『灰の迷宮』原作発掘。

灰の迷宮(カッパ・ノベルス版)

 きのうのドラマ版が好感触だったので、本当に捜し出してきました。……なぜか新書判。せっかくなのでカバーをスキャナーにかけて、書影を載せてみました。個人的にはこの頃のバタくさいデザインが好きなんですけど、もうこういうタイプのは出て来ないのかな〜。文庫判もしばらく前に光文社文庫収録のすべての作品を一貫したモチーフで装幀しなおしているので、わたしが所有しているものとは趣が違っている……それゆえ一瞬揃えなおそうかと当時は魔が差したものさ。どうにか退けましたけど、今になってこの原作を読み直すという理由で『灰の迷宮』だけ買おうかとまた一瞬悩んでたり。

 ざっと眺めてみた印象では、どうも昨晩のドラマ版は想像以上に原作に忠実だったようで、時代設定の変更や登場人物の整理は行われていますが、エッセンスはほぼ完全に保管されている。昔はインパクトが強かったけれどドラマでは削除されていたある要素は、確かに削除しても問題はなさそう、というより話を錯綜させて二時間ドラマの枠では邪魔になりかねなかったので、削除したのは賢明な判断でした。

 また、吉敷竹史というキャラクター、心情描写のある原作ではその裡にある激情が地の文ににわかに迸るもので、話にのめり込めないと時として鬱陶しさを感じる、という弊害があることを思い出しましたが、ドラマ版では語り手を別に用意することでこの点を緩和し、渋みを演出していることにも気づきました。基本的に島田作品は好きなのですが、しばしばその正義感や情熱が鼻につくこともあるわたしには、だからドラマ版は余計に好感を覚えたようです。……翻って、再読のときはそのギャップが印象にどう影響するかがちょっと心配。

 何はともあれ、いま読んでいる奴が片づいたらとりかかります。……それはいったいいつのことだろう。

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