これは、本当の“呪いのビデオ”。[レンタルDVD鑑賞日記その843]

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 4月23日に、2023年9月リリースの『呪いの黙示録 第九章』を鑑賞。深夜の山道を迂回して走っていた自動車から撮られた奇怪な映像《迂回路》、心霊ドキュメンタリーを一緒に鑑賞していた3人の女性が遭遇した怪異《撮影者不明》、かつて在籍していたスタッフが残していった素材をもとに調査を施す《偉大なる選定》前後篇など、全5篇を収録。
 こういう作品は、怪異を捉えた映像こそがすべて、と思っている人には決して満足のいく本数が入ってないのは間違いない。ただ、映像の背景を掘り下げていって、その恐怖を描くことこそ醍醐味、と思っている私にとっては、理想的と言っていいシリーズです。
 そして今回もまた非常に面白かった……というのはやや気が引ける内容ですが、しかしそれも含めて、私にとって理想的な題材と描き方、と言っていい。冒頭の《迂回路》はシチュエーションの怖さが際立ち、肝心の怪異は解りづらいものですが、直後の長篇《偉大なる選定 前編》できっかけとなる怪奇映像と共通項があるので導入として機能している。長篇では、漠然とした手懸かりから出所を辿らねばならない厄介さで惹きつけつつも、次第に核心へと迫っていく。ここで、まるで怪奇ドキュメンタリーのマッチポンプめいた単発エピソードを挟んで、突入していく長篇の後半部分がとにかく圧巻。
 あくまでもすべてフェイクだ、と解釈して、怪奇映像のみ評価すれば、大いに手抜きだ、と感じるでしょう。しかし、それ自体は決して突出したものではない映像に、重い意味を持たせた作りは、たとえフェイクだとしても私は高く評価する。
 とはいえ、真に受けてしまうと、なかなか強烈なカウンターを食らいます。最後の映像は、スタッフが収録を躊躇うのもある意味当然の、本物の“呪いの動画”と言える。それでいて、愛好家が望むようなものではなく、なおかつ、無責任にこういうものを「好き-」と言ってしまう人ならば観ておかねばならない1篇でもある。
『ほんとにあった!呪いのビデオ』にも携わり、意欲的な作品を繰り返しリリースしてきた寺内康太郎演出の、最高傑作の1つと言っていいと思う、個人的には……と言いつつ、あまりにも心を抉るので、安易には薦めがたいのですが。

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