『霧の訪問者 薬師寺涼子の怪奇事件簿』
判型:新書判 レーベル:講談社ノベルス 版元:講談社 発行:平成17年02月20日 isbn:4061824996 本体価格:800円 |
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容姿端麗傍若無人、向かうところ敵なしの薬師寺涼子が様々な怪奇事件を文字通り蹴散らしていくシリーズの第7長篇。
上司である薬師寺涼子警視に引きずられる格好で、初夏の避暑地・軽井沢を訪れた泉田準一郎警部補。涼子が来日中のアメリカの大富豪マイラ・ロートリッジの主催するパーティに招かれ、それに同伴させられたのだが、到着早々マイラの娘アーテミシアの運転する車に撥ねられ、彼女らの滞在するホテルに拉致同然で連れこまれる。間もなく涼子の有能なメイドふたりに救出されたものの、パーティの直後にロートリッジ母子の滞在するホテルが焼亡するという騒動に巻き込まれる。涼子はその背後にマイラ・ロートリッジの歪な欲望の存在を嗅ぎ取り、容喙していく…… シリーズ7作目は高慢女同士の対決――という触れ込みだったが、そういう意味ではかなり期待外れだった。傍若無人の度合いでは確かにマイラ・ロートリッジは強烈だが、裏打ちするものが脆弱なのでどうもパワーに欠いている。けっきょく、勢力でも美貌でも知性でも、更には生身での戦闘能力も兼ね備えた涼子にはまったく及ばない。 敵がその調子なので、涼子の啖呵もほかの作品と比べてやや力不足の印象を受けた。アーテミシアの使い方によってはいつも以上に必死にアプローチをかける涼子、という展開も望めたと思うのだが、アーテミシアがかなり早く表舞台から退いてしまうので、その点でも物足りない。 ただ、それでもシリーズの愛読者には色々と楽しみどころがある。今回出色なのは、ジャッキー若林の所属する女装愛好家組織の集会の場面である――あくまで涼子がある計画に利用する、という趣旨で登場するのだが、見ようによってはここがいちばん迫力があって面白かった。 著者もとことん楽しんでいるふしがあるので、あまり緊密な構成を期待するほうが間違っているのだけれど、それにしてももう少し見せ場の欲しかった一作である。なんとなく勿体ない。そして、どーせ楽しんでいるのなら、もっと短いスパンで新作を上梓していただきたいものなのだけど。 |
コメント
ごっつい男達のウェデングドレスやゴスロリ軍団は
実に見物だった。
ジャッキーさんの赤頭巾ちゃんもね。
狼が見たら気絶もの(笑)。
ウェデングドレスとゴスロリの男達・・
身内の人が見たら気絶どころか,マジ心臓麻痺ものでしょうね(汗)。