12月8日に、2024年8月リリースの『ほんとにあった!呪いのビデオ107』を鑑賞。夜更けの帰り道に遭遇した怪現象の記録《終電後の踏切》、友人が彼氏の部屋に入る女性を目撃、浮気を疑い追求しようとする一部始終を追った映像があり得ない存在を撮してしまう《浮気調査》、前巻で投稿されたチェーンLINEのもとになった映像の出所を探すうちに、シリーズの過去を遡ることになる《続・呪いのビデオ》前後編など、全8篇を収録。
この夏の3部作第2部。100巻に続いて、藤本裕貴演出版として『ほん呪』の歴史の総ざらえ、みたいな趣で、怪異を別として興味深い。そりゃあ、採り上げられなかったことを恨みに思うひともいるでしょうし、採り上げられなかったことそれ自体にも怪異はあるでしょう。演出を退いたあとも“演出協力”などといった肩書きでエンドロールにはしばしば名前の出ていた菊池宣秀が成り行きからちょっと再登板しているのも楽しい。そうか、こういう繋がりで劇場版となった最新作109巻に至ったわけか(やっと飲み込んだ)。
ただ、長篇の内容としては、怪異も随所で発生しつつ決して派手ではない。なにせ、ざっくり纏めると、前巻で調査していた映像が実は過去にいちど投稿されていたらしい、と判明し、その捜索で投稿を漁り、中村義洋演出の時代から菊池演出期まで連絡そのものはあったのに、何故か採り上げられていない――この期間、執念的な投稿者は他にもいて(他でもない、菊池演出だって元はそれに近い投稿者だ)、これだけをあえて採り上げなかったのは何故か。歴史が長いからこその切り口そのものが興味深い。菊池演出が最初に協力を頼まれたときの態度は軽くぶっ飛ばしたくなりましたけど。断るにしても言い方考えろよ。そもそもちゃんと脚を止めてビデオ通話しろよ。そこまで急がなきゃいけない用事があるとしても態度が雑すぎる。
長篇としてはいちおうの決着を見たかに思えるけれど、夏の3部作、しかも108巻は同時発売なので、恐らく繋がっていく。そもそも、この巻の展開だけでは、前巻の《呪いのビデオ》冒頭に触れた、シリーズ存続を再考するかのようなところまで至っていない。楽しみなような、怖いような。
……と言いつつ、既に劇場版として109巻はリリース済ですし、各種サイトに110巻の発売が来年にあることも掲載されてる――どこかの勇み足で情報だけが広まってる可能性もなきにしもあらずですが、まあ、そこはそれ。
これ以外の単発作品も、さすがの安定感がある。何がいいって、カメラに何か映り込んだタイミングで、驚いてフレームを外す、といういちばん安易なやり口が、ないわけではないけれど決して多用していないこと。《終電後の踏切》で行われますが、ここは映り込みそのものよりも、もっと露骨で不可解な現象が先にあるので、決してここがメインではない。そして、映像の見え方では解りにくいぶん、肉眼ではもっとはっきり見えていたのでは? という雰囲気があるのも生々しいのです。
冒頭の《鼠》にせよ《浮気調査》にせよ、怪異は映っているけれど、撮影者はそこに反応していない。前後に起きた異変との関連が、その怖さを際立てています。《七五三》や《縁日》なんかは、もっとくっきりと映っていれば、という気もしますが、このくらいがちょうどいい、とも言える。合成だとしても、ちょうどいい生々しさが感じられて、充分に薄気味悪さが感じられる。
間違いなく、同種作品と比べて未だに高いクオリティを誇っているので、まだまだ続くことを願いたい。
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