わりと出来のいい方では?[レンタルDVD鑑賞日記その907]

封印映像72 この人をさがしています(Amazon.co.jp商品ページにリンク)

 9月19日に、2024年7月リリースの『封印映像72 この人をさがしています』を鑑賞。母の介護認定のため、認知症の度合いを証明するべく行った撮影で異様なものが記録されてしまう《母の家の猫》、心霊系YouTuberが情報を得て取材に出かけ体験した恐怖《みゆき販売機》、素人モノを装ったAV撮影にリアリティを加えるため行ったナンパが思わぬ出来事に繋がっていく《スカウト》、ドライブに向かった山で車が動かなくなった女性の異様な体験を記録した表題作の全4篇を収録。
 いつになったら当初の演出は帰ってくるのでしょう。それともあれは普通にバトンタッチの儀式だったのだろうか。
 それはさておき、このシリーズはそもそもの演出がいたときから変わらず、着想はいいけど処理が下手でリアリティを損なっている、というケースが多い。ただ、そういう意味では今回は比較的、楽しめる出来映え。
 細かく引っかかりはするけれど、エピソードとして惹きつけられるものがほとんどです。
 医師の診察を受けると普通にやり取り出来るのに、日常生活で不可解な行動が目立つ母親の様子を記録するなかで、母が言う、家にいる猫、という要素が事態を転がし、最後に衝撃的な展開を迎える。しかしそのうえで、取材から判明した背景が、別のところにあるおぞましさを掘り起こしてしまうのがいい。
 また、《スカウト》というエピソードの、素人ナンパモノ風のAV撮影にリアリティを与えるため、成功させる必要のないナンパを実際に行った結果、AV撮影を了承する女性を捕まえてしまう、という、色んな意味でちょっとあり得そうな導入部分は目の付け所がいい。そのあとの展開は色々とツッコみどころが多く、もうちょっと工夫と配慮が必要かな、とは感じましたが、エピソードとしてはそれなりに見応えがある。とりあえず、色々と厳しくなってる時期だったはずなんだし、まず契約の話をすべきだと思う。本当に素人モノとして撮影始める前に。
 その点は表題作も同様……こっちは、怪奇現象以外の部分で投稿者が見せる言動に違和感があったり、見ていて落ち着かない気分にさせられるのが少々ノイズになってますが、異様な出来事の数々はなかなかに怖い。しかも、まだ終わっていない、という印象を受けるのもおぞましい。ホラーとしては優秀です。
 ただ、《みゆき販売機》だけは引っかかるところの方が多くて、苦笑いせざるを得ません。まず、情報にある“必ず呪われる”を疑うべきでないのか。自販機だって電力は必要だし商品が回転しなきゃ撤去されるのに、客を分け隔てなく呪って、どうやって商売するのだ。あれだけの混乱の中でも、自販機の素性を調べることは出来たらしいし、結果として投稿者の話がまず胡散臭すぎて入ってきません。怪異事態は突き抜けてて面白かったけど、この怪異を際立たせたいならむしろ、“呪われた自販機”とか、その情報を寄せてくれた云々のくだりをなくして、別の心霊スポットからの帰りに変な自販機を見つけた、ぐらいでよかったと思う。上乗せしすぎて、脆すぎた土台がとっくに崩れてるのにはしゃいでる、みたいな動画になってます。
 と、ひとつは全体として微妙な出来だったし、他のエピソードにしても細かな不自然さとか、何本作っても改善しないスタッフの芝居臭さとか、問題点は色々と残されてますが、このシリーズとしては上出来の部類。せめてこの水準は維持してほしい。

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