『冒険者たち』

TOHOシネマズ六本木ヒルズ、階段下のポスター 冒険者たち [Blu-ray]

原題:“Les Aventuriers” / 原作:ジョゼ・ジョヴァンニ / 監督:ロベール・アンリコ / 脚本:ロベール・アンリコ、ジョゼ・ジョヴァンニ、ピエール・ペルグリ / 製作:ジェラール・ベイトウ / 撮影監督:ジャン・ボフェティ / 音楽:フランソワ・ド・ルーベ / 出演:アラン・ドロンリノ・ヴァンチュラジョアンナ・シムカス、セルジュ・レジアニ、ポール・クローシェ、ハンス・メイヤー、オディール・ポワゾン、ヴァレリー・インキジノフ、イレーヌ・チュンク / 配給:大映洋画部 / 映像ソフト発売元:Amuse Soft Entertainment

1967年フランス作品 / 上映時間:1時間50分 / 日本語字幕:細川直子

1967年5月18日日本公開

2011年12月9日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

新・午前十時の映画祭(2013/04/06〜2014/03/21開催)上映作品

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2013/04/06)



[粗筋]

 前衛芸術を志すレティシアは、素材となる鉄屑を探しているときに、マヌーとローランと知り合う。軽飛行機のパイロットであるマヌーは、凱旋門をくぐる様子を撮影するため、その訓練をしているところだった。ひょんなことから彼らの手伝いをしたレティシアはすぐに親しくなり、彼らの工房の一画を借りて制作に励むようになった。

 自由を謳歌するかのような彼らの暮らしは、だが間も無く暗雲が広がった。マヌーたちが仕事と信じて請け負った撮影は単なる戯言で、稼げなかったばかりでなく、マヌーは危険な操縦をしたかどで免許を剥奪されてしまう。一方、私財を投じてレティシアが催した個展も、新聞で酷評され、収入には繋がらなかった。

 ローランが開発を続けていたレーシングマシン用のエンジンも爆発し、すっかり夢破れた一同は、一縷の望みを夢のような話に託す。それは、マヌーを担いだ保険会社の男ヴェルタン(ポール・クローシェ)が、マヌーの復讐におののいて、提供した情報だった。かつて資産家がコンゴの内戦に巻き込まれ、逃亡する際に搭乗した飛行機が墜落、全財産と共に海に没したという。未だに回収されておらず、無事に発見できれば、保険会社の取り分を引いても5億ドルに達するという。

 費用を捻出すると、3人はさっそくコンゴへと赴いた。まるでヴァカンスのように財宝探しの冒険を満喫しながら、偶然に出逢った、墜落機のパイロット(セルジュ・レジアニ)の協力もあって、見事に財宝に辿り着く。だが、そんな矢先、予想だにしなかった悲劇が彼らを襲った……

[感想]

 フランス映画に精通しているわけではないので、こんな表現をするのは自分でも口幅ったく思うが、本篇はフランス映画っぽくて、どこか違う。

 舞台は間違いなくフランスであるし、全篇に漂う詩的なムードは、いわゆる“フランス映画”という単語が想起させるものとさほど隔たりがない、と感じる。モチーフのひとつとして前衛芸術を採り入れているのも、芸術華やかなりしお国柄を匂わせる。

 しかし、この物語の骨格、エピソードの備える余韻は、『アメリカン・グラフィティ』や『ヤング・ゼネレーション』といった、アメリカ産青春映画のほうにより近い、と感じた。メイン3人はいずれも青春真っ盛り、とは言い難いが、夢を追い求めて頓挫し、起死回生の好機を求めて冒険に赴く、という流れは、こうした青春映画の系譜と言っていいのではなかろうか。

 そういう印象を、主人公3人の関係性や、ストーリーの彩りとして挿入される描写がより強調している。目指すものは微妙に異なれど、固い信頼で結ばれた男ふたりに、魅力的な女性が介入する。ほのかな恋愛感情を滲ませながらも、それぞれに気遣う振る舞いは、いっそ年甲斐がない、と言いたくなるほどだ――これがちゃんと絵になり、決してわざとらしく感じないのは、映画、それもフランス映画ならでは、と言えるかも知れないが。金を稼ぐためにカジノを訪れたり、辿り着いたコンゴの船上にて水着姿ではしゃいだり、そして悲劇のあとに訪れた土地で出逢った少年とのやり取りなど、いずれも妙に瑞々しい。

 中盤から終盤へかけての流れにしても、ある意味“冒険もの”ならではの道筋を辿っている、と言えるが、そこで起きる変化、煽る感情は、普通なら成長途上にある人間が味わってこそ深みが出るものだ。それを敢えて、そろそろ渋味を増してきた男ふたりと、若さと成熟のちょうど境界あたりの魅力を放つ女、という3人で描いたことにより、なまじ疑いもなく若者、という人物像では出せない瑞々しさと、苦味を強めているように思う。

 序盤の曲芸飛行に、コンゴでの戯れ。それから終盤、要塞島の際立ったヴィジュアルで繰り広げられるアクションなど、映像的な見所も豊潤だ。物語が目まぐるしく変化し、娯楽性が高い一方で、過剰に説明をせず謎を残していることで、余韻がより深く、豊かなものになっている。

 既に46年も昔の作品ゆえ、表現にも風俗にも古めかしさがつきまとうが、しかしその清新さはいまでも感じられる。娯楽性を留めつつも文芸的、芸術的なセンスの高さも滲む、映画というものの奥行きを味わうことの出来る良作である。まだまだ浅学ゆえ、本篇についてはまったく知識がなかったのだが、海外の名作を集めた“新・午前十時の映画祭”に選ばれるのも納得がいく。

関連作品:

太陽がいっぱい

山猫 イタリア語・完全復元版

アメリカン・グラフィティ

ヤング・ゼネレーション

アフリカの女王

デス・プルーフ in グラインドハウス

昼顔

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