メセニー メルドー“Quartet Japan Tour 2007”

 つい先週、Aice5のクライマックスを見届けてきたばかりだというのに、珍しくも一週間と置かずにまたコンサートに行ってきました。仕方ないではないかたまたま行きたかったのが似た時期に来てしまっただけなんだよー!

 今回は先週のようにやたらと早めに現地入りはせず、また鑑賞前に映画を観に行くのも様々な判断から取りやめにして、単純に開場時間に間に合うように家を出る。会場も原宿と渋谷の中間あたりにあるNHKホールなので、さほど手間取ることなく到着。

 それにしても先週とはまるで空気が違う。開場時間すぐに人が詰めかけるわけでもなく、物販にも控え目に集まっているだけ。パンフレットの類がなかったので、珍しくTシャツなんか買ってみました。欧米仕様だからMサイズといえどでかい!

 物販を眺めたり軽食を摂ったりしながら時間を潰したあと席に着く。3階の後方なのでステージはかなり遠い、がちゃんとオペラグラスを携帯しているので大丈夫。予定の19:00を少々回ってから遂にスタート。オープニングのアナウンスが、メセニー絡みのライヴアルバムで聴き馴染みの声だったことに感激する間もなく、派手な演出など何もなしにパット・メセニーブラッド・メルドーのふたりが登場、持ち場に着いて静かに演奏を始めました。

 あとはもう、ただ飲まれっぱなし。先週のAice5のような演出などいっさい抜きに、ひたすら演奏しているだけなのに、この表現力と牽引力はどうしたことか。メセニーのテクニックはやっぱりCDで聴く以上に驚異的でしたし、CDではやや教科書的に聴こえていたメルドーも、実際には非常に柔軟な演奏をしてみせる。メセニーとチャーリー・ヘイデンのように内省的ではない、けれど思慮深く、同時に即興性も色濃い演奏にひたすら魅せられてました。ジャズ系統は曲名と演奏を一致させながら聴くということをあまりしていなかったために、自前でセットリストを書き留められなかったのが切ない。

 この序盤で驚いたのは、パット・メセニー・グループでの楽曲をデュオで披露したこと。記憶に間違いがなければ、『Letter From Home』収録の曲です。ブラジル音楽の影響が色濃いポップな味わいのある楽曲を、このふたりらしく透明で繊細な演奏で聴かせてくれたのが妙に嬉しい。

 4曲を終えたところで、ようやくラリー・グレナディア(b)とジェフ・バラード(ds)を加えてカルテット形式に移行。リズムを追加したことで演奏に力強さが増します。それにしても、mixiのコミュニティ書き込みなどで情報は見つけていたものの、ジェフ・バラードの存在感が本当に素晴らしい。打楽器とは思えぬほど音が多彩です。カルテットでの1曲目はアルバムで発表済のものでしたが、続く2曲目はライヴで初めてこのメンバーにて演奏するらしきスピード感のある楽曲で、ここでもバラードの印象は強烈。続いて、アルバムではデュオだったものを4人で演奏し、4曲目ではドラム・ソロから演奏を始めたりと、明らかに扱いも大きい。グレナディアとバラードはメルドーと長年トリオで活動しており、彼の扱いが大きいのはそこからの流れかも知れませんが、しかし引き立てたくなるのも納得です。

 カルテットで4曲演奏したあとはふたたびデュオへ。ここで遂に、メセニーを象徴するもののひとつであるピカソ・ギターが登場。これを演奏しているところを生で観るのも長年の夢だったので、非常に感慨深い。出来るだけ多くの弦を張って欲しい、というメセニーの要求に応えて職人が作ったというこのギター、想像していた以上に音に拡がりがあって音色も美しい。メルドーのピアノが時折同じ旋律を奏でて膨らませた音色は、本当に幻想的という言葉が相応しい。

 このあと再びベースとドラムが加わって2曲を演奏。本編のクライマックスとなる1曲では、これまで経験したことのないくらい長尺のドラム・ソロがありました。正確に計ったわけではありませんが、8分ぐらい演奏していたと思います。スティックだけではなく、手で直接叩くなどの技も盛り込んでの演奏に震えさえ感じました。主役のはずなのにメセニーもメルドーもすっかり場を任せて安心しきってるし。

 大迫力の演奏ののち、いったん閉幕。アンコールには二度応えてくれましたが、いずれにもメンバー全員のソロパートを設けてじっくりと聴かせてくれました。

 ようやくアンコールも終了し、完全に幕となった頃には、開演から2時間半を経過。演奏したのは何と僅か13曲、けれど完璧にお腹いっぱいでした――1曲1曲が如何に長く濃密だったかが解ろうというものです。

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