『イコライザー2』

『イコライザー2』予告映像より引用。
『イコライザー2』予告映像より引用。

原題:“The Equalizer 2” / 原作:マイケル・スローン、リチャード・リンドハイム『ザ・シークレット・ハンター』 / 監督:アントワーン・フークア / 脚本:リチャード・ウェンク / 製作: トッド・ブラック、ジェイソン・ブルメンタル、デンゼル・ワシントン、アントワーン・フークア、アレックス・シスキン、スティーヴ・ティッシュ、メイス・ニューフェルド、トニー・エルドリッジ、マイケル・スローン / 製作総指揮:モリー・アレン、デヴィッド・ブルームフィールド / 撮影監督:オリヴァー・ウッド / プロダクション・デザイナー:ナオミ・ショーハン / 編集:コンラッド・バフ / 衣装:ジェニー・ケーリング / キャスティング:リンゼイ・グラハム、リサ・ロベル、アンジェラ・パール、メアリー・ヴェルニュー / 音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ / 出演:デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル、アシュトン・サンダーズ、オーソン・ビーン、メリッサ・レオ、ビル・プルマン、サキナ・ジャフリー、ジョナサン・スカーフ、カジー・タウギナス、ギャレット・A・ゴールデン、アダム・カースト、リス・オリヴィア・コート、タマラ・ヒッキー / 配給&映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertainment
2024年日本作品 / 上映時間:2時間1分 / 日本語字幕:? / PG12
2018年3月16日日本公開
2019年8月7日映像ソフト日本最新盤発売 [Blu-ray Disc4K ULTRA HD + Blu-rayセット]
公式サイト : https://www.equalizer.jp/ ※2025年6月現在閲覧不能
ムービープラスにて初見(2025/5/15)


[粗筋]
 かつて国防情報局=DIAの凄腕特殊工作員だったロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は引退後、職や住居を変えつつ、普段は平穏に生活している。だが、身近の善良な人々を苦しめる悪党がいれば、密かに探し出し制裁を加えている。
 ロバートは最近、近所に暮らすマイルズ・ウィテカー(アシュトン・サンダーズ)という少年を気にかけていた。貧しい彼は、ギャングの連中と付き合いがあり、危険な犯罪行為に巻き込まれる一歩手前にいる。ロバートは壁の落書きを塗りつぶし、代わりにマイルズの得意とする絵を描かせて報酬を与え、真っ当に生きていくよう指導する。ギャング仲間がマイルズを抗争の鉄砲玉に使おうとしたときには、アジトに踏み込んでギャングたちを制圧すると、彼らに二度と関わらないよう、マイルズを厳しく諭す。
 一方、ロバートの古巣DIAでは大きな問題が起きていた。ベルギーのブリュッセルで、DIAの協力者として働いていた男性が、妻と無理心中を図って死亡したのだ。デイヴ・ヨーク(ペドロ・パスカル)とともに現地に捜査に赴いたスーザン・プラマー(メリッサ・バレラ)はすぐに無理心中を装って始末された可能性を嗅ぎ取る。だがその直後、スーザンは宿泊するホテルで、何者かによって殺害されてしまった。
 現役を退くとき、ロバートは死を偽装しており、かつてコンビを組んでいたデイヴにも消息を知らせていなかったが、ロバートは敢えてデイヴの前に姿を現し、スーザンを殺害した者の手懸かりを求める。だが、その直後、ロバートの客を装って、刺客が現れた――


[感想]
 往年のテレビドラマ『ザ・シークレット・ハンター』を、デンゼル・ワシントン主演にてリメイクした映画版の第2作である。
 引退はしたが、未だに高い能力を誇る元特殊工作員が、悪事に苦しめられる人々を救済する、という基本構造はそこまで特異なものではないが、前作が強く支持されたのは、デンゼル・ワシントンの演技が裏打ちするキャラクターの説得力と、非道な悪党たちを鮮やかに成敗する爽快感によるところが大きい、と思われる。
 恐らく、続篇を製作するにあたって、制作陣が重視したのは、この根っこの魅力だったのではなかろうか。だからこそ、本篇でもこのロバートの卓越した技能が力を発揮する場面が複数用意されている。前作に接していない観客であっても、ロバートの実力がすぐに理解出来るよう、序盤に見せ場を設けておいて、あとは随所でアクションを挿入しつつ、クライマックスに向けてドラマを積み上げていく、という組み立ても申し分ない。
 だが、こうした続篇映画で厄介なのは、大抵の場合、1作目で膨れ上がった期待に応えることが極めて難しい、という点だ。
 たとえそのつもりがなかったとしても、多くの観客は1作目よりも派手で、高い完成度を期待してしまう。だから、シンプルに1作目の魅力を押さえただけでは、「物足りない」という感想を導いてしまう傾向にある。基本的に前作のスタッフが再結集した本篇でも、その轍は免れなかった。
 推測するに、そういう厄介さを承知していたからこそ、本篇は前作で提示した要素から更に踏み込んだ事件、ドラマを設定している。前作でも登場したスーザンの死に、ギャングに取り込まれかかった少年マイルズとの友情、そしてクライマックスに繋がっていく背景などがそうだ。
 しかし、工夫はしっかりと凝らされているが、少々散らかった感は否めない。前作は劇中でロバートが複数の仕事を行いつつも、背後で組織が動き、事業に損害をもたらしたロバートを凶悪な手段で追跡していたので、全体に芯が通っていた。本篇もまた、DIAの協力者とスーザンが殺害された謎が軸となっているものの、もう一方で、ロバートが暮らす街で、貧困に喘ぎギャングに取り込まれかかっているマイルズのエピソードがある。最終的にこれらの出来事はクライマックスで絡みあっていくが、やや強引に束ねられた感がある。前作も本篇も、ロバートというキャラクター性を中心に組み立てられているのは同じなのだが、ちょっとした印象の違いで見劣りを起こしてしまっている。それほど大きな違いではないし、ヴァリエーションの範囲内なのだが、なまじ好評を博した作品だったので、より落差が目立つのだろう。
 ただ、監督はオスカー候補作も娯楽大作も手懸ける職人型で、主演は自ら製作にも乗り出すオスカー俳優、という組み合わせである。前作の雰囲気、観客を魅せた要素をきっちり踏襲する、という点で不足はない。
 ロバートの温厚な振る舞いと、そんな彼に親しく接する人々の善良さと、対比するように描かれる街や組織にはびこる腐敗。身辺の人々が遭遇する苦難と暴力を、瞬く間に制圧してしまう爽快感。ロバートの手段は合法ではないが、現実には許されないからこそ鮮やかにやり遂げるのが痛快なのだ。正直に言えば、この辺でももう少し、前作のような表現的な工夫があれば充実度は増した気はするが、その点でも抜かりなかった前作以上のインパクトはやはり齎しづらい。しかしその分、ロバートは実にロバートらしい奮闘を見せるので、2作目ながら確かな安定感がある。
 恐らく本篇が求めたのは、前作を凌駕するような描写や衝撃ではなく、その世界観を踏襲した新しいドラマなのだろう。更なる上を望む声には応えられていないが、ああいう世界観が好き、とか、ロバートが溜まりに溜まった鬱屈を瞬時に、そして残酷なほど冷徹に吹き飛ばすさまが観たい、という声には充分に応えている。
 事態の決着と共に、ロバートの生活は序盤の平穏さを取り戻しているから、物語としてここで決着も出来るが、更なる続篇にも繋げやすい。実際、私が本篇を鑑賞した時点でとっくに、第3作『イコライザー THE FINAL』が、CSでのテレビ放送が繰り返し行われているし、“THE FINAL”という邦題がついてしまったのに、別作品のキャンペーンにてデンゼル・ワシントンが第4作、第5作の計画を明かしている。本篇をもっと壮大に、もっと派手に、強烈なインパクトを与える作品にしようとしていたなら、恐らくここまで作り手が積極的に続篇を手懸けるつもりにはならなかったのではないか。批評的には前作に劣っていたとしても、本篇は恐らく、製作者の意図通りに撮られ、満足のいく結果を出しているし、本篇を喜んでいる人もたくさんいる。シリーズが幾度となくBS・CSで放送されているのも、その成功の証だろう。私もまた、第4作を大スクリーンで鑑賞出来ることを心待ちにしている。


関連作品:
イコライザー(2014)
トレーニング・デイ』/『ライトニング・イン・ア・ボトル ~ラジオシティ・ミュージック・ホール 奇蹟の一夜~』/『キング・アーサー(2004)』/『クロッシング(2009)』/『THE GUILTY/ギルティ(2021)』/『メカニック』/『エクスペンダブルズ2
2ガンズ』/『キングスマン:ゴールデン・サークル』/『マネー・ショート 華麗なる大逆転』/『THE JUON―呪怨―』/『フロスト×ニクソン

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