この彼氏はもーちょっと痛い目に遭わせてもいいと思うよ。[レンタルDVD鑑賞日記その909]

白石晃士の決して送ってこないで下さい1(Amazon.co.jp商品ページにリンク)

 9月22日に、2024年5月リリースの『白石晃士の決して送ってこないで下さい1』を鑑賞。ケイスケとユキというカップルが、心霊スポットと言われるケーブルカーの廃墟を訪ねる。最初こそはしゃいでいたケイスケだが、次第に増していく異様な空気に飲まれていく……
 私の記憶が確かなら、だいぶ昔にリリースされた『パラノーマル・フェノミナン』というシリーズでも似たようなアプローチをしています。そのときは第2巻を村上賢司監督が受け持つ形で、それぞれ自分の許に寄せられた怪奇映像を紹介する、という構成になっていた。
 今回の作品はもともと、映画館で公開されたものを、2分割にしてソフト化したものらしい。ならば第2巻もまとめて鑑賞して、映画感想としてまとめるべきか、とも思ったのですが、それぞれ未公開映像を加えているとのことで、劇場版と体裁が異なっているなら、話がややこしくなる。というわけで、普通にレンタルDVD鑑賞日記で記すことにしました。
『パラノーマル~』のときはどうしていたのか、まではさすがに記憶がないんですが、本物かフェイクか曖昧にするスタイルではなく、エンディングにしっかりと配役を明記した、フェイク・ドキュメンタリーの形にしている。だから、投稿映像が一定のリアリティを担保しつつも、ちゃんとホラードラマとして鑑賞に耐える作りになってます。
 本篇は、きっかけとなる廃墟探訪、その後の投稿者、そして劇中に登場する映像の全容、と3つの動画が含まれる構造となっていて、そもそもの廃墟探訪だけで30分近くあるんですが、これが視聴者をしっかり惹き込むように組み立てられてる。
 巧妙なのは、登場人物のキャラクターです。“投稿者”とされるケイスケがだいぶろくでもない男で、明らかに廃墟探訪を望んでいなかったユキを振り回し、思惑通りに行動しないと苛立ち始める。ユキがどんどん情緒不安定になっていくので、異様な緊張感が続く。
 でも、ちゃんと佳境には怪異が起き、派手な展開になっていく。如何せん、白石監督はこういう作品の加工をあえてチープな手触りにするのを好んでいるようで、やっぱり今回もだいぶチープな感じなのですが、現象の不可解さ、しかしそこに1本通された芯のようなものが恐怖を増幅する。そして、後日談と、双方に関わるもうひとつの映像とも繋がって、不気味な余韻を残して幕を下ろす。
 すべての映像が揃っても、要素が繋がっているものもあれば、明らかに探り出せない部分もあるのですが、それがまた想像を刺激してくるのもいい。フェイク・ドキュメンタリーであることを隠さないからこそ出来る、白石晃士監督らしさの横溢する作品でした。同時にリリースされている2巻も早めに借りよう。

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