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『クライン氏の肖像 三番館全集第4巻』 鮎川哲也 判型:文庫判 レーベル:光文社文庫 版元:光文社 発行:2023年11月20日 isbn:9784334101220 価格:1210円 商品ページ:[amazon/楽天/BOOK☆WALKER(電子書籍)] 2024年7月7日読了 |
著者がキャリア終盤に多く発表した、会員制バー《三番館》のバーテンが鮮やかに謎を解決するシリーズの光文社文庫版全集、第4巻にして完結篇。2日間の尾行という簡単な仕事が探偵を事件に巻き込む《人形の館》、幻の作曲家をモチーフにした絵を巡るトラブルを描いた表題作など9篇に加え、シリーズ初の長篇として執筆されていたが完成に至らなかった《白樺荘事件》をボーナストラックとして収録。 著者のキャリアのなかでも最晩年、しかも当時は幻となっていた作家や新人の発掘に情熱を傾け始めていたからか、作品数はどんどん減っていたので、発表の間隔は広がっている。内容的にも、定着した私立探偵の調査からバーテンダーの推理、という定型のほうが少なく、事件の関係者となった人物が会員を介してバーテンの推理を頼ったり、或いは会員自身が事件に遭遇するパターンのほうが多い。探偵の自堕落ブリと、自覚的な武骨さも一種の魅力だったが、捜索を発表する数が減っていたこの頃、探偵が出張るにはあまり相応しくない、ミステリ作家の内幕やクラシック音楽のマニアックな知識を活かした、著者らしいアイディアを用いる舞台が他になかった、というのも関係しているかも知れない。本格ミステリとしてはいずれも練達の技が楽しめるが、個人的にはちょっと物足りない。 |
鮎川哲也『クライン氏の肖像 三番館全集第4巻』

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