その顔をした人形は怖いよ、確かに。[レンタルDVD鑑賞日記その883]

心霊闇動画89(Amazon.co.jp商品ページにリンク)

 8月27日に、2024年5月リリースの『心霊闇動画89』を鑑賞。道路で見つけた亀を池に返したとき、不気味なモノを撮影してしまう《亀を放つ》、牧場で馬への餌やり体験をしていた家族のホームビデオに異様な存在が紛れ込む《エサをやる》、スポーツ施設の休憩所で他愛もない話をしていた男性達が思わぬ恐怖に遭遇する《立っていたモノ》など、全6篇を収録。
 最近になって観始めた『心霊曼邪羅』も、もお巻を重ねるごとに色々と苦しくなっているのが窺えますが、正直、ここまで手を抜いている、きちんと練っていないわけではない。私が観ているシリーズの中でも、たぶんいちばん出来は悪い。
 いちばん引っかかるのは、大半がほぼ子供のいる家庭が撮ったホームビデオである、ということ。一昔前ならまだ解るのですが、いまは誰しもが気軽に動画を撮影出来るので、もっと色々なシチュエーションでの怪奇映像が寄せられていいはずなのに、大抵ホームビデオというのはどうにも不自然。何巻か前、ほぼすべてホームビデオ、という状況が合ったのに比べればまだましですが、どうも不自然。
 そして、肝心の怪異も全般に安易。だいたい、異様な顔が映り込む、手や足が映り込む、という表現で済んでしまうもので、大半カメラを動かしているあいだに登場するため、都合よく一瞬画面をよぎる、という程度なのも工夫がない。そんななかで唯一、消えていく瞬間も捉えたエピソードがあるのは頑張ってる、とも言えますが、それにしてもフェイドアウトが滑らかすぎて、怖いと言うより笑ってしまう。
 中でも今回、特に引っかかるのが《亀を放す》です。ツッコミどころが多すぎる。
 まず、「投稿者が取材NG」だから、例によって演出補が、投稿者から聞いた話を画面に向かって語る、というかたちを取ってますが……それは“取材”をしてるだろ。たぶん投稿者のNGは撮影、或いは直接の面談であって、“取材”が駄目ならこういう描き方にはならない。
 このエピソード、道にいた亀をいったん保護して、しばらくしてから池に放った様子を記録したもの、ということですが、そもそもこの亀をその池に放っていいのかどうか、がけっこう微妙。投稿映像では亀の姿がちらっとしか見えないので、放った亀がなんなのか断定できないのですが、ミシシッピアカミミガメみたいな特定外来生物の可能性も会って、その場合は放たず最後まで面倒を見るか、それを抜きにしても、役所などに相談すべき案件だったはず。この辺を安易に処理してしまっているのが、どーにも引っかかってしまう。
 もっとモヤモヤするのが、肝心の怪異についての証言。投稿者は、かつて眼にした不気味な人形に似た顔が映っている、というのですが……投稿映像のアレは、人形っぽくない。たとえ、フェイク映像を制作するときに使用したのが人形の顔だったとしても、この映り方で“人形”と認識するのは違和感がある。ぶっちゃけ、人形を使った、という意識があるから、こんな証言を作るしかなかった、というように受け止めたくなる。
 もともとクオリティは低めのシリーズでしたが、最近更に深刻化してきた気がします。以前、演出補の方が演出に昇格した時期がちょっとだけありましたが、いまにして思うと、あのときこそアップデートの好機だったのではなかろうか。戻ってきてしまった演出が反省するか、クオリティの向上が見込めないことを受け入れて後進に席を譲るまでは、望みがないかも知れません……。

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