昨日の夜の話。
本当はイベントに参加していられるほどスケジュールに余裕はないのですが、同時に気持ちのほうからもゆとりが奪われていて、これは逆に少し気晴らしをしないとあとが保たないと判断、とりあえず作業を区切りのいいところまで進めておいて、それから電車にて新宿へ。さすがにその前に映画を観る、なんて余裕まではありませんでした。
今回のトークライブは、53回のチケットが即日完売となったために急遽決定された追加公演という体裁。6月に開催される回が既に53と決定済なので、ナンバーは54という奇妙なことに。突然の開催であるため、常連とは異なる客が少し入ってくることを想定してか、ふだんは行わない“昔のネタの再演”もある、という触れ込みだったため、聞き逃したあのネタやもういちど聞きたいこのネタを記録しておけるかも、と思ったので、スケジュールを眺めるとかなりきついのですけれど、参加することに。このところ籠もりっぱなしだったので、気分転換も兼ねて。
毎度お馴染みのNさんとともに会場入りすると、何だかいつもより動きが取りやすい。何だかんだ言って急な告知だったために、当日券を出しても余裕があったのか? と思ったのですが――のちに壇上に登った木原浩勝氏が言うには、前売りチケットがヤフオクで10,000円に達したそうです。ちなみに定価1,000円。
何はともあれ、新耳袋トークライブ54開会。毎度ながら怪談や妖怪関係の告知が小一時間ほど続いて、最後は『映画秘宝』のお二人も登壇して、これまで数回続けてきた『映画秘宝』との共同計画、『新耳袋』のなかで採りあげられた怪奇スポットに編集部の面々が赴き、のちに記事のかたちで雑誌にも掲載されているレポートを、ビデオと参加者の生の声とで披露するシリーズが書籍化されることを報告。それ自体目出度いことですが、しかし怪奇スポットに戦いを挑み続けた結果の某氏の姿を見ると、ちょっと慄然とします。
そのあと、入れ替わりに著名人おふたり*1が登壇、“ひと晩でも語れる”と豪語する女性ゲストをフィーチャーして、しばしリアルタイムでの取材を展開する――前に、笑いは先に取っておこうと、このところ恒例化している、木原氏の相棒・西浦和也氏による各地の神社に飾られた愉快な絵馬のレポートを披露。相変わらず素敵だ。本当にいつか書籍化なんてことになったらどうするのだ。
休憩を挟んでの第2部、先刻のおふたりを招いて、いよいよ本格的な怪談。まずは先日、木原氏の事務所にて撮れた奇妙な音声のレポート。特に取材という意図を抜きに、事務所にやってきた方がICレコーダーを動かした途端に収録されたという音声を、メディアの問題でゴタゴタしつつも会場にて鑑賞しました。確かにこれはちょっと異様。ただ、途中で壇の横にやってきた関係者の女性が、「私の声だったかも」と言っており、確かに似た声質であったことは付記しておきたい。それでも、同時に収録されている別の音声には似ていませんし、明らかにICレコーダーにやたら近い位置で、異様なことを口走っていた人物がいたにも拘わらず、周囲で会話している人々が何のツッコミも入れていない、といった具合に説明のつかない事実も残っており、奇妙な音声であることは疑いを容れません。原因が何であれ、なかなか不気味で宜しいものでした。
それから、西浦氏が以前にレポートした、ある有名な事件に絡むエピソードの前後にあったいっそう不気味な事実を、まったく偶然に別の方から取材することが出来たという報告。これは話の展開が本格ミステリ的でありながら、最終的に証明できない、けれどまさに体験者が語ったようなヴィジョンが聴く側の脳裏を過ぎるという、実に異様な印象を齎す、怪談的に“いい話”でありました。当事者にとっては気の毒な出来事なのですが、話としては秀逸。色々な事情からここ以外で報告されることがなさそうなのが惜しい。
続いて、登壇していただいた女性ゲストの体験談を、木原氏がその場で、いつもの取材と同じスタイルにて聞き出すというかたちでの展開でしたが――ひと晩でも語れる、豪語するだけのことはありました。凄いぞこの人。生まれる前から奇妙な出来事山積みで、とうてい1回では語り尽くせないので、木原氏がそのまま次回、新耳袋53に招いてしまうほど。そのまんま怪談語りになれる――というには、滑舌が悪く独自の恐怖感の演出に慣れておらず、聴き手が巧くないと活きてこないので、まだまだ問題はありますが、見事な資質を示しました。その圧倒的迫力を生で拝見できただけでも今日来た甲斐はありました。
その女性の話が休憩を挟んで第3部に跨り、残り時間は西浦氏と木原氏とが新しい取材内容を披露。西浦氏は御自身の自宅についての奇妙だけど笑える話に続いて、自身が編集に絡んだ、北野誠氏の新刊にまつわる話を披露し、木原氏は『幽』に掲載される予定の小粒ながら良質のエピソードを披露して、早くも6時過ぎ。質問のコーナーを挟む余裕もなく閉会となりました。
当初告知されていた再演は無くなってしまったものの、それを補ってあまりある、久々の密度に飛んだ回でした。あんまり出来のいいレポートがあると「次は大丈夫か」と不安になるのがこのところの新耳袋ライブのパターンになっていましたが、既に仕込みは行われているようですし、更にあの女性も引き続き登場するのなら出来に不安はなさそうです。今年は現時点でかなりの回数実施されることが決定している模様ですが、今から楽しみだ。
*1:名前を公表していいのか解らないのでとりあえず伏せておく。
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