原題:“Any Which Way You Can” / 監督:バディ・ヴァン・ホーン / キャラクター創造:ジェレミー・ジョー・クロンズバーグ / 脚本:スタンフォード・シャーマン / 製作:フリッツ・メインズ / 製作総指揮:ロバート・デイリー / 撮影監督:デヴィッド・ワース / プロダクション・デザイナー:ウィリアム・J・クレバー / 編集:フェリス・ウェブスター、ロン・スパング / 音楽:スナッフ・ギャレット、スティーヴ・ドーフ / 出演:クリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック、ジェフリー・ルイス、ウィリアム・スミス、ハリー・ガーディノ、ルース・ゴードン、マイケル・キャヴァノー、ビル・マッキーニー、ジュリー・ブラウン、バリー・コービン、ジョン・クエイド、アル・ラッシオ、ダン・ヴァディス、ケン・ラーナー、ジョージ・マードック、ジャック・マードック、アン・ネルソン、アン・ラムジー、ローガン・ラムジー、マイケル・タルボット、アート・ラフルー、ロイ・ジェンソン、ウィリアム・オコンネル / 配給:Warner Bros.
1980年アメリカ作品 / 上映時間:1時間55分 / 日本語字幕:高瀬鎮夫
1981年1月31日日本公開
2009年9月9日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]
DVD Videoにて初見(2012/02/13)
[粗筋]
トラック運転やスクラップの回収・販売を生業としながら、ストリート・ファイトでときどき大きく稼いでいたファイロ・ベドー(クリント・イーストウッド)は、だが格闘の世界からはそろそろ足を洗おうと考えはじめていた。まだ腕に自信はあるが、痛みを愉しみ始めていたのである。
しかし、そんな彼に裏社会のビックマン(ハリー・ガーディノ)が目をつけた。彼らが抱えるファイターのジャック・ウィルソン(ウィリアム・スミス)は強すぎるあまり、ひとりを殺し、ひとりを麻痺の身体にしており、もはや戦う相手がいない。そこで、西部で評判のベドーを対戦相手にセッティングしようと目論んだのだ。
多額のファイトマネーに、いったんは話を受けたベドーだったが、仕事仲間のオーヴィル(ジェフリー・ルイス)、更にいちどは彼を袖にしたものの最近あらためて交際を始めた恋人リー(ソンドラ・ロック)に諭され、金を返して話を断る。しかし、既に盛大なイベントとしてまとめつつあったビックマンは、それを許さなかった……
[感想]
女を追うクリント・イーストウッドにオランウータンの相棒、そして何故か彼らをつけ狙うバイカーたち……といった、イーストウッドとしては異色のモチーフで描いた『ダーティファイター』の続篇である。
前作にはそれこそ本邦の“寅さん”シリーズを彷彿とさせるビターな人情味があったが、しかしこの続篇はビターさが失われてしまっている。あんな経緯のあった歌手のリーとあっさりくっついてしまい、ラストの殴り合いで対峙するウィルソンはその壮絶な戦績とは裏腹にイイ奴で友情を育んでしまうし、妙に綺麗すぎるまとまり方も物足りない。前作自体、決して評価は高くないが、更に評価を下げ、これ以降続篇が作られなかったのもやむなし、という気がする。
ただ、前作の緩さも含めて楽しんでいた人には、本篇もなかなかに味わいがあるはずだ。前作で終始ベドーを追い回し酷い目に遭わされていた毒グモ団は性懲りもなくベドーをつけ狙い、引き続き酷い目に遭う――かと思えば意外な活躍をするし、いい味を出していたオーヴィルのママは思わぬところで春を迎えたりする。
全般に、前作よりも素直にコメディと、快い展開を志向した作りは、はっきり言ってしまえばかなり温く、あとに何も残らないのだが、その代わり観ているあいだはダラダラしつつも悪い気分にはならない。苦さは抜けたが、オランウータンのクライドの“活躍”や随所に挿入されるカントリー・ソングなど、前作の魅力であった部分もある程度は保持している。
また、すべてがうまくいっているわけではないが、ユーモアについてもきちんと構成して、効果を引き出そうと試みている構成にも好感が持てる。クライドや毒グモ団のみならず、終盤に至ってようやく登場するサブキャラクターもきちんと活かしていて、脚本の仕上がりは意外と手堅いのだ。
これに先行する『ブロンコ・ビリー』の感想でも指摘したが、この時期のイーストウッドには方向転換の意図、或いは迷いが強かったように思う。私としては描写に深みを増し、テーマも多彩となった昨今の彼の作品を愛するが、迷いがあったからこそ生まれた、この微温的な趣向も嫌いではない――という感想をひとに強制するつもりもないので、傑作とは断じて呼ばないが。
関連作品:
『ブロンコ・ビリー』
『アウトロー』
『ガントレット』
『ダーティハリー』
『ダーティハリー3』
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