もう家に帰った。

 疲れた。

 ――という一文を予め準備しておきましたが、本当に疲れた。
 何がしんどかったかって、島根県立美術館を出たあと、高速バスのバス停に辿り着くまでがいちばんしんどかった。
 島根県立美術館で和牛バーガーを購入し損ねたので、移動中は代わりに食事出来るものか、場所を探すものの、いくら見回してもピンとこない。美術館周辺から、荷物を預けた宿まではもはやコンビニくらいしか開いていない。宿からバス停に移動するあいだもひたすら周囲に目を配ったのですが、飲み屋やちょっとお高めで時間のかかりそうなお店ばかり、前々から気になっていたもんじゃ屋にちょっと惹かれたものの、もんじゃはもんじゃで時間が読めないし、何より、あの匂いをまとわりつかせて、12時間以上バスに乗りっぱなしなのは、他の乗客に申し訳ない。
 松江駅が近づくと、開いている店も増えてきますが、ほとんど飲み屋です。五郎さんよろしく、食事だけして鮮やかに離脱する、というやり方もあるでしょうけれど、それにしたって、提供される時間が解らないのではだいぶリスクが伴います。
 しかも、荷物がだいぶ負担です。宿に預けていたのは着替えなどが入っているだけで軽かったはずが、酒林堂八雲で購入した日本酒とかを詰めたら、想像より重く感じる。これをぶら下げたまま、ちらほらと降る雨を避けるために傘を差していると実にしんどい。
 救いだったのは、島根県立美術館で、企画展の図録を購入しなかったことです。なにせ展示を図手眺める余裕はなく、だいぶ、だいぶ惹かれたのですが、なにせ量が膨大で、図録も一般的な展示会の図録の2倍から3倍くらいの厚みがある。これをハードカバーに仕立てていて、税込みで3,300円ですから、ちょっとお高めとは言い条、内容的にはむしろ安すぎるくらいです。とは言え、あまりの重みに、別の意味で後悔するかも、という予感がして断念したのですが、そこだけは正解でした。どーしても諦めがつかなければ、公式オンラインショップで買うか、スーツケース引きずって行く。
 そのまんまバス停まで辿り着いてしまい、けっきょく最後は、バス停の近くにあるローソンでからあげクンとハッシュポテトを購入、バス停近くの道端で食べて夕食代わりにしました。イートインがあればまだ良かったのだが。
 しかしこの判断も正解ではあった。これまで2回、深夜高速バスを利用した経験から、たとえ車内での飲食がある程度認められていても、休憩するサービスエリアで軽食を買うのは不可能、と悟っていたのですが、東京行きの便は中国地方行きの便よりも状況は厳しい。最初のサービスエリアに到着した時間で既に、自販機しか動いてない。軽食を販売している台もなく、もしサービスエリアを当てこんで夕食を抜いていたら、空腹で音を上げていたかも。
 睡眠自体はそこそこ確保出来ました。そもそもお酒が入っているところへ、疲れ切っていたので、早い時間にあれこれ捨てて目を閉じたところ、けっこう眠れました。
 ただまあ、結局今回も、休憩のたんびに目は覚めていた。ただしそれは、ブレーキや照明の点灯が理由ではなく、最前列の席を取ったからかも知れません。
 だって、休憩するたびに、ドアが開きっぱなしになるので、そこから吹き込んでくる外気が冷たくて目覚めてしまう。服を足そうにも、重ね着をするものはトランクに収納してもらっている。幸い、車内に持ち込んだ鞄に、丸められる薄手のダウンを入れてアリ、これを着て若干マシになりましたが、最後までこの寒さには悩まされました。それもこれも、予報より天気が悪く冷え込んだせいだ。
 自宅最寄りの駅に着くと、コンビニでカップのお茶漬けとサラダを買って朝食にし、急ぎ入浴と洗顔を済ませて、ようやく人心地がつきました。
 結果として、強行軍ながら楽しかった――けれど、正直に言って、あんまりやりたくはない。次回以降はまた、松江怪談談義と酒林堂八雲を近い日程にして欲しいです……。

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