『僕の歩く道』第八話

 輝明(草なぎ剛)の雇用で動物園の好感度を上げ、これをステップに本社復帰に意欲を燃やしていた久保園長(大杉漣)だったが、本社の上司からは「他の方法で客を呼べ」とすげなくあしらわれる。園長は生まれたばかりの双子のレッサーパンダの名前を発表して客を呼ぼうとするが、体調が悪く、マスコミの前に出すのはストレスになると古賀(小日向文世)たちは制止する。にもかかわらず発表を強行した結果、双子の1匹が脱水症状を起こし危険な状態に陥る……

 少しずつ自分の意志で新しい道を覚えていく輝明の姿がとにかく沁みます。実際と比べると規則性が明確すぎるのに対し、ここ数話の成長ぶりが少し目覚ましすぎるのですが、もうこのドラマは輝明のメンタリティをそういうものだと規定している、と把握したので文句はありません。地味ながら計算の行き届いた話運びが素晴らしいです。ええもう。

 ここにきて絶妙だと思ったのは、久保園長と飼育長・古賀の人物設定です。最後まで自分を偽れず、息子を受け入れられなかった古賀と、徹底的に自分を偽って出世を望む久保。根本的に相容れずにいたふたりが、輝明との交流を経て初めて胸襟を開く。久保の描き方はさながら悪人ですが、しかしこういう割り切り方をしている人はざらであって、結構身を切られる思いをする方もあるのではないでしょうか。

 しかし人間、偽りつづけていればいつかその偽りが身に付いてしまうこともある。あれだけ愚痴を垂れたあとの園長の行動はこのシリーズ中いちばん派手で、本当によく効くひと幕でした。それにしてもあの上司、そもそも人心掌握術も営業手腕も持ち合わせてなさそうで、動物園の来園者減少はこいつが上にいるせいのような気もしますが。

 そして、エピローグでそれ以上踏み込まないのもこのドラマの美点。最初はあれこれ言っていましたが、どんどん文句のつけようがなくなってます。もうなんの心配もせず、ラストまでお付き合いいたしましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました