5月6日に、2024年2月リリースの『呪いの黙示録 第十章』を鑑賞。ある遊園地で観覧車に乗ったカップルに襲いかかる謎の異変を記録した《回る鉄塔》、深夜に集いフリースタイルのラップで楽しむ一団を撮った映像に紛れ込んだもの《円環音楽》、娘の結婚式の余興に幼少時の映像を整理していて発見した違和感《御客様》、“たすけて”という不穏なメッセージとともにスタッフルームに届いた動画の背景を探る《生葬》前後編の全5篇を収録。
シリーズ第1作から演出に携わってきた寺内康太郎が別件で手が空かないため、いわゆる心霊ドキュメンタリーの経験のないディレクター・平田純哉が新たに着任する、という不穏な出だしでしたが、内容はいつも通り、しっかりと面白かった。
単発のエピソードは、そこまで突出してインパクトがあるわけではない。ただ、意外と見落とされがちな“怖さ”に着目していて、それだけでも見所はあるのも確か。
しかし唸らされたのは長篇です。“たすけて”というメッセージに添えられていたのは、とある地方に存在した、死期を悟った人物が生きたまま自らの意思で埋葬される儀式を現代に蘇らせる、という使命感に燃える人々の昂揚した姿。そこでスタッフが伝手を使って現地を調査すると、実際にその儀式を知る人物に巡り会い、現地へと踏み込んでいくが、随所に異様な気配がちらつく。
何せそこに当事者がいるため、安易に言葉にしてはいけない、という緊張感で取材は進み、更に厄介な事態に発展する。なかなか先の読めない状況が続くうち、やがて辿り着く、意外すぎる結末。観終わって、何やらごまかされた気分に陥る人もいるかも知れませんが、何でこんな事態になったのか、背後で何が起きていたか、と創造すると、なかなかに怖い。“それ”はいったい何を見せたかったのか。
前作が怪奇ドキュメンタリーとして極北と言っていいくらいの傑作だったのでちょっと心配してましたが、これはまた別のかたちの傑作でした。演出が交代する、という冒頭に一瞬不安を抱いたものの、このクオリティなら次回以降も楽しみ。
ちなみに、演出を離れた寺内康太郎氏ですが、テレビ東京にて先日から不定期的に放送中の『TXQ FICTION イシナガキクエを探しています』に関わっている模様。制作時期がちょっと被ってそうなので、“別件”とはこのことかも知れません。
これを書いている時点ではまだ1回しか放送されておらず、内容的にも導入という印象でしたが、既に不気味な展開になっていて、続きを楽しみにしているところです。活躍の場が広がるのはいいことだ。
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