原題:“The Godfather : Part II” / 原作:マリオ・プーゾ / 監督:フランシス・フォード・コッポラ / 脚本:フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ / 製作:フランシス・フォード・コッポラ、グレイ・フレデリクソン、フレッド・ルース / 撮影監督:ゴードン・ウィリス / プロダクション・デザイナー:ディーン・タヴォウラリス / 美術:アンジェロ・グレアム / 舞台装置:ジョージ・R・ネルソン / 衣裳:セオドア・ヴァン・ランクル / メイクアップ:ディック・スミス / 編集:バリー・マルキン、リチャード・マークス、ピーター・ジンナー / キャスティング:ジェーン・ファインバーグ、マイケル・フェントン、ヴィク・ラモス / 音楽:カーマイン・コッポラ、ニーノ・ロータ / 出演:アル・パチーノ、ロバート・デュヴァル、ダイアン・キートン、ロバート・デ・ニーロ、ジョン・カザール、タリア・シャイア、リー・ストラスバーグ、マイケル・V・ガッツォ、ハリー・ディーン・スタントン、ダニー・アイエロ、ジェームズ・カーン、トロイ・ドナヒュー、ジョー・スピネル、G・D・スプラドリン、リチャード・ブライト、ガストーネ・モスキン、フランク・シヴェロ、レオポルド・トリエステ、ドミニク・チアニーズ、エイブ・ヴィゴダ、ジャンニ・ルッソ、マリオ・コトネ、フェイ・スペイン、カーマイン・カリディ、ブルーノ・カービィ / 配給:パラマウント×CIC / 映像ソフト発売元:Paramount Home Entertainment Japan
1974年アメリカ作品 / 上映時間:3時間20分 / 日本語字幕:菊地浩司 / PG12
1975年4月26日日本公開
2011年2月25日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon|Blu-ray Disc 3部作セット:amazon]
第2回午前十時の映画祭(2011/02/05〜2012/01/20開催)《Series2 青の50本》上映作品
TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2012/02/16)
[粗筋]
父のヴィトー・コルレオーネからゴッドファーザーとしての地位を継承したマイケル(アル・パチーノ)は本拠地をニューヨークから、ファミリーの資金源であるラスヴェガスのカジノにほど近いネヴァダ州に移していた。
広壮な屋敷で、息子アンソニーの聖体拝領式を催したマイケルだったが、そこで事件が起きる。夜更けに彼と妻ケイ(ダイアン・キートン)の寝室に向かって銃弾が撃ち込まれたのだ。マイケルは犯人を生け捕りにするよう命じたが、間もなくふたつの遺体が屋敷の窓際で発見される。
マイケルはこうなることを読んでいた――マイケルがユダヤ系ギャングのロス(リー・ストラスバーグ)と取引を始めており、やはりユダヤ系のギャングである仇への復讐を認めないことに憤ったフランク・ペンタンジェリ(マイケル・V・ガッツォ)が糸を引いている可能性が高い、と察していたのである。義兄弟のトム・ハーゲン(ロバート・デュヴァル)に家族の安全を託すと、マイケルは各地へ飛び、事態の収束を図る――
そもそもマイケルの父・ヴィトーは、シシリアのコルレオーネ島で暮らしていたが、現地を牛耳っていたドンに彼の父親が反抗したために殺害、復讐を試みた兄、母までが屠られ、単身ニューヨークに逃げこんだのである。成長したヴィトー(ロバート・デ・ニーロ)は当初、様々な職を転々としてどうにか食いつないでいたが、のちに腹心となる隣人クレメンザ(ブルーノ・カービィ)と知り合って以来盗品売買に手を染めるようになった。
やがて、地元を縄張りとするドンのファヌッチ(ガストーネ・モスキン)に目をつけられ、見かじめ料を払うように命じられるが、ヴィトーは提示された額をあえて値切り、度胸の良さを見せつけるふりをして、ファヌッチの寝首を掻く。そして、近隣の人々の揉め事を解決するなどして信頼を得ていくうちに、新たなる“ドン”としての地位を確立していったのだった……
[感想]
高く評価されたギャング映画の、2年後に発表された続篇である。ハリウッドに限らず、“続篇は1作目を超えられない”というジンクスがほとんど定説のように唱えられているなかにあって、本篇は前作に続いてアカデミー賞で作品賞、監督賞を含む6部門に輝いている。ほとんど奇跡と呼んでいいような傑作である。
3時間20分、という映画を観るのが習慣になっている私でさえ尻込みするような長尺だが、観ているあいだ時間の経過をまったくと言っていいほど意識させない。誰が裏切り、マイケルがどのような策を以て対抗しようとしているのか、を明示せずに進める一方、そこにマイケルの父・ヴィトーの若き日の足跡を重ねていくことで、両者の関わりを観るものに推測させ、牽引力を増している。
しかし、現在と過去の物語は、必ずしも密接にリンクし合っていないし、また双方それぞれの出来事を辿っても、謎解きの興趣や驚きの演出といった、派手な衝撃は齎さない。だが、終始帯びる緊迫感、不穏な気配の表現は秀逸で、そこから滲み出る情感が非常に深い。正直なところ、前作を観たのが10ヶ月も前のことで、細かな人間関係はすっかり忘れていたのだが、仮に観ていなかったとしても問題はないだろう。決して説明は多くないのに、本篇だけでも人間同士のしがらみの厄介さはきちんと窺えるし、結果として起きる事件、マイケルが中心となって仕掛ける工作の数々が、その壮絶さを印象づける。
そして、一見散漫と、しかし緩く関わりながら連ねていった出来事が絞り込まれていくクライマックスは、既に傑作であった前作と対比してみても、単独で向き合っても、ずっしりと重い。既にドンとして“ファミリー”を率いねばならないマイケルと、彼に繋げていくこととなるその組織を、“家族”を守るために築きあげていったヴィトーとの、同じ線上にありながら対照的な結末をワンシーンで描き出す手管が圧巻だ。
前作以上に堂々たるドンぶりを体現し、貫禄を備えながらも表情の端々に苦しみを滲ませるアル・パチーノも秀逸だが、やがて一大ファミリーを築く男の才覚を見事に演じきったロバート・デ・ニーロには特に唸らされる。一歩間違えば『タクシードライバー』で演じたベトナム戦争帰りの若者に似た切れ味を閃かせた、狂気と知性の瀬戸際を行く人物像の表現もさることながら、前作で晩年のヴィトーを演じたマーロン・ブランドの特徴的な口調を見事にトレースして、顔立ちは違うのに間違いなく若き日のドン・コルレオーネだ、と感じさせる技にはもはや脱帽するしかない。
そもそも前作で充分に完結していたものを、好評を得て製作されたと思われる作品だが、前作を観た上でも、仮に観ていなくとも惹きこまれる物語を組み立て、前作の構成を踏まえながら異なる深みへと掘り下げた作りは意欲的にして完成度も高い。これほど文句のつけようのない“続篇”は、恐らく今後もそう易々とは登場しないだろう。
関連作品:
『ゴッドファーザー』
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