普通そこから撮らんやろ。[レンタルDVD鑑賞日記その917]

封印映像73 背後の異形(Amazon.co.jp商品ページにリンク)

 10月12日に、2022年3月リリースの『封印映像73 背後の異形』を鑑賞。投稿者の家が伝統的に守っている鉢植えを委ねた友人を襲った悲劇の一部始終《アルラウネまたはガルゲンメンライン》、恋人とデートを撮影したときに映った怪異の調査が思わぬ方向へと転がっていく《妄信》、車中泊をしていた男性二人が遭遇した恐怖《よびごえ》、日本に滞在しライブ配信を行っている女性を襲う恐怖の記録《背後の異形》の全4篇を収録。
 私は“心霊”という定義の曖昧な単語をあんまり使いたくなくて、この類の作品を“怪奇ドキュメンタリー”と言ってますが、近頃はこの言い方がいちばん似つかわしいのがこのシリーズではないか、と思ってます。幽霊というものよりは、現実離れしたものが起こす不可解な出来事の記録、という様相が強い。
 全般に乗り込みが足りなかったり、スタッフ含めてやり取りに不自然なところが多いのが残念だけど、各編毎にちゃんとアイディアがあって、奇怪な出来事を描いたドキュメンタリー……風作品として成り立っている。
 今回、そういう意味でなかなか秀逸だったのは表題作です。ライブ配信者の映像を録画していたからこそ残った映像、というところもそうだし、日本を好きになって長期滞在している海外の女性、だからこそ現れたように映るストーカーのような人物、と現代的な要素を多数ちりばめて、なおかつそこにきちんと怪異が入り込んでくる。
 芝居臭いやり取りがリアリティを削いでいることがしばしばあるこのシリーズですが、《背後の異形》については、投稿動画のなかの主人公が、日本滞在中の外国人で、日本語は話すけどぎこちない、という設定になっているのが奏功してます。多少不自然な会話でもちょっと正当化出来る。
 とは言い条、引っかかるところは多いです。
《妄信》は他の怪奇ドキュメンタリーでもあった裏事情が強い印象を残しますが、その背後関係が判明する前後、スタッフの反応が不自然すぎる。そもそも、投稿映像を観た段階で引っかからなきゃいけないポイントがあるし、関係者からの説明に疑問を抱くのはいいけれど、抱くのなら整合性や信憑性をちゃんと検証しなさいって。事情が解ってから映像を見返せば、怪奇現象以外にも明らかにおかしなところがあるでしょ。
《よびごえ》はシチュエーションとしては面白いが、撮影場所が暗すぎて、いったいどういう場所でこんなことが起きているのか実感しにくい。こうやってドキュメンタリーとして仕立てるなら、背景にモザイクをかけてでも、スタッフが昼間の様子を取材して披露すべきだったと思う。具体的な雰囲気が解る方が、そのシチュエーションの怖さはより伝わりやすいです。
 相変わらず、全体として、土台となるアイディアは悪くない。<ただ、それを詰めていく手管が杜撰すぎて、質を大いに損なっています。演出がカメラの前で姿を消して以降、今に至るスタッフの体制は私には解りませんが、消えたことを機に、復帰するまでの穴埋め、という名目で、新しい演出や目端の利くスタッフを入れた方がいいと思う。たぶん私、南海もおんなじこと書いてる。/p>

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