10月28日に、2024年11月リリースの『Not Found 54-ネットから削3除された禁断動画-』を鑑賞。世直しと称し、位置情報の送信機を仕込んだタグを忍ばせたバッグを放置、持ち去った者を懲らしめようとした配信者の顛末《スマートタグ》、工事現場で施工管理の仕事もしているAD奈古が現場で聞いた怪談を語る《AD奈古 怪談師になる》、ディレクター・古賀が別の現場で知り合ったヘアメイクアシスタントのもとに届く異様な荷物を巡る長篇《自宅に届く不可解なモノ》前後編など、全6篇を収録。
巻数を重ねていくうちに、ADのキャラをやたら立てたがり、間抜けさがレベルアップし、少々微妙ながら作風を確立していったこのシリーズ。どうやら前述のADと揉めて何かを反省したようで、シリーズお馴染みの構成を守りつつも、悪ふざけのようなことはしなくなってきた。
前述のADのあとに参加した奈古に焦点を当てた《AD奈古 怪談師になる》はそういう意味で、正しいアップデートだと思います。映像関連の他に建築施工管理の仕事に携わり、現場で聞いた怪談を武器に怪談師になる、という体で、蒐集した怪談を仕事着にて実際に披露する、というのは、前のADのように奇妙な形にせずキャラを立てる、という意味では正しい。思惑通りに怪談が集まるか、という疑問もあるし、長年こういうのを見てきた者としては、出来映えに引っかかるところはありますが、このシリーズらしさを損なわず、様々なリスクを軽減する、という点でいい趣向だと思う。続けばいいけど。
長篇もなかなかの面白さです。《Not Found》シリーズ本来の趣向からするとズレているものの、普段は別の映像関連の仕事をしているスタッフだからこそ調べられる内容である、というのは、それはそれで意義がありますし、何より、背景を追ううちに辿り着いた、廃墟となった集落が舞台として素晴らしすぎる。追跡の仕方には色々と気になる点はあれど、ずっと興味を惹かれる展開でしたし、結局なぜ発端となるヘアメイクさんが標的になったのか、不明瞭なままなのも、薄気味悪い余韻を留めていていい。
単発ものもなかなか。毎回、超常現象なしで、悪意や実感的な恐怖を採り入れる冒頭のエピソードだけ、気になるところがあるうえに物足りない、という代物でしたが、他ふたつのエピソードは、探りきれないからこそおぞましい余韻を残す。
同じメーカーの《XXX》のようなパワー、インパクトこそありませんが、独自の地位を確立したシリーズとしてのらしさを留めつつ、新しい段階に進もうとしているのを感じる、わりと好感の持てる仕上がりでした。
あの廃墟だけで絵になります。[レンタルDVD鑑賞日記その919]
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