春香が留学する、という話をマキたちから聞いた夏奈は、彼女のことを思い笑って送り出すことを決める。対処に困る千秋をよそに夏奈は、春香抜きでもやっていけることを証明するために、料理を皮切りに家事の特訓を始めるが……
……不自然すぎる。もういまさらだが、隅から隅まで不自然すぎる。序盤の流れから結末の予測はついたのだが、それじゃ前回のあの人の言動は何? そして普通なら春香がいなくなることでまず夏奈や千秋の生活の心配をする人間がひとりでもいなきゃおかしいのにまわりは誰も指摘せず、けっきょく夏奈が自分で辿り着いている始末。そしてそういう不自然ほったらかしで脱線しまくっているだけなので、何ら面白くない。だいたい、そんな大事な話を本人がしていないという時点で誰かおかしいと思うだろ。パスポート申請して発行するっていうだけでどれだけ時間がかかると思ってるんだ?! 同じ理由であのオチも非現実的なのです。だいたい、あれでは追跡が途中で止まってるだろ。おかわりではかなり方向性が歪められたあの人ですが、しかしその歪めた方向性からすれば、行き先ぐらい探るでしょう。
そもそも夏奈と千秋がふたりだけで生活していけるというのを証明するのにどうして内田と吉野が料理に関わる必要があるのか、ていうかそもそも原作通りの設定なら、夏奈も千秋も基本的なことは出来る、という大前提がすっきり無視されているのになんで誰も気づかない。千秋と内田の行動がまるっきり無印の夏奈と一緒だ、というの根本的な間違いも腑に落ちない。ふたりともちゃんと春香の家事を手伝ってたはずなのに、どうしてそういう設定を削る?!
後者だけなら単純に前シリーズと別人が出ている、という脳内補完でどうにかなりますが、前者の破綻はもう根本的に構成が出来ていない、構成するために必要な世界観の補強やリアリティの設定が出来ない、ということを証明している。
だいたい話にしてからが、前回ラストの時点でいちばん穏当に済ませる唯一の筋そのまんまだし、そこに無意味に小学生組を絡めたりしているために相変わらず余分な破綻を来している。……だからさ、けっきょく高校生組はどうしてちゃんと確認を取らなかったんですか? ていうかけっきょく本当に行ったのは誰? そして何よりもフユキって何だったの? 最後の最後で実はフユキが姓だったことが判明したのですが……そしたら春香は、お隣さんだというのに、そこの子供を“フユキくん”って呼んでたのね? もうその時点から不自然が蓄積していたことを知って、尚更呆れました。
作画だけは比較的まともになっていますが、演出は相変わらず妙に不穏で笑いを呼ばないし、最後の最後で無印の主題歌を引っ張ってきて、しかも中途半端に前期のオチをトレースしたような代物になっているために、余計その劣化ぶりが強調されている。そして、絵自体はそこそこでも、最後の最後で千秋がナチュラルに壁をすり抜けるなんて今どきやりそうもないミスを犯している時点でやっぱり落第。どんなアニメでも最終回はそれなりに力を入れるのに、何だこの雑さは。
百歩譲ってオチ自体は決して悪くないとしよう――事実、凡庸だけど活かそうと思えば何とでもなる。しかし、そのために必要な伏線の組み立てや、そこに至るまでの不自然を解消する工夫がまったくなされていないから違和感ばかりが募って、まともに観ようとしている人ほど不満を覚える。まず脚本家、というかシリーズ構成がどうしようもなく下手、そしてそれを見過ごした上コメディとして不出来な演出ばかりしてきた監督の見通しの甘さばかりが目についた、稀に見る駄作でした……普段こんな表現用いませんが、もう自信を持って言い切る。これは本当に駄目。
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