原題:“Guardians of the Galaxy Vol.2” / 監督&脚本:ジェームズ・ガン / 製作:ケヴィン・ファイギ / 製作総指揮:ヴィクトリア・アロンソ、ルイス・デスポジート、ニコラス・コルダ、スタン・リー、ジョナサン・シュワルツ / 撮影監督:ヘンリー・ブラハム / プロダクション・デザイナー:スコット・チャンブリス / 編集:フレッド・ラスキン、クレイグ・ウッド / 衣装:ジュディアンナ・マコフスキー / キャスティング:サラ・ハリー・フィン / 音楽:タイラー・ベイツ / 出演:クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ、カレン・ギラン、ポム・クレメンティーフ、シルヴェスター・スタローン、カート・ラッセル、エリザベス・デビッキ、クリス・サリヴァン、ショーン・ガン、トミー・フラナガン、ローラ・ハディック / 声の出演:ブラッドリー・クーパー、ヴィン・ディーゼル / マーヴェル・スタジオ製作 / 配給&映像ソフト発売元:Walt Disney Japan
2017年アメリカ作品 / 上映時間:2時間16分 / 日本語字幕:林完治
2017年11月3日日本公開
2019年9月4日映像ソフト日本最新盤発売 [MOVIE-NEX:amazon|Blu-ray MCU ART COLLECTION:amazon]
公式サイト : http://marvel-japan.jp/GOG-Remix/
[粗筋]
先の冒険以来、共に旅を続けていたピーター・クイル(クリス・プラット)たち“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”は、惑星ソヴリンの電池を狙って囚われたネビュラ(カレン・ギラン)を奪い、官憲へと突き出すべく、電池を襲撃する宇宙生物の退治を請け負う。
無事に任務は果たしたが、よりによってロケット(ブラッドリー・クーパー)がこっそりと電池をくすねていたために、今度は自分たちがソヴリンの軍勢に襲われてしまう。絶体絶命のところで、忽然と現れた奇妙な宇宙船が、ソヴリンの軍勢を瞬く間に一掃、クイルたちは辛くも難を免れる。
宇宙船には、宇宙服すらまとわず、平然と宇宙空間に佇む男が乗っていた。エゴ(カート・ラッセル)と名乗った彼は、クイルに向かってこう告げた。
「私は、お前の父だ」
クイルに、彼が受け突くべき特別なものがある、と言い、エゴは自らが暮らす辺境の星へと一同を招待する。クイルは悩むが、ガモーラの後押しもあって、この提案を受け入れた。戦闘中にガーディアンズの船は大破していたため、修理を続けるロケットとリトル・グルート(ヴィン・ディーゼル)、そして姉であったガモーラに対する敵意を剥き出しにするネビュラを不時着した星に残し、クイルたちはエゴの船に乗る。
一方、ガーディアンズを逃したソヴリンは、かつてクイルを地球から攫い、自らの船の一員として育てたヨンドゥ(マイケル・ルーカー)に、クイルたちの捜索を依頼する。知らなかったとはいえ、子供を攫い取引に使っていたことがバレて、荒くれ者どもの組織“ラヴェジャーズ”を追放されていたヨンドゥはこの依頼を引き受けた。
ほどなくガーディアンズの船を突き止めたヨンドゥは、ロケットを追い込むが、ここに及んで部下の一部がヨンドゥに反発し、内輪もめが起きる。その隙に乗じて、場を制圧したのは、拘束を解いたネビュラだった――
[感想]
前作もそうだったが、今度も相変わらずこの作品は“マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース”っぽさもありながら、妙にそれらしくない。
先の冒険を経て“英雄”となったスター・ロードとその仲間たちだが、本篇冒頭での言動にヒーローっぽさはない。ロケットは目的もなく、悪戯心だけで盗みを働いてチームを危機に陥れるし、万事価値観のズレたドラックスの言動は悪意こそないがしばしば話を混乱させる。ガモーラに至っては、ピーターとつかず離れずのやりとりを繰り返し、ネビュラとは周りを巻き込む壮絶な姉妹げんかを展開、その生き様はピーターがしばしばたとえに持ち出す往年の青春ドラマのハード版みたいな趣だ。
いちおうは“英雄”扱いされているからこその誇りが彼らにはあるし、物語においてもその設定が彼らへの態度となって影響する場面もある。終盤ではにわかにヒーロー映画の本懐を果たすが、そこまではおよそ義務や大義といった、ヒーロー映画にはあるべき命題がほとんど見えてこない有様だ。特にロケットの言動と、課程で描かれる追跡者ヨンドゥの部下たちの、道理や仁義を欠いた叛乱のせいもあって、舞台は宇宙だが“怪賊”のドラマのような印象が強い。
しかしこれが滅法面白いのも事実だ。突然始まる、障害物だらけの追跡劇に、にわかに登場する“父親”。追っ手にヨンドゥが加わることで、前作でも描かれた過去の因縁が絡み、予測不能になる。とりわけ、MCUの最重要ヴィラン・サノスと関係の深いネビュラは傍若無人、姉であるガモーラへの恨みも強いために、選択する行動がいちいち過激だ。彼女の存在が、間違いなく物語を厄介なものにし、更に面白くしている。
本篇の魅力について語るなら、随所にちりばめられた80年代カルチャーの引用は外せまい。前述した、ピーターが自身とガモーラの関係を例えるくだりもそうだが、幼少時、不在の父親が実は『ナイトライダー』のデヴィッド・ハッセルホフだと偽っていた、というエピソードを筆頭に、SFには似つかわしくないフレーズ、作品が不意に現れてくるのが可笑しい。しかもこの事実が、しばしば内輪揉めを起こすガーディアンズたちが、ピーターの郷里である地球の娯楽を一緒になって享受していた、という点も仄めかしていて、微笑ましくもあるのだ。
そして、随所で鳴り響く、往年の名曲が、作品のオフビートな魅力に拍車をかけている。オープニングの演出からして、その代表的なものだろう。宇宙生物と激しい戦いを繰り広げる仲間たちをよそに、Electric Light Orchestraの“Mr. Blue Sky”でノリノリに踊りまくるリトル・グルート。カメラのフレームから外れた場所でヒドい目に遭っていると思しい仲間たちが不意にカメラの前に戻ってきて、それぞれの個性に似合ったグルートとのやり取りをして、またフレームから外れる。ガーディアンズの面々の個性を示しつつ、作品のノリを観客に明確化する見事なオープニングだ。あんまりいない気はするが、このオープニングがしっくり来ないなら、たぶん間違いなく本篇は合わない。
ポップなノリのクライム・ストーリーめいたトーンで物語は展開するが、しかしそのうちにそれぞれの過去を巡る葛藤が露わになり、それらがやがて巧みに絡み合い、圧巻のドラマを構築していく。リズミカルな語り口に身を委ねているうちに訪れるクライマックスには、意表を衝かれ思わず感動してしまうはずだ。
このムードを強いて例えるなら、『銀河ヒッチハイク・ガイド』×『スター・ウォーズ』×シチュエーション・コメディ、というのが私の実感に近い。MCUという大きな世界観を借り、その枠組を保守しつつも自在に紡ぎ上げた、極上のスペース・オペラであり――ある意味で青春ドラマであり、家族のドラマでもある。なんて贅沢な作品だろう。
これを書いている現在、記録的ヒットを遂げている『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも活躍しているGOGのチームだが、単独作品についてはしばらく、一悶着があった。
本篇発表までは円満だったと思われるジェームズ・ガン監督とスタジオの関係が、本篇を手がける以前に監督がツイッター上で行っていた差別的発言が発掘されたことが問題視されにわかに悪化、続篇の監督を外される展開となった。すでに脚本は完成していたものの、それを用いるのかも不透明な状況となっている。
が、この報道が出た直後から、様々な人間が動いた。メインキャストの数人は「ジェームズ・ガン以外にこの作品の監督はあり得ない」と公言、さらに多くのファンが監督の再起用を求める署名活動に参加した。そうした反応を受け、ディズニーの首脳部とジェームズ・ガン監督とのあいだで話し合いが持たれることとなり、無事に監督は復帰を果たしている。
本篇を観ていなかった者としては、「そこまで固執せんでも」という感想だったのだが、いざ観てみるとキャストやファンの反応も納得できる。これ以上波風の立つことなく、無事に3度目(『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』や『エンドゲーム』も含めると5度目)の活躍が拝める日を待ちたい――そして今度はちゃんと映画館で鑑賞したい。
関連作品:
『アイアンマン』/『インクレディブル・ハルク』/『アイアンマン2』/『マイティ・ソー』/『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』/『アベンジャーズ』/『アイアンマン3』/『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』/『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』/『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』/『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』/『アントマン』/『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』/『ドクター・ストレンジ』
『ジュラシック・ワールド』/『あの日、欲望の大地で』/『リディック:ギャラクシー・バトル』/『ワイルド・スピード ICE BREAK』/『アメリカン・スナイパー』/『ジャンパー』/『マネー・ショート 華麗なる大逆転』/『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』/『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』
『北北西に進路を取れ』/『メリー・ポピンズ』/『銀河ヒッチハイク・ガイド』/『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』/『シュガー・ラッシュ:オンライン』
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