2024年の映画鑑賞・総括

劇場で鑑賞した本数:87本

 今年は、毎月の作業の大詰めで映画館に行く余裕がなくなる、というのを繰り返したせいで、いつもよりだいぶペースが悪くなってしまいました。また、公開作品が増えた代償として、映画館での上映時間が私の生活ペースにうまく噛み合わなくて、観逃してしまった作品も多く、若干モチベーションが落ちてしまった、というのもある。

映像ソフトもしくはオンデマンドで鑑賞した本数:2本

 緊急事態宣言で外出できない、という事情ではなく、純粋に自分に余裕がなくて映画館に行っていないので、家にいようと、配信や映像ソフトで観る機会も減るのが当然です。というわけで、配信で鑑賞した『シティーハンター(2024)』と『FALL/フォール』の2本だけ……配信だと、詳細を確認するために見返すのが楽だからか、感想も書けなかった1年にも拘わらず、この2本の感想は上がってるっていう。

最も多く訪れた劇場: TOHOシネマズ日本橋 24本

 今年はわりと訪れる劇場もばらけていて、TOHOシネマズ新宿9本、TOHOシネマズ上野10本、TOHOシネマズ日比谷12本と、伸びてきていたところもあるのですが、結局、午前十時の映画祭を観に行くメインの劇場としていたTOHOシネマズ日本橋がトップのまま……近くにある日本橋ふくしま館のイートインで昼食を摂るのが楽しみで、気になるお店やお気に入りのお店が来れば日本橋を選ぶ、ということが多かったのも手伝っている。

私的ベスト10(2023年11月以降に劇場で封切り公開され、今年鑑賞した作品)

順位作品タイトル日本公開日
オッペンハイマー2024年03月29日
マリウポリの20日間2024年04月26日
関心領域2024年05月24日
アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師2024年11月22日
哀れなるものたち2024年01月26日
落下の解剖学2024年03月29日
瞳をとじて(2023)2024年02月06日
PERFECT DAYS2023年12月22日
DUNE/デューン 砂の惑星 PART 22024年03月08日
10デッドプール&ウルヴァリン2024年07月24日
 観た本数が少なかったので、ベスト5でいいかな~、と思ったのですが、少ないわりに質は高く、落とせるとしてもここが限度、ということで普通にベスト10にしました。なお、感想が書けていない作品が大半ですが、タイトルには感想をアップする予定のアドレスにリンクをつけています。2025年以降、もしかしたら感想をアップしてるかも知れないので、試しにクリックしてみてください。
 上位はアカデミー賞絡みが多いのが私自身ちょっと悔しいところですが、実際、いい映画が多かったのだから仕方ない。中でも1位は、クリストファー・ノーランの作家性が存分に発揮されながら、世界にあまりにも大きな影響を及ぼした科学者の肖像として見事でした。2位は悲劇のメッセージ性を圧倒的な臨場感で切り取った、産まれて欲しくなかった類いの傑作。3位もまた、観ているあいだ、観終わったあとの衝撃が忘れがたい傑作。
 今年後半に鑑賞したなかではいちばんのトップだった4位は、丁寧に張り巡らせた伏線が繰り出す爽快感がたまらなかった。よく練られた台詞と、優れたキャストの演技が噛み合っていたのもいい。ふたたびアカデミー賞枠に戻った5位は、ファンタジー的な切り口で性の意識を解放する手管が鮮やかでした。6位は、謎解きとしての重みと、それが正しく着地したように見えないが故の複雑な余韻が秀逸。
 7位は、長尺でなかなかとっつきにくい作りですし、誰が見ても腑に落ちる結末ではないと思います。しかし、それでもこの長尺と繊細な描写を積み重ねたからこその、静かで嫋々たるラストシーンは忘れがたい。8位は、普通の人であることの喜びを巧みに切り取り、多くの人を励ます一方で、そこにある危うさもまたきっちり描いていて素晴らしい。
 9位は現代SF映画のひとつの到達点――ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はサスペンス映画の手腕も優れている、と思っているので、こっちでばかり評価されるのはちょっと悔しいのですけど。そして10位は、人気キャラクターの異端が低調だったマーヴェルを救う、という現実の展開まで含めて熱い。
 この下にもお気に入りの作品は多々あるんですが、長くなるのでここで割愛……少なめなら少なめなりに、思い入れのある作品が増えるものなのね。

私的ベスト10(2023年10月以前に公開され、今年鑑賞した作品)

順位作品タイトル日本公開日
エル・スール1985年10月27日
ショコラ(2000)2001年4月28日
バベットの晩餐会1989年02月18日
ピアノ・レッスン 4Kデジタル・リマスター1994年2月12日
マッドマックス21981年12月26日
 旧作のほうは、ほぼほぼ午前十時の映画祭上映作品に限られるので、こちらはベスト5に留めます。
 かつて須藤真澄の漫画でこの作品を熱烈に推していたのを読んで以来、ずーっと観たくて、DVDも買ったんですけどタイミングが合わず、ここまで来たら大きなスクリーンでかかるのを待とう、と心に決め、ようやくその機会に巡り会えた作品が、こっちのブロックでは文句なしの1位でした。確かに凄い。無駄のない描写が、中盤からにわかに反転するその残酷さ。人間の弱さを摘出する一方で、視点人物である少女の成長が一種、残酷さを帯びて際立ってくるのに息を呑みます。実はもっと長い尺だったのを、盛大にカットしてこの内容だそうですが、たぶん、カットしたことまでが奇跡的。
 2位は、実は初公開のときに映画館で観ていますけど、当時は映画鑑賞の総括どころか、ちゃんと単独の項目に起こして映画感想を書くこともしていなかったので、あえて初見扱いをしました――上位に入れたかったんですよ。チョコレートというものの魔力をファンタジー的に、過剰に描きだした、罪深くてハッピーな名作。初公開時も楽しんだ記憶はありますが、こんなに快くは捉えてなかったはず。
 奇しくも3位も料理絡み。ほとんどコンプリートしていた午前十時の映画祭のなかで、唯一鑑賞できていなかったため、待望の1本でもありました。こちらにも、料理を作ることへの情熱と、食の喜びがドラマとして昇華された傑作。
 4位は、2位にも通じるところのある、固定観念や社会的通念からの脱却が、映像的にも鮮烈に描き出された名作。5位は……もう理屈抜きに燃えます。ほとんど感想は書けてませんが、《マッドマックス》シリーズは確かに、観ている者の気持ちに火を点ける、異様なパワーがあると思う。

2025年の展望

 この冒頭の一文は7月時点でもう書いてます。2025年、私にとって最初の楽しみは、たぶん一切揺るぐことなく、劇映画 孤独のグルメ』(1月10日公開予定)です。ハマった時には既にシーズン10が終わり、再放送と年末SPで渇を癒していましたが、なかなか新シリーズが始まらないことにヤキモキしていた。主要スタッフがテレ東や制作会社から離れていき、どうやって次に繋ぐか、と考えたときに、井之頭五郎を演じる松重豊本人が脚本・演出を兼ねて映画化する、という判断に至ったらしい。舞台は、実は第1シーズンから五郎さんか因縁を仄めかしていた土地・パリ。恐らく、原作者と同様か、それ以上に作品を、井之頭五郎を熟知している松重豊監督の晴れ舞台、映画館で見届けぬわけにはいかない。……で、ここから描き足している12月31日時点で、東京国際映画祭にて既に鑑賞しちゃってるわけですが、個人的には満足の仕上がりでしたし、興収に少しでも貢献したいので、ちゃんと映画館でもういっかい観ますよ。
 新作映画のチェックも行き届いていないので、ここで採り上げる作品のデータも少ないです。ただ、1月はわりとガチガチに固まっていて、2025年の映画初めに観る作品も確定している。そして、仮に他はすっ飛ばすとしても、これだけは忘れたくないのが『セブン 4Kレストア版』(1月31日公開予定)。デヴィッド・フィンチャー監督自身が監修し、オリジナルフィルムからレストアしたヴァージョンが、3月の映像ソフト版リリースに先駆けて、IMAXで上映されるのです。この作品を映画館で鑑賞するのが長年の夢だったので、逃すわけにはいかない。公開日はもろ月末で、2024年の状況が続けば、初日に駆けつけるのは難しいでしょうけど、このためだけにでも頑張る価値はある、と思ってる。
 もうひとつ期待を寄せているのは、遂に本格始動した、ジェームズ・ガン手動による《DCユニヴァース》の劇場用長篇第1作『スーパーマン』(夏公開予定)。小出しにしてきた情報を総合したところ、今回からは他のヒーローの存在に振り回されず、あくまで個々のヒーロー単独の作品として、それぞれ単品で楽しめるものを目指すらしい。マーヴェルであれほど観客を興奮させる作品を発表してきたジェームズ・ガンが新しい構想の下に描く新たなスーパーマン、楽しみでないはずがない。現行シリーズの完結篇になりそうなミッション:インポッシブル ファイナルレコニング』(5月25ニチ公開予定)みたいなのもあるけれど、こちらはもはや安定感があるので、『スーパーマン』のほうが気になるのです。
 そして何より、来年は出来れば、年間3桁ペースに戻したい。相変わらず、映画を観るのは楽しいのだ。

何はともあれ。

 皆様良いお年を。

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