今年8月リリースの『ほんとにあった!呪いのビデオ89』を鑑賞。走行中の乗用車のフロントガラスから撮影した動画に記録された怪異“繰り返される死”、屋根裏からの物音の出所を調べていて遭遇した“棲みつくもの”、神社で撮影された不気味な映像についての取材が思わぬかたちで拡散していく連作完結篇“終 黒く蠢くもの”ほか全7篇を収録。
夏恒例の連作もようやく終了……結果的に面白かったのは認める、が、なんかスッキリしない。
実のところ最初から新しい演出補・上田の挙動は目に余るものがあった。それが最終的に取材映像と繋がっていなければ、これは視聴者の不快感を煽って終わるだけになりかねない、と危惧していたのですが、その意味ではちゃんと筋道は立っている。でも、それでもどうも釈然としない。スタッフとしての行き過ぎた行動を責めてますが、ぶっちゃけた話、ここまで事態が悪化する前に止めることは出来たはず。そもそも、このネットワーク全盛の時代に、雇う人間のSNSでの振る舞いぐらいなんでチェックしておかないのよ。
また、本篇の締めくくり方だと、最終的にこうやって人様に提示するかたちを整えるうえでの話し合いがきちんと出来ていたのか? という疑問もどうしても拭えない。こういう題材を扱い、本来の対応を示すことで、事実と真摯に向き合って作ってます、というところを見せたかったのかも知れませんが、語り口と展開ゆえに、却って嘘が滲んでいるように見えてしまってる。
この長篇に力を入れすぎたせいなのか、他の単発のエピソードがすべて、どこかで観たような類の怪奇映像になってるのもかなり残念。展開や、背景を追ったドキュメンタリー部分に違いはあって、エピソードとしては楽しめるんですけど、連作のなかでも語っているとおり、このシリーズは大勢の作り手が積み重ねたもので出来ているわけで、ならばこそもっと多彩さや、多くの“投稿”を得ているが故の幅の広さを出して欲しい。
……詰まるところ、やっぱり現在の演出担当KANEDAはどーにも頼りない、という結論に落ち着いてしまう。せっかく川居直美が戻ってきたんだから、彼女にもういっかい委ねた方が良かったんではなかろうか。連作の処理も含めて。
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