さだまさし『生命の樹 ~Tree of Life~(Amazon.co.jp限定特典:メガジャケ付)』(amazon.co.jp商品ページにリンク)
Massa@Maniにて注文して、発売前日の昨日、午前中には届いておりました。発送後に配送時間の指定が出来るお陰で、昨日のうちにじっくり味わえましたよ。
タイトルの“Tree of Life”はそもそも、アコースティックギターの名門・マーティンのブランド名なんだそうです。アルバム作りに着手する時期、クロサワ楽器の方から昨年リリースされた“Tree of Life Premium”が入荷したので、触ってみますか、という打診を受けたさださんが、やや固めのミディアムゲージの弦を張って鳴らしてみたところ、非常にいい音がしたそうな。気を良くしたさださんが、そのまま思い浮かべたフレーズを録音して、それを編曲担当の渡辺俊幸に聴かせたところ、このギターの音が凄くいいから、これを軸に編曲する、と言い、出来たのがグレープ名義にて収録した『初恋駅』だったんだそうな。そういう経緯なので、アルバムタイトルについて打ち合わせたとき、さださんが「Tree of Lifeでいいんじゃない?」と何気なく言ったら、「生命の樹! いいですねぇ!!」と返ってきてしまい、あっさり確定したんだそうです。以上、先日のグレープコンサートのトークより。忘れないように翌日にここだけ書いた……そのあと、別のところでももう語られてますが。
そういう事情もあって、グレープの番組で初めて全曲公開されたのが『初恋駅』だったのですが、これがまず名曲です。吉田政美から歌い始めて、さだまさしにスイッチし、ハーモニーを聴かせたかと思うと、同時にふたつの旋律を響かせる。往年のグレープの透明感に、年齢を重ねたが故の含蓄、テクニックが注ぎ込まれている。前述の『初恋駅』もそうですが、ギターとパーカッションのみで演奏する『母標』、タイトルとは裏腹に軽快なロック調の『神嶺 ~エベレスト=』と、バラエティに富み、細やかなテクニックが用いられている。
もとを正せば昨年、吉田政美が自身の誕生日直後にラジオ番組『1時の鬼の魔酔い』に出演した際、さだまさしからこの1年の目標を問われて、グレープとしてのコンサートとアルバムの発売をぶち上げたことに始まった、と思われます。のちにちょっと冷静になって、曲を作るさだの負担を考慮し、あくまでもアルバムとしてはさだ名義にして、さだが「この曲はグレープとして演奏するのが相応しい」と思ったものをグレープとして収録すればいい、という方針に変更し、このアルバムにて3曲のみグレープ名義になった。しかしその代わり、さだの長年の盟友・渡辺俊幸とともに吉田がプロデューサーに就き、さだが作った曲の可否を最初に確認する役割を委ねたところ、いつになく速いペースで進んだんだそうです。
結果として生まれたのは、さだまさしらしさの中に清新な空気が流れている。しかもグレープ名義の曲に至っては、もしかしたらかつてのグレープが目指していた領域なのではなかろうか、と思うような内容とクオリティです。73歳にして、まだ進化の兆候を見せている。これからまだまだ楽しみです。
コメント