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残像 IT’S MOSTLY RESIDUAL

 インターネットでCD類のデータを探しまわっていたとき、こんなのが発売されているのを知り、よく行く店で注文のうえ貯まっていたポイントで購入してきました。パット・メセニー・グループに大抜擢されたことで注目を集めた、ヴェトナム出身のトランペッターであるクオン・ヴーの四枚目にして、日本では初めて正式にリリースされた最新アルバムの表題曲です。

 グループのライヴ映像を見ても、オーソドックスな演奏と同時にノイズ風の音を演出して音楽の中に組み込む手法が独特でしたが、自身のオリジナル・アルバムでも当然のように同様の手法を、更に膨らませた格好で駆使しています。

 ちょっと聴いた印象ではフリー・ジャズに近い感じに捉えていたのですが、実際に通して聴くと、明確な図面が用意されているのが解る、計算された音の構成を採っている。しかもこの表題曲など、真っ当な吹き方をしていない場面が多いのに尖った雰囲気はなく、ひたすらにドラマティックで感動的。続く曲はまだ癖のある感じですが、こと表題作についてはメセニー・グループを通じて入ってきたリスナーに配慮したかのように、グループの音楽性の影響が色濃く窺える、というのは勘繰りすぎでしょうか。

 重ね録りの結果でもあるのでしょうが、僅か四人で演奏している――しかもキーボード・シンセサイザーを使っていない*1とは思えないぐらいに音に厚みがあるし、曲想にも幅がある。サポートとして参加したビル・フリゼール(g)の力もたぶんにあるのでしょうが、その技術を引き出すに値するだけのアイディアの豊富さを感じさせます。これは過去の作品もちょっと聴いてみたいぞ。

*1:微妙な言い回しになってしまうのは、ライヴの映像から推測するに、トランペットの音にエフェクトをかける手法が、シンセサイザーのそれに近い様子だから。

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