇場版と相前後して、ほどなくふた桁に達するほどに継続しているので、一定のクオリティは備えている――といいたいところだが、前述した演出の間違った凝り方や取材の乏しさ、という怪奇ドキュメンタリーものが孕みがちな欠点が揃っていて、私には不満のあるシリーズだった。それでも、映像自体は比較的興味深いものがあるので鑑賞を続けていたが、そろそろ見限ってもいいかな、と考えはじめていた頃に、この劇場版が登場した。
さすがに、わざわざ“劇場版”として公表しようと考えただけあって、従来のシリーズ作品よりも力が入っている。これまでは投稿映像をある程度編集し、解説や追加取材を付け足すぐらいのものだったが、本篇では体験談を再現映像にまとめる試みもあれば、ネットでのやり取りをテキスト、写真、動画を交えて描き出す、という工夫も施している。見せ方が多彩なので、投稿映像の単調な内容のせいで退屈させる、というこの手の怪奇ドキュメンタリーが陥りがちな状況を回避している。
ただ、あまりに飾りすぎているのが問題だ。オリジナルビデオのシリーズもそうだったが、やたらとおどろおどろしく装ったナレーションは、この劇場版では更に過剰になっている。とりわけ、“自撮少女”でのナレーションなどは、語られていることの怖さを、配慮のない見せ方で殺してしまっているばかりか、ナレーションのせいでいっそ滑稽な代物にしてしまった。スタッフはそれを本気にしていないのかも知れないが、怪奇映像とそれにまつわるエピソードとして、きちんと怖さを描き出したいなら、もっと繊細であるべきだろう。
個々のエピソード、怪奇映像そのものの内容は決して悪くなく、間違いなくオリジナルシリーズより見応えはあるのだが、この程度のクオリティなら『ほんとにあった!呪いのビデオ』は通常のシリーズでしばしば達成している。本篇のリリースからほどなく発表された『ほんとにあった!呪いのビデオ55』と比較してしまうと、どうしても志が低いように思えてならないのだ――わざわざ“劇場版”と銘打つなら、もっと事実と、恐怖と向き合う覚悟があって然るべきだろう。
関連作品:
コメント