昨晩参加してきた、イベント連チャン、最後の一本は、お台場冒険王と同時期にTHE ALFEEの坂崎とスタッフの趣味で開催されているらしい企画の今年最初の回でした。目当ては本日のメインゲスト、さだまさし! ファンとは言い条、なかなかコンサートなどには足を運べずにいたので、久々に生で見られるこの機会を楽しみにしてました。
入場に手間取り、開演時刻を過ぎても始まらず、だいぶやきもきさせられましたが、20分遅れでようやくスタート。
最初は新人デュオ・ピース。やけに若いのが出て来たな、とはじめは思いましたが、これが存外凄かった。歌い方はまさにフォークの王道、ギターは2人ともやたら上手い。あとで登場した坂崎が「石川鷹彦と吉川忠英の競演を聴くみたいだ」と評してましたが、まさにそんな感じです。遅れて現れた坂崎と、THE ALFEEの代表作『メリーアン』を競演してましたが、またこれが大変よかった。
実は片方が高校1年の兄弟デュオだったふたりとのオープニング・アクトを経て、本格的なスタートです。坂崎がギター1本で、本日メインゲストであるさだまさしの『僕にまかせてください』を披露したあと、平川地一丁目が登場。幼い兄弟デュオとしてデビューしたのも昔の話、一時解散を発表し、現在最後のツアーに赴いている彼らはーーすっかりいい男に育ってました。演奏も逞しくハードになっていて、まあ月日の経つのは早いもんだ。2人だけで連続して3曲演奏したあと、戻ってきた坂崎と吉田拓郎の名曲『リンゴ』を演奏したのですが、これもあの曲の格好良さが実に合っていた。色々と将来を考える年頃だからこそ一時的にプロの世界を退くことにしたようですが、でもやっぱりもったいない。
ここでやっとさだまさしが登場、まず平川地一丁目と『案山子』を一緒に演奏、続いて平川地一丁目と入れ替わってピースとの競演は『線香花火』。どちらもさだファンにとっては定番すぎる曲ですが、若いヴォーカルが入るととても新鮮です。そして『線香花火』とピースの合うこと合うこと。あの歳でこんなに枯れていていいのか。
続いて、友情出演という扱いで登場したのが森山直太朗。しかし登場時点から何故か時計を気にしていると思ったら、「押しすぎです」――そもそも開演からして20分ずれ込んでいましたが、若いふた組との競演のあいだにさだと坂崎が喋りすぎだったらしい。本来21時30分に終了でアンコール、という段取りだったそうですが、この時点で絶望的なスケジュールになっていたらしい。そのうえ、段取りの悪さについて3人でうだうだやっていて更に時間を食っているし。
やっとさだが引っ込んだところで、まずは森山と坂崎で『さくら(独唱)』。生で聴くとやっぱりもの凄いインパクトです。続いて、おおかたの想像通りフォークへの造詣が深い森山と坂崎で、遠藤賢司の代表作『カレーライス』。とつとつとした演奏ぶりが実に味わい深い、一方でほとんどエンケンの曲とは思えないくらい自分のものにしている森山の歌唱に感嘆します。そして最後には、森山が出演すると聴いたときから個人的に「これやってくれんかなー」と儚い希望を抱いていた、来週リリースの最新作『生きてることが辛いなら』を坂崎の伴奏付きでちゃんと披露してくれました。生で聴いて確信しましたが、これは本当に傑作。ちゃんと買お。
ここでさだまさしが舞台に戻るなり、「悲しい報告です。現時点で1時間押しているそうです」とある意味想像通りの話に。まあ、このメンバーでてきぱきと進むはずがない、と思ってましたが、これで確実に終演は11時近くなることが決定となり、一部のお客が頃合いを見計らって撤退する姿が目につくように。まあ、仕方のないことです。森山の友情出演最後の1曲は、さだまさしのこれもマイナーながらファンには馴染み深い名曲『掌』。これも森山は完璧に消化していて、聴き応えのある演奏でした。
退いた森山と入れ替わりに登場したのは、吉田政美。つまりここからしばらくはグレープの復活です。グレープ解散ののち、Vapに就職して現在も会社員として音楽業界に関わっている吉田はこの日のためになけなしの有給休暇を取ったのだとか。しかしさだも実は、一年中続けているツアーのためになかなか休みが取れず、やっと確保した一週間のオフのど真ん中にこのイベントのオファーが来てしまったと愚痴ってました。
まずは坂崎を交えてグレープの代表曲『精霊流し』を披露したあと、いったん坂崎は退いてグレープ・オンステージへ。グレープ時代のあまり知られていない異色作『殺風景』、解散15年目に“レーズン”名義で発表したアルバムから『夢しだれ』『ジャカランダの丘』を演奏すると、「3曲演奏したらいちど休まないといけない」吉田が脇に引いて、誰もが知っている『秋桜』を山口百恵が歌ったアレンジに近いピアノの伴奏にてさだが単独で歌い、ふたたび“レーズン”名義で発表した『祇園会』。このあたりはもう完璧にさだまさしのコンサート状態です。いつものようなトークのネタは控え目、ファンにとってはよく知った話が中心だったものの、改めて話で引っ張っていく巧さ、絶妙な構成を堪能。
ここで坂崎幸之助が戻ってきて、グレープと『無縁坂』でいちど競演すると、ふたたび吉田はこそこそと撤退して、ステージ終盤をさだと坂崎で締め括り。『祇園会』の京都から『無縁坂』の上野のあとに鎌倉が舞台の『縁切寺』、そしてお茶の水『檸檬』と無軌道な旅歩きめいた構成を辿って、本篇の締めとして『まほろば』を披露。実はこの曲、前日にTHE ALFEEの高見沢俊彦がソロで、ブリティッシュ・ロック風にアレンジしたものを演奏していたとかで、このイベントのあいだ何度も話題になっていたものです。和を強く意識した詞と迫力のある歌唱で、やはりファンのあいだでは人気の曲でしたが、なんかこの二日のあいだにTHE ALFEEのファンにも浸透した気がします。
いったん奏者が袖に退いたのち、さだと坂崎に吉田も加えてのアンコール、1曲目はプロデューサーからの熱心なリクエストによって、これもグレープ時代の名曲『朝刊』に。本当に突然のリクエストだったらしく、さだが演奏前に馴染みのピアニスト倉田のぶおとヴァイオリンの調整について相談しているのがおかしかった。
そして最後は、友情出演だった森山を除く全出演者による『案山子』。準備中の場つなぎに、「みんなで歌おう、となったときに、メロディーの前に歌詞を読み上げるのってよくやってましたよね」と言い出したさだと坂崎が即興で『今日の日はさようなら』を歌い始めたのですが、ここで衝撃的な出来事が発覚。何とこの曲、ピースはおろか、平川地一丁目も知らないんだそうです。道理で、さだと坂崎の演奏に客が応えているあいだもぽかーんとしていたわけだ。音楽の教科書に載ってなかったか、と問われて、「それこそ『さくら(独唱)』は載ってるんですけど」とピースのひとりが答えてましたが、いやこの曲はその人のお母さんが歌ってヒットさせたんです。まあ、時代と共に学校唱歌も変わるものではありますが……正直私もショックだった。
ともあれ、これでようやく演奏もラスト。最後に坂崎が翌日の予告をして、終了となりました。もとオフコースの鈴木康博や山本潤子といったゲストも魅力的でしたが、後半に予定されているという坂崎のひとりリクエスト大会がちょっと聴いてみたかった……でも仕事がたまっているので、さすがに2日連続で来るのは無理です。
何にしても、久々の生、しかも名曲ばかりを熱演するさだまさしを目の当たりに出来、森山の贅沢な選曲、解散直前の平川地一丁目に加えて、いまどき珍しいほどオーソドックスで達者なフォークを演奏するピースという新しい才能を知ることが出来た、実に充実した3時間半でした。
――3時間半もかかったんです。恐ろしいことに、りんかい線は終電まであと2本しか残ってませんでした……。
ちなみにこちらがセットリスト――なのですが、M12と13はさだまさし抜きだったはずですし、M20『秋桜』は吉田政美抜きの実質さだまさし単独での演奏、そしてアンコール1曲目はグレープと坂崎幸之助のみで、他のメンバーは加わっていませんでした。何故かずいぶんと雑になってます。
ほんとーは諸々片づいてからレポートを仕上げるつもりでいたのですが、未だに余熱が燻っているので、とりあえず解き放つべく一気にまとめてみた次第。
余談ですが、このイベント、参加者の9割ぐらいが女性でした。しかもたぶん大半がTHE ALFEEファンと思しい。むろんTHE ALFEEも好き、とりわけフォークへの造詣豊かな坂崎へのシンパシーも強いながら、何よりさだまさし目当てで行った私はどーも肩身が狭かった……。
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