3月25日に、2025年1月リリースの『呪いの黙示録 第十一章』を鑑賞。都市伝説の実地検証を行った配信者が遭遇した恐怖《平凡な闇》、留学生の動画記録が不可解なものを撮してしまう《拝啓…》、諸般事情から入手経路すら明かされない不気味な動画《Japanes Anouncement》、女性のもとに届く奇妙な荷物と不可解な電話、その謎を紐解くうちに想像を超える事実に辿り着く《(括弧)》前後編の全5篇を収録。
……いやあ、気味悪かった。
既に離れたとはいえ、もともと寺内康太郎が演出していたシリーズゆえ、スタッフの露出は多い。なのに、人手が足りないからと言って、いきなり部外者、しかも映像製作の経験がない、という人物を雇い入れるのはどうなのだ。プロデューサーが雇用した理由も「勘がいいから」って。実際、最終的にはこの新たに加わった葛生というAPの提案が、取材に区切りをつけるきっかけになるのだけど、それにしたって。
そして、右も左も解らない新人スタッフがいるというのに、更に当てのない調査をダラダラとさせる江益も江益です。確かにこれといった手がかりがないのも事実だけど、投稿者の証言や提供された材料を吟味して、もうちょっとアタリをつけて動けよ。新人がうんざりするのも当然だぞ。
ただし、そこから次第に動き出す事態と、決着は実に不気味で、おぞましい。投稿者についてのある事実は、勘のいい人なら、スタッフが気づくよりだいぶ早く察しがつく(だから隅田川沿いをウロウロしてるときに「そこじゃねえよ!」と言いたくなるのだ)ものの、続いて起こる奇妙な出来事、そして葛生の“気づき”のあとにぼんやりと見えてくる怪異の構造と、急転直下で訪れる決着の言いようのない後味の悪さが強烈。
なにせこの《(括弧)》と題された長篇、いちおう怪異らしいことは起きているけれど、映像的には決して、そこまでおかしなことは起きていない。はっきりと、細工してどうにかなる種類のもの、と断言も出来てしまう。しかし、描かれる出来事が等しく薄気味悪く、そして終わってみれば、何も明確になっていない、と不満を覚える一方で、一つ一つの出来事が何かを示唆しているようにも思える。しかも、今更それを追求する術もない。あくまでも、他人の身に起きた出来事を、一般人の立場から追跡するしかない怪奇ドキュメンタリーというものの宿命が、不気味な余韻を増幅する。
単発ものも、なかなかの内容が揃ってます。シンプルながら怖さのツボを弁えた《平凡な闇》、こちらも内容はシンプルだけど経緯が言いようのない余韻を留める《拝啓…》もいいけど、突出しているのは《Japanes Anouncement》です。でっち上げることも容易いけれど、これが実在するものだ、と捉えただけで、尋常でなく不気味。何の説明もなくこの映像を見せられたら、たぶん一人で部屋にいるのが怖くなる。むしろ、トータルで強いインパクトを残す長篇に挟み込んで見せることで、この作品の不気味さをちょっとマイルドにしてるくらいです。
寺内監督の離脱に加え、妙に存在感の強かったAP真田怜臣の姿がない1ので、やや趣が変わった感が強まりましたが、基本的なテイストと見応えの豊かさは変わってない。他のシリーズに比べてペースは遅めですが、引き続きチェックします。
- 本業は俳優で、今年の2月に所属事務所を離れてフリーになった、という情報があるので、そのあたりも絡んで現場を離れたのかも。そんな想像してたら、次の巻でしれっと戻ってるかも知れないけど。[↩]
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