祖父と共に墓参に訪れた静流と瑞生は、親類に向かって激昂する青年を目撃する。その夜、嵐により雷鳴の被害が出て、翌る日静流は図書館で、くだんの青年と遭遇した。動物好きが高じて獣医を志望しているその青年は、静流が友人に向けて語っていた“雷獣”に関心を持ったようだが……
静流・瑞生の私生活から異界のものに踏み込むのではなく、第三者の体験から怪異を語るエピソード。こういう話は、少し鄙びたところに行けば実は幾らでもありそうです。実態が確認されていない生物なんて、実のところ私たちが思っている以上に存在している可能性がある訳で、そういう部分に突っこんでいった、良いエピソードです。演出で過剰な趣向を盛り込んだりせず、空気を描写することに専念していたので、初期ほど苛立たされることもなかったのも良かった。ていうか、これが本来の水準よね。
ただ確か、これの原作が発表された時点ではまだ作中に登場する生き物はあまり世間的に知られていなかった覚えがありますが、現在ではニュースで採り上げられる回数も増えており、それなりに知られているはず。まして農業に従事するような人は知っていても不思議はないので、そのあたりの反応がやや不自然に感じられたのは残念でした。まあ、あんまり詳しい人が他に出て来てしまうと、それだけでバランスを壊してしまう話ではありましたけど。
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