昨年10月リリースの『呪いの黙示録 第二章』を鑑賞。無人のトイレから聞こえる声に気づいた少女たちが更なる恐怖に遭遇する“笑い声の女”、古い撮影素材に異様なものが捉えられる“アダルトビデオの現場”、正体の解らない男女の睦まじい日常を撮影した映像に怪奇現象が残されていた“カップル”、音声だけの怪奇現象の源を探るうちに、ある集落の闇へと踏み込む連作“謎のラジオ放送”“奇祭”の全5篇を収録。
福田陽平&寺内康太郎の新シリーズ2本目。怪奇ドキュメンタリーとしてのアイディアと巧みな見せ方は今回も健在。
ただ引っかかるのは、前作で私の頭の中に“?”マークを乱舞させた演出補が夏期休暇でお休み、という謎の設定……え、どんだけ長期間休んでるの? 欧米式で長い休みを取るのは構わないんですが、しかしそれでも、こういうオムニバス的な作りは、取材時期をずらしたり担当を振り分けたり出来るのがメリットで(それゆえにこの巻でも、長篇ではもうひとりの演出補が当初、単独で取材対象を絞っている場面がある)、そう考えれば、休んでいることに触れる必要自体ないのです。『ほん呪』やそのフォロワーでは、特に断りもなくスタッフが総入れ替えになっていることも珍しくないので、“あえて触れる”のもまた着眼ではあるんですが、どうにも不自然な印象のほうが強い……前巻といい、いてもいなくても悪目立ちするな、このひと。
その一方で、演出補が自身の求める演出方法との食い違いから、同一メーカーの別シリーズへの異動を志願する、という成り行きはちょっと面白い。確かに、これだけたくさんスタッフがいれば、上の意図によって希望と違う部署に配属されるのはありがちで、特にこのメーカーは様々なシリーズをリリースしているぶん、各々のスタンスも違う。スタッフの露出を望まないこの演出補が『呪われた心霊動画XXX』シリーズへの参加を要望した、というのも凄く納得がいく。採り上げられた怪異とはまったく関係はないので余談に過ぎないのですが、スタッフをあえて映す福田・寺内の路線には合った趣向だと思う。
エピソードそれぞれの出来も安定してます。冒頭の“笑い声の女”はそれ自体が優秀な怪談の趣がありますし、古い素材や発掘されたテープに記録された、という、追求しようのないテーマであればこそシンプルに見せた“アダルトビデオの現場”“カップル”も巧い。そして残りの連作は、いかにも演技してます、というわざとらしさは若干ちらつくものの、決して派手とは言いがたい怪異から恐るべき背景へと辿り着くプロセスに見応えがある。
前巻同様、微妙に引っかかる部分はあるものの、怪奇ドキュメンタリーとしては優秀。今月には第四章がリリースされたらしい。このスタンスで続けてくれるなら、可能な限り追います。また急に潰さないでね。
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