午後4時近く。両親の車に便乗して遠出。朝方の新聞には晴れか曇りマークしか載っていなかったのですが、半分ほど進んだところでにわかに雲行きが怪しくなる。
心配しつつ走り続けていくうちにやはり降り始め、かなり激しくなりそうな兆候も見せたのですが、目的地付近になると降った気配はありませんでした。都内から一時間ちょっとの道程にも拘わらず、あたりは田圃が拡がり近くに森も見えるのどかな環境。道が細く、住宅のある界隈ではやたらと込み入っているため、肝心の行き先が解らず先方にご連絡して出て来ていただくひと幕もありましたが、無事に到着。
訪れた先は――津原泰水さん宅。目的は、先月こちらで誕生した仔猫のうちに2匹をお預かりすること。10日前、津原さんが自身のサイトの掲示板にて告知していたのを、某氏が教えてくれたので、すぐさま連絡を取ってお預かりさせて欲しいとお願いしました。もともと津原さんとはお知り合いだったのでスムーズに話がまとまり、調整のうえ本日お邪魔した次第なのです。
早速家の裏手にまわっていくと、まずは親猫とご対面。最初は、我が子を連れ去っていく人間が来たのを気配で察して警戒している、といった風情だったのですが、恐る恐る近づいてしばらく撫でてみたら。
完全に気を許されてしまいました。ご近所の子供達にさんざん構われている、と伺っていたので心配はしてませんでしたが警戒心乏しすぎ。
一方の仔猫たちは、さすがに見知らぬ大人が三人も一気に姿を現したのに動揺したか、わらわらとあっちこっち逃げまわっております。親猫が当初潜りこんでいたという空調の室外機の下と濡れ縁の下のあいだを、まだよちよちとした足取りで往復しているだけなので捕まえやすいといえば捕まえやすいのですが、何やらてんやわんやの有様に。
仔猫は6匹、うち津原さんが“トースト色”と表現していた4匹はすべてオスで、やや色の濃い1匹と色素が淡くいちばん愛らしい容姿の1匹がメス。我が家で先日亡くなった猫がメスであること、1匹よりも2匹以上で飼った方がいろいろと扱いやすいこと、また出来れば去勢はさせたくないという意向もあったため、メス2匹をお引き取りするという話がまとまっていたので、とりあえず顔を確認しようとする――が、色の濃いほうはすぐに津原さんが発見したのですが、何故かもう1匹の淡い色合いの子が見つからない。トースト色がわらわらと行き来し、父がうちの1匹を抱えてしまったために情が移りかかっているなか、わたしの抱えた1匹の反応でようやく残るメスを発見。隣接する畑とを隔てた柵の横に植わった木々のなかで遊んでおりました。……他の猫たちが動揺しているなかで。わたしが抱えている猫でさえいささか震えているなかで。津原さん曰く、いちばん可愛いと同時にいちばんアクティヴな子だという話でしたが、本当に大した子かも知れません。
実際トースト色の子達も可愛く、しばし本気で悩んだのですが、現実問題としてオス+メスという組み合わせでは去勢手術をせざるを得ませんし、選んでいると確実にきりがなくなるので、当初の予定通りメス2匹ということでわたしが強引に決を出してしまいました。別れを悟られる前にと、前の猫の移動に用いていた籠に2匹とも入ってもらい、改めて津原さんに御礼申し上げて出発。出る前に、せっかくなので母猫の後ろに隠れていたトースト君のうち1匹も撮影してきました。
道中、不安がったり鳴いたりするのかと思えばそんなことは全くなく、籠の中でずーっと静かに丸まっていました。色の淡いほうに至っては、手持ち無沙汰だったのか毛繕いまでしていたそうです。助手席に座っているわたしは後部座席の娘達を構えずなんとなく焦れてみたり。
帰途、異常な降りに見舞われましたが、自宅近辺では降った気配もなく、無事に我が家へ。ひとまず祖母に2匹とも御披露目したのち、籠に入れたままわたしの部屋へ連れて行く。というのも、車中ではあれだけ泰然としていたこの2匹も、見知らぬ家に連れこまれたためかさすがに動揺している様子だったので、しばらくは慣れた様子のこの籠を小屋代わりに使わせてやることにしたのです。晩年は移動させることも減って放置されていた籠なのですが、それでも猫の匂いが残っていたのでしょう。
しばらくはおどおどとしていましたが、引っ張り出して抱え上げて撫でてやって、というのを交互にやっているうちに少しずつ落ち着いてきたようで、籠の外に出て来てあちこち様子を窺ったり、籠の周囲でお互いにじゃれ始める。実は2匹以上で飼いたかったのはこれも理由のひとつで、2匹なら誰も構えない状況でも寂しくないでしょうし、こうやってじゃれることで、爪の使い方や甘噛みの加減も覚えてくれるのです。津原さん宅にいた時点でけっこう馴染んでいたからでしょう。籠の窓を挟んでちょっかいを掛け合ったりと、狭い範囲でながら少しずつ緊張が解れていく様子が解ります。
続いて食事の問題。前の猫は最終的にドアの横、邪魔にならないスペースに餌箱と水用の容器を置いてやったのですが、まだ籠の周囲からそこまで移動させるのは酷なので、ひとまず持っていって食べさせてやる。……津原さんに聞いてはいましたが、本当にこのサイズでもうカリカリを食べてます。この状況になって、色の濃い方がやたらと落ち着きがなくけっこう強欲である一方、色の薄いほうが泰然としている代わりにやや執着に乏しい、という個性が見えてきました。だって、色の薄い方が餌の器にあとから入ろうとしたら、濃い方が怒ってるんだもの。あともうひとつの心配はトイレですが、これも津原さんの話ではほとんど教える必要もなく、猫砂でするようになっていたそうなので、たぶん大丈夫でしょう。なに、もともとそうすぐにうまくいくとは思ってませんし。
ひととおり遊んだり餌を食べさせたりしたあと、どうやら落ち着いてきたようなのでしばらく放っておきましたが、我が家ではわたしの部屋が基本的な生活空間で、ほか両親の部屋で構われつつくつろいでもらうのがお約束なので、とりあえず慣れていただくために2匹とも抱きかかえて移動。ここでもモロに性格の差が出て、色の薄い方はろくに身動きもせずじっとしているのに対し、濃い方は非常に落ち着きがない。喉を鳴らしながらごろごろと転がり、猫用の玩具にも積極的に反応する。色の薄い方はわたしの肩に乗せても落ち着いてしまいますし、玩具に対する反応も控え目。しまいには親父に撫でられるがまま目を細めてそのまま眠ってしまう始末でした。起こすのには忍びなかったのですが、ある程度馴染ませたあとで2匹ともふたたびわたしの部屋に戻す。
その後もしばらくは2匹とも――主に色の濃い方が落ち着きなくうろうろしていましたが、さすがに長距離の移動のあと、慣れない場所で遊び回った疲れが出たか、やがてくっついて眠りに就いております。わたし自身も移動と、久し振りに思いっ切り猫を構った疲れが出て眠気が募っているので、早めに就寝する予定。
――そうそう、彼女たちの名前を書き忘れてました。先代もそうだったためにわたしに命名が一任され、土曜日からこっちずーっと悩んで、往路でも決めかねていたのですが、帰り道に母が津原さんと交わしていた会話について聞かされた瞬間閃いて決定しました。下の写真、手前に顔のある、色の濃い子がサツキ、後ろに見える色の淡い、平安貴族の眉毛のような模様がある子がメイとなりました。――解る人には理由まで含めて察しがつくはずの単純な思いつきですが、やたら凝った名前よりも関連の解りやすい名前のほうが記憶するのも愛着を覚えるのも早いもの。
今後も[neko]というカテゴリにて成長の様子を折に触れ報告していく予定です。何卒よろしくお願いいたします。
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